りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

イデアの影-The shadow of Ideas

 

イデアの影-The shadow of Ideas (中公文庫)

イデアの影-The shadow of Ideas (中公文庫)

 

 ★★★★

 この世は、すべて幻なのです。現実なんてものはない。ただ、映っている影だけが見える。そうではありませんか?―主人と家政婦との三人で薔薇のバーゴラのある家に暮らす「彼女」。彼女の庭を訪れては去っていく男たち。知覚と幻想のあわいに現れる物語を繊細かつリリカルに描く衝撃作。

面白かった。なんかもっと理系な(?)作品を書く人だと思っていたので、こんなふうに幻想的で抒情的な作品を書くのかと驚いた。

夢と現実が入り混じり本当に起こったことは何だったのかがよくわからない。でも最初は不幸にしか見えなかった彼女が幻想が進むにつれて徐々に幸福そうになってきたからそれはそれでいいのか。

幸福と不幸、生と死が混じりあって不思議な後味。この夢か現かわからない世界でわざと間違った行動をとるような楽しさを感じながら読んだ。
哲学的な知識がある人が読めばもっと深い読み方ができるのかもしれない。