りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

朝日名人会ライヴCDシリーズ6ヶ月連続発売記念 柳家小三治の会

10/3(木)、有楽町朝日ホールで行われた「朝日名人会ライヴCDシリーズ6ヶ月連続発売記念 柳家小三治の会」に行ってきた。

・三之助「替り目」
小三治「長短」
~仲入り~
トークショー長岡杏子京須偕充小三治


小三治師匠「長短」
今日はどういう趣旨の会だかわからないで来ました、と小三治師匠。
12年ぶりに私のCDが発売されてその発売記念の会で、後半はトークがあるって…。
だいたい私は録音してCDを出したいと言われてもたいてい断ってきたんです。でも京須さんとは…なんかこういいとも悪いとも言ってないような感じでいるうちに…こう…いつのまにか出てて…。だいたい落語のCDなんか出しても買って聞く人なんかいるんですか?

…などなど、CDについてさんざん出すことないとかこういう場所に聞きに来て忘れて帰るのが一番とか(笑)。

…でも自分で聞くのにはいいですね。
今回出たやつはまだ封も開けてないですけど…若いころの自分のCDは…忘れてた噺を思い出すのにいいね。忘れちゃうんですよ、ほんとに。

…それから同窓会の話や、前方に出た三之助師匠の落語への小言、手伝いに来ている三三師匠に小言を言った話、男はつらいよの記念落語会で山田洋二監督や倍賞千恵子と話をしたこと、倍賞さんと一緒に歌った話などつらつらと…。
そうしているうちにマネージャーから「師匠そろそろ!!」と声がかかる。最近ではこれにも驚かなくなった(笑)。

「え?もうそんな時間?6分ぐらいしかたってないんじゃない?」と師匠。
名残惜しそうに倍賞さんとの話をしたあとに、「今回出たCDの中で…猫の皿と一緒に入ってる…長短という噺をやります」

「友達というのは不思議なもので……って落語っていうのはこんなふうに今からやりますって言ってできるようなもんじゃねぇんだよ!あれこれ思いつくままにまくらを話しているうちにふわっと落語の噺が出てくるもんなんだ!」

…わはははははは。そんなふうにタイトル言ってから噺に入る小三治師匠は初めて見た!と思ったらやっぱりそういうのは嫌だったんだね。おかしい~。

それでも気を取り直して?友達のまくらから「長短」。
気が長くてにこにこしていてご機嫌な長さんに、気が短くていつもやいやい言ってる短さん。
長さんは短さんが大好きだけど、短さんはこいつといるとなんかイライラするんだよなっと思っていて、でもやっぱり長さんのことが好きで。
そんな二人の関係が短い時間の中にぎゅっと詰まってる。
小三治師匠の「長短」は小三治師匠と扇橋師匠が浮かんでくる。いいなぁ…。
素敵な長短。よかった。


トークショー(司会:長岡杏子さん、京須偕充さん、小三治師匠)
小三治師匠、長岡さんに口をはさむ隙を与えない(笑)。
もともとオーディオマニア仲間だった小三治師匠と京須さん。仕事をはさまないそんな関係が10年続いた後、初めて京須さんから小三治師匠のCDを出す話が出たらしい。
落語はCDやDVDで聞いたり見たりするもんじゃない、と全否定の小三治師匠だけど、京須さんが出した圓生全集については「あなたはほんとにいい仕事をなさった」「あの名人のあれだけある作品をまとめようという熱意はすごい」と絶賛。
それから圓生師匠の話になり…小三治師匠は入門する前は圓生が一番の名人だと思っていたとか、自分が入門して考えが変わったとか、あれこれ…。
圓生師匠は「枯れる」ことを極端に恐れている人だったという話から、先代の小さんは枯れた芸だったとか、今の小三治師匠も…とか。

小三治師匠は「あたしはずいぶん枯れましたよ」と言ったかと思うと「私は自分では枯れたとは思ってない」と。
矛盾しているようにも聞こえるけど気持ちはよくわかるなぁと思った。

落語を体系立てて整理して分析する京須さんと、落語は人生そのもの、落語家の生き方がそのまま落語に出るという小三治師匠、そもそも噛み合ってないと思うのだけれど、お互いの仕事へのリスペクトと信頼があるせいだろうか、反発しあうこともなく、話が進んでいくのが面白い。

小三治師匠が「今の俺の落語はひでぇよ」と言いながら、それでも自分の落語がこの後どうなっていくのかが自分は楽しみでならないし、百歳まで生きて百歳まで落語をやりたいと言っていたのがとても印象的だった。

トークショーなんて…俺に話させてなにがおもしれぇんだ」と言っていた小三治師匠だったけど、とても面白かった。

あ、あと笑ったのがオーディオマニアの二人がJBLのスピーカーについてあれこれ語った後に「今はあれだろ、なんか耳の穴に吸い殻みてぇのを突っ込んで」。
…ぶわははは。それはワイヤレスイヤホンのことですね?!
妹があんな情けねぇもんを耳に入れてるからなんだ?!って言ったら「これ音がいいのよ」って言われて聞いてみたら確かに音がいい!でも悔しいからまだ買ってない!

「吸い殻みてぇの」って…やっぱり小三治師匠の観察眼と表現力は素晴らしい。