りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場8月下席夜の部(10日目)

鈴本演芸場8月下席夜の部(10日目)に行ってきた。

 

・左ん坊「子ほめ」
・小太郎「ん廻し」
・アサダ二世 マジック
・玉の輔「財前五郎
・喬之助「堀之内」
・正楽 紙切り
・琴調「さじ加減」
・菊之丞「浮世床(本、夢)」
~仲入り~
・ニックス 漫才
・扇遊「お菊の皿
翁家社中 太神楽
・さん助「七度狐」

 

小太郎さん「ん廻し」
めちゃくちゃ面白かった。
お酒を前に「かくし芸をやってそのご褒美で木の芽田楽をあげる」と言われて、それぞれが披露するかくし芸。バカバカしい芸の数々に 笑った~。
ぎゅっと客席を引き付けた感じ。なんかすごいな、二ツ目なのに。

 

正楽師匠 紙切り
「さん助師匠」のお題に、「今日のトリね…さん助師匠」「とにかくすごいから。今日初めて見る人はびっくりするよ。ふふふ」。
この興業、何回「さん助師匠」を切ったのかな、正楽師匠は。
どんどんスピードアップして本人にそっくりになってきているのが最高すぎる。
そのあと、「結婚式」のお題に切り始めた時も「けっこんしきーーー♪けっこんしきーーー」って少し立ち上がって「あ、今ちょっとさん助が入ってます」に大笑い。
ファンにはたまらないこんなトーク


琴調先生「匙加減」
おおお、また違う話だ。
「匙加減」、落語では聞いたことがあったけど講談では初めて。
やくざ者でも恐れることなく対等に張り合える大家さん、素敵…。なんなんだろうな、こういう落語や講談に出てくる大家って。今の世の中にかけているのはこういう人間なのかもしれないなぁ。
10日間…代演もあったけど、全部違う話を聞かせてもらえてほんとに楽しかったなぁ。


菊之丞師匠「浮世床(本、夢)」
最初から最後までとっても楽しい。
「本」はいつも笑っちゃうんだけど、菊之丞師匠はくどすぎずさらーっとスピーディにやるんだけど隅々まで面白い。
「夢」は色っぽい菊之丞師匠にぴったり。音楽的だからおちょこが歌うところもご機嫌で楽しくて。
ほんとにこの芝居、菊之丞師匠にはヤラれたわー。惚れ直したわー。


扇遊師匠「お菊の皿
この日のお客さんにほんとにぴったりな噺。
おそらく落語をあまり聞いたことがないお客さんが多かったので「怪談?」「どういう展開?」ってわからずに聞いていて、この内容なので、ほんとにどっかんどっかん!と受けてた。
扇遊師匠の「お菊の皿」はお菊さんがお客さんが増えてこなれてくるところはなし。
いきなり興行になるので、お菊さんがどんなふうになっているかが初めて見る人にはわからない。
で、皿を数えると確かにくさくはなってるんだけど、おふざけがないので、まだ恨みを持っているようにも見える。
それだけにサゲが生きてくるわけで…
やっぱりこの噺は余計なあれこれをやらないほうがほんとに面白い、としみじみ思った。


さん助師匠「 七度狐」
この間聞いたこわーい映画の小噺で、どっかん!
これ、ほんとに最高。特におずおずと始まる、さん助師匠のちょっと音痴な歌声に笑ってしまう。
江戸っ子の旅のまくらから、気の合う二人連れが旅をしているところ。
後ろを歩く一人が「腹が減ったからちゅうじきにしよう」と何度も。
歩いていると飯屋を見つけて入る。
お、おお?「二人旅」?と思っていると、店にいるのはおばあさんではなくおじいさん。
酒を注文してつまみに何か…と探していると、そこにうまそうなイカ木の芽和えがある。これをくれ、と言うと、いやこれはこれから村の集まりがあってそこで出すものだからダメだ、とおじいさん。
ちょっとぐらいいいじゃねぇかよ、一人前だけ。無理なら半人前でもいい、と言っても「できません」。
ムッとした男が、勘定を支払って、イカ木の芽和えが入っている小鉢を持って駆け出す。

…おおお、これは「七度狐」だ!
投げた小鉢が林にいた狐に当たって、狐がぬおおおおおーーっと立ち上がるところがおかしい。
さん助師匠がぬおおっと立ち上がるとそれだけでおかしいんだな。
それから川が現れて裸になってそこを渡ろうとする二人。ここにも鳴り物が入ったらよかったなー。なんて思いつつ。

日が暮れて野宿になるかもしれないと思っているところに見えてきた寺。
ここに一晩泊めてもらおうと訪ねてみると、中から出てきたのは尼さん。
尼寺なので男性を泊めるわけにはいかないけれど、お寺でお通夜をするならいい、と言われる。
二人が尼さんからまずいべちょたれ雑炊をご馳走になると、尼さんはこれから自分は用事があって出かけるので留守番をしてもらいたい、と。
その前に、寺は夜になると裏にある墓場でしゃれこうべや赤ん坊の幽霊が騒ぎ出す、と聞かされていた二人は嫌がるのだが、尼さんは出かけて行ってしまう。
灯りを絶やさずにいれば幽霊も出てくることはないと言われていたので必死に油を注ごうとしてまちがえて…。
二人が怖がってきゃーきゃー言っているところで、鳴り物がどろどろどろ!!!
おおお!!と思っていると、さん助師匠は「あ、違います。そこじゃないです。」。
ん??
どうやらこのタイミングで鳴らすところではなかったらしい。
「こういうことがあるんですね…だからちゃんと稽古しなきゃだめですね」に大爆笑。
それからまた気を取り直して噺に戻り…
金貸しのばあさんの棺桶が運ばれてきて、このばあさんが「カネ返せ~」と化けて出たところで、鳴り物がどろどろどろどろ!!!
「そうです、ここです。ここで入るところでした」。
失敗をちゃんと笑いに変えてえらい!

千秋楽にこの噺を選ぶなんて、ほんとにさん助師匠らしいなぁと思うし、この人にはやりたい落語、見せたい景色があるんだなぁ、というのを感じた。
初日が「鴻池の犬」で最終日が「七度狐」。 ほんと、面白い噺家さんだな。
さん助師匠のトリは今回で3回目。見るたびにどんどん変わってきているし、今回は少し太くなった感じもして、ほんとに毎晩楽しみだった。
ありがとうありがとう。

 

【トリネタ】
・1日目 「 鴻池の犬」
・2日目 「子別れ」
・3日目 「もう半分」
・4日目 「佃島
・5日目 「妾馬」
・6日目 「らくだ」
・7日目 「宮戸川(通し)」
・8日目 「不動坊」
・9日目 「藪入り」
・10日目「七度狐」