りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

不意撃ち

 

不意撃ち

不意撃ち

 

 ★★★★★

池袋の風俗嬢ルミが失踪した。彼女の過去を追う風俗店のドライバー。彼が辿り着いたのは、伊勢の海に浮かぶ不思議な女たちの島だった。(「渡鹿野」)/東北の町を津波が呑み込んでいく映像に見入る男女。女が呟く。「出番が来たんちがう?」…被災地を舞台に繰り広げられる犯罪、そして―。(「仮面」)/2016年11月30日に報じられた、ある男の逮捕のニュース。それはやがて、中学時代に遭遇した、教師の壮絶なリンチ事件の記憶へと「私」を誘う。(「いかなる因果にて」)/幻覚は数十分後に現実に再現される―帰還した女性宇宙飛行士を惑わす知覚の変容。これは偶然か、誰かの意志なのか?(「Delusion」)/定年から一年、無事な人生を歩んだ奥本さんの頭に不意におとずれた小さな欲望、それは…。(「月も隈なきは」) 

面白かった!五編収められているがテイストが違っていてそれが楽しい。

一作目の「渡鹿野」は妙にリアルなところと妙に作り話っぽいところが入り混じっていて不思議な後味。

「いかなる因果にて」は作者の横顔が見えるようで結構好き。
不条理を見て憤りを感じたのではない。それを原稿に書いて生活のたつきとするのが私の商売、というカラッとした文章が好きだ。

一番好きなのは「月も隈なきは」。これ、いいなぁ。ちょっと身につまされる。

辻原さんの作品、どんどん読みたい。