ショパンゾンビ・コンテスタント
★★★★
おれは音楽の、お前は文学のひかりを浴びて、ゾンビになろう――。音大を中退した小説家志望の「ぼく」、同級生は魔法のような音を奏でるピアニストの卵。その彼女の潮里に、ぼくは片想いしている。才能をもつ者ともたない者。それぞれが生身のからだをもって何百年という時間をこえ体現する、古典を現代に生き継ぐことの苦悩と歓び。才能と絶望と恋と友情と芸術をめぐる新・青春音楽小説!
迷いながら何度も文章を書きなおし出だしから進めない「ぼく」とコンクール本番に照準を合わせて一日中ピアノを練習し夜はショパンコンクールの映像を見続ける源元。
ぼくは源元の才能を前に打ちのめされ音大を中退した上、彼の恋人潮里に恋をし、まさにどん詰まりのように見えるが、小説を書くことで自分の気持ちと向き合い現状を俯瞰して見られるようになってくる。
これはつまりまさに青春小説だな、照れるぜ、おい、という今の私と同じ気持ちを主人公が弟に対して思っているところに笑ってしまう。
独特のリズムがある文体が心地いい。なによりも瑞々しくて素敵だ。