りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

雲助 浅草ボロ市


5/12(日)、浅草見番で行われた「雲助 浅草ボロ市」に行ってきた。

・あられ「道灌」
・雲助「黄金餅
・菊志ん「蛙茶番」
~仲入り~
・雲助「鰻の幇間

雲助師匠「黄金餅
「さんぼう」のまくらから「黄金餅」。
最初から最後まで落語の世界で実に楽しい。金兵衛さんが明るくて軽くて気持ちのいい人物なので、隣に住む坊主を心配する気持ちも本当なら、隠し持っていた金を餅に包んで全部食べ切ったところを見て「なんて勿体ねぇことをしやがるんだ、あれをどうにか手に入れないか」と思うのも本当で、サバサバしていておもしろい。

麻布までの言い立てのところはこれ見よがしのところは全くなく淡々と言って、言い終わると「あたしもくたびれた」「お客様はほっとした」。
そう言った後に「私はこの言い立ての部分がこの噺の肝だとは思ってないんで」。
とある師匠が寄席のトリを勤めたとき、帰路も言い立てをする!と言っていたけど、後で前座に聞いたら行路ですぐに言い間違えていた、というのもおかしい。

そしてこの麻布の寺の和尚がめちゃくちゃ傑作!お経の面白さはあの「新版三十石」を彷彿とさせるほど。雲助師匠がこの和尚をほんとに楽しんでやっているのが伝わってきて楽しい楽しい。いやもう勘弁して~というくらい大笑い。
焼き場に行って「腹の所は生焼けに頼む」「仏の遺言だ」と言うのもおかしいし、焼けたところに行って崩すのを見て焼き場の大将が慌てるのもおかしい。
猟奇的な場面だけれど、金兵衛の生きる力を目の当たりにしているようで、カラッとしていてむしろ気持ちいい。
雲助師匠らしい「黄金餅」だなぁ…。雲助師匠ってほんとに優しい人だと思うなぁ。

 

菊志ん師匠「蛙茶番」
落研の襲名のまくらがすごくおかしかった。
あと地方の50人ぐらいで満員になる会に予約の電話をしてきたおばあさん。96歳になる夫も連れて行くけど夫は落語には全く興味がない。ただ置いていけないので連れて行くだけ。だから夫の分は無料にしてくれ、という無茶なお願い。
…これもすごいなー。そしてこういう電話が来た時に加藤さんがどうするのかが知りたい、というのにも笑った…。

菊志ん師匠、寄席では見るけど、こういう会で間近で見るのは初めて。
テンポがよくて間がよくて表情が豊かで隅々まできれいな芸なんだなー。クスグリもほどがよいというか神経が行き届いている感じ。
でもきっと気難しい人なんだろうな。なんでかそう確信したな。

雲助師匠「鰻の幇間
羊羹を懐にお客の家を訪ねるも不発。
主人が留守と聞いてそそくさと帰ろうとすると女中に目ざとく「何持ってるの?」と食い下がられ、「魚の方から食いついてきやがった」と言うのがおかしい。
一八が最初の方「こうやってまめに外に出なくちゃいけない」「えらい客だね。あたしを一人で遊ばせようという…」「今日はいい日だ」とえらく悦に入っているだけに、後半の展開が余計におかしい。
お客の前では酒も漬物も鰻もうまそうに食べていたのに、自腹とわかったとたんに「酒がまずい」「ぬるすぎる」「うなぎがもっさりしてる」と文句を言いだすのがおかしい。そしてこの徳利の柄がマムシ退治だったり、おちょこが天ぷら屋の開店記念品だったり、掛け軸が「富国強兵」だったり…もう一つ一つがおかしくて、次は何が飛び出してくるのかと、聞いていてわくわくする。

いやぁ楽しかったー。この噺、あんまり好きじゃないんだけど、最初から最後までほんとに楽しかった。
そしてこの会は雲助師匠がリラックスしてほんとに楽しそうにやられていていいなぁ。
落語マニアな方々が集結しているけど、難しい顔をして「ちょっとやそっとのことじゃ俺は笑わねぇんだ」という雰囲気は皆無で、みんながよく笑って心底楽しんでいる雰囲気が好きだ。