りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会

5/19(日)、めぐろパーシモンで行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。


・三之助「替り目」
小三治「お化け長屋」
~仲入り~
小三治「長短」


小三治師匠「お化け長屋」
出囃子が鳴っても出てこない小三治師匠。なにかあった?と心配していると、再び出囃子が鳴り始め、ようやくの登場。ドキドキ。
「お待たせしました。なにかあったんですかね」と師匠。わはは。

いきなり出てきてなんですが今とても調子が良くないです。いろいろ…良くないです。夕べから頭がとても痛いし…。でも半年後に良くなる勝算があります。なので今は…谷間です。谷間…谷間の百合…美しい…。
来年私は80になります。どうでしょう?私は…自分がそうなるまで80歳なんて本当の年寄だと思ってましたよ。でも今の自分は…年寄なんですかね。なんかそういう気がしない。
目黒…ここは私の高校の学区域でしたよ。今もそういうのあるんですかね。
高校の同窓会…行われてましたけど数年前から連絡が来なくなりました。どうしたんでしょうか。死に絶えたんでしょうかね…。
今も毎年やっているのが中学の同窓会です。今週末あります。毎年、私の都合を聞いてから日にちを決めるんですよ。なぜかといえば、決まった予定があるのが私ぐらいなもんだから…。でもこれ…とっても親切なようにも見えますけど…そうでもないんですよ。だってこれで日にちを決められてしまうと、その後にすごくお金になる仕事が来ても断らなきゃならない。ふふっ。

それから自分のことを噺家と名乗るようになったという話から、それをいいことにまくらが長くなった…というわけでもないんですが…。名乗りだした頃はまさかこんな風になるとは思ってもいなかったですからね。
ここに来てるみなさんの中にも被害に遭ったよという方もおられるでしょう…。
酷かったのは横浜のホールでやったときですかね。まくらが長くなってしまったので仲入りにしてその後落語をやりますと言って高座を降りようとしたら、舞台袖で主催者が大きく「ばってん」作ってるんです。もう時間切れだ、と。
そういうこともありましたよ…(遠い目)。
お客さんが怒って帰ったこともありました。外人のご夫婦で…後から言われました。私たちは落語を聞きに来たんだ!戯言を聞きに来たわけじゃない!って。
みなさん…そう言われる気持ちがわかりますか?ははは。
今日は落語やりますよ。今日来たおきゃくさん…落語を聴いてやるぞという気概を持っていらした方ばかりでしょうから。
今日はとりとめもない話ばかりだな。あ、いつもか。

なんてことを言いながら。
寄席でやる怪談噺のまくらから「お化け長屋」。
最初に来た男に語る怪談に凄みがある。小さな声で喋っているのが効果的で会場もしーんとなる。
それがあるから二番目に来た男にその手が全く通じないのがとってもおかしい。この男、どういう反応をしてくるか見えないところがあって、それがおかしい。
「この野郎。てめぇがやったな!」と怒り出したかと思えば、「懐に手…おっぱい?おっぱいか?」と食いついて「おらぁそういう話は大好きだ」と言ってにじり寄ってきたり。
楽しかった。


小三治師匠「長短」
出てくるなり「ここに出てくるとき、とても心配でした。お客さんが呆れて帰ってしまったんじゃないかと思って」。
そう言うってことは一席目の出来に納得してないってことなのかな。
私にはよくわからないけれど、小三治師匠の落語って次のセリフは…という風にフツウにやっているんじゃなくて、頭を真っ白にして出てくるままに出している…そんな感じがする。
自分でもそういうふうにして何が飛び出してくるか見守っているような…。
でもそれってすごい怖いやり方で…それを調子が悪い時は最近封印してやっているような…。あくまでも私の勝手な見方だけど。
そういう意味では一席目の「お化け長屋」は安全な方を選んだのかもなぁと思ったり。

なんでも鑑定団に出た時の話から昔、柳家一門でチャンバラのお芝居をやったときの話。
小三治師匠は鞍馬天狗役。本物の刀は使えないけど、ジェラルミンの刀を使ってのお芝居。
一門で誰が1番目に来て、2番目は誰…と打ち合わせしていたのに、実際にやってみたらもうばらばら。みんな、自分は誰の後に出る、ぐらいしか把握してないから、間違った順番で誰かが出るとそれにつられて何人もかかってきちゃって、もうあっちから打たれたりこっちから斬られたり。
一番ひどかったのは馬風師匠との一騎打ち。
あの人は面白いでしょ、高座だと。でも大マジな人なんです。シャレが通じない。だから本気でかかってきて思い切りガツンとやられた。
なんだ?いてぇな!と思ったらチャンバラやりながら馬風師匠が「おい、大丈夫か?」と聞いてきた。
なにがだ?と思って「あ、ああ…大丈夫」と答えると「お前…血が出てるぞ」。
なんと鼻のところをガツンとやったもんだからそこから流血してた…。

そんな話から、柳家の一門はとても仲が良かったという話に。
談志さんと私が仲が悪かったんじゃないかとお客さんやマスコミには思われてたみたいで、談志さんが亡くなった時、よく聞かれました。
でも実際は仲は良かったですよ。一門ですから。

でもほんとに気が合ったといえば、扇橋…。
うちの師匠の「ちはやふる」がそれはもう本当に面白かった。おれもいつかああいう「ちはや」がやりたいと思っていた。でももちろん私の「ちはや」は師匠のと同じにはならない。
ある時末廣亭のトリで「ちはやふる」をやったんです。そうしたら楽屋にいた扇橋が私に近寄ってきて「とってもよかったよ」って言ってくれた。そんなこと言ってくれる仲間はいなかったけどあいつはそう言ってくれた。そう言った後であいつは「落語って哀しいね」。そう言いました。
そんなこと聞いたことがなかった。でもあいつは…俳句の名人で…そのあいつが「落語って哀しいね」そういったんです。

そんなまくらから「長短」。
そんな話を聞いたから、長さんが扇橋師匠、短さんが小三治師匠に見えてくる。
長さんが短さんに焦れてポンポン言うんだけど、お互いに大好きな気持ちが伝わってきて、じーん…。
長さんがかわいいんだ。もう。
「ともだちっていいもんだ」という言葉が浮かんできた。いいもんだなぁ…。

長さんがお饅頭を食べていたら、客席の前の方で携帯がかなり大きな音で鳴り出して止まらない。あーーまたかーと思っていたら、長さんがその音を聞き入るように黙ってゆっくりお饅頭を食べる。
こんなことで長さんは驚かないんだな、と思ったらおかしくて笑ってしまった。

この間見た時ほんとに体調悪いんだろうなと心配した小三治師匠。たっぷり二席、ほっとした。