りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学)

 

 ★★★★★

アメリカSF界のレジェンド、カリスマSF作家
ハーラン・エリスンはSF以外の小説も凄い!
犯罪小説を中心に非SFジャンルの初期傑作を精選、
日本オリジナル編集・全篇本邦初訳でおくる
暴力とセックスと愛とジャズと狂気と孤独と快楽にあふれた
エリスン・ワンダーランド!

「父さんのこと、殺す」痩せた少年の緑色の瞳は飢えたようだった……孤独な男と孤独な少年の出会いを痛切に描く「第四戒なし」、成功した作家が体験するサイケデリックな彷徨譚「パンキーとイェール大出の男たち」、閉ざされた空間に幽閉される恐怖を華麗な筆致で綴る「盲鳥よ、盲鳥よ、近寄ってくるな!」、〈ジルチ〉がある小説を書け!と命じられた新人作家の苦悩とは? 爆笑のポルノ小説「ジルチの女」、ギャング団潜入取材を元に書かれた「人殺しになった少年」、グルーヴィな筆致が炸裂するエリスン流ジャズ小説「クールに行こう」など、カリスマSF作家エリスンによる犯罪小説・ポルノ小説・ジャズ小説・ハードボイルドといった非SFジャンルの初期傑作を精選した日本オリジナル短篇集(全11篇、すべて本邦初訳)。

なんていかしたタイトル。これは最後の二編の中に出てくるセリフ。
暴力的な話が多いけど切実な寂しさが際立つ短編集。

「第四戒なし」
父親を殺したい少年の燃え立つような憎しみと思慕。
「父さんのことを殺す」とつぶやいた少年の言葉に寒気を覚えた男。普段ならだれとも交わらず距離を置いて生きているのに、なぜかその少年に興味を覚え近づいていく。
最初は心を開かなかった少年も男に心を許すようになり、事情を話し、二人はともに行動するようになるのだが…。

静かな筆致で、止められない衝動と衝撃を描いていて、「えええ?」としばし茫然。
救いがないけれど、後味がそんなに悪くないのは、からっとした文章によるものなのだろうか。

「ジェニーはおまえのものでもおれのものでもない」
人工中絶の話。こういうのを読むと、アメリカはキリスト教の国なんだな、と思う。人工中絶への抵抗感はおそらく日本よりアメリカの方が強いのだろう。それ故、中絶を行うために闇の医者にかからなければいけない悲劇。
読み終わって、この話を前にも読んだことがあったような気がしたのだが、何かのアンソロジーに入っていた?あるいは似たような物語を読んだことがあったのか?(ありそう)


作家の物語(「ジルチの女」「パンキーとイェール大出の男たち」)は作者自身の経験や想いが投影されてるのかな。突き抜けた面白さがあった。