りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

白酒・甚語楼ふたり会

2/28(木)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼ふたり会」に行ってきた。

・市朗「牛ほめ」
・甚語楼「無精床」
・白酒「百川」
~仲入り~
・白酒「強情灸」
・甚語楼「五人廻し」


甚語楼師匠「無精床」
噺家はきれいごとじゃなきゃいけない」というのは入門した当初から師匠に口をすっぱく言われてきた。
自分はもともと無頓着な方だが、洋服、着物、髪の毛などに気を付けるようになった。
中でも床屋、これがめんどくさい。すごく無駄な時間に思えてしまう。
さっと行ってさっと済ませたいので近所の千円カットに行っているんだけど、同じ床屋にニツ目のわさびも通っていることがこの間明らかになった。
私は床屋に行っても世間話をしたりしないんだけど、わさびがどうやら親方に私のことを話したらしい。
先日行ったら親方が「聞きましたよ~。噺家さんなんですって」と話しかけてきた。
それ以来、私が行くと鬼丸のラジオは流れているわ、落語のことをあれこれ聞かれるわ、サービスなのか30分ぐらいかけてカットしてくれるわ…。さっと行ってさっと帰れなくなってきた。
親方はもともと落語に興味があったらしいんだけど、そのわりにわさびのことはいまだに「ナスビ」と言い間違えてる…!

そんなまくらから「無精床」。
いやもうこれがおかしいおかしい。
床屋に入って来た男の気の良さが伝わってくる。愛想よくくるんだけど、それが親方にいちいち通用しないおかしさ。
といって親方もひねくれてはいるけど決してめちゃくちゃなことを言ってるわけでもなく、悪いと思ったときは「悪かったな」と謝ることもあるのが面白い。
水があんまり汚いんで自分で井戸まで行って汲んでくるよ!と言うお客に親方が井戸の場所を説明するんだけど、それが何軒か人の家を横切って行った末に宿屋に一泊しろ、というのに笑う。
また髪の毛を剃るしぐさとかそういう細かいところがとてもきれいで、だから説得力が生まれるんだなーと思う。
楽しかった~。


白酒師匠「百川」
書類を書かなきゃいけなくていろいろ聞きたいこともあったので協会に行ってきたという白酒師匠。
そこで協会の人にあれこれ聞いていたら「そんなことも知らないの?」と言われ、「そんなこととはなんだ!」と激高。こういう時穏やかに対応すればいいとわかっちゃいるけど、きぃーーっとなってしまう。
するとそこに入って来たのが小満ん師匠。「おやおやどうしたんだい?」みたいにお互いの話を聞いてくれて「そりゃそうだな」「それはいけないな」と両方の意見を汲んで諭してくれる。
最終的には白酒師匠に「書類は書いちゃいけないよ」。
思わず「そうですね…」と言いたくなるけど、書かなきゃいけない書類なのだ!
いやでもほんとに小満ん師匠というひとはいつも穏やかでニコニコしていて粋で物知り。それでいて全く自慢するようなこともなく、「こういうことがあったよ」といろんなことを教えてくれてどれも面白い。
お客様に連れられて幇間を連れて料亭で遊んだ、なんていう話もほんとに面白いし勉強になる。
中には政治家がらみの絶対ナイショの話もあって「師匠、それまくらで喋らないんですか」と言うと「いや、これはさすがにまずいからね」。「じゃ墓場まで持っていくつもりですか?」と聞くと「いやそれはもったいない」。
だからきっと死が近づいてきたら話すはずです。お楽しみに。

…さすがの白酒師匠も小満ん師匠には毒をはかないのね。わはははは。

そんなまくらから「百川」。
白酒師匠の「百川」が面白くないはずがない。
とにかく百兵衛さんが最高にいい。
すごい自然。なのに何言ってるかわからない。そしてとってもかわいい。
前半が爆発的に面白かっただけに後半失速した感じがしたのがちょっと残念だったな。


白酒師匠「強情灸」
おおお。白酒師匠で「強情灸」は初めて。
ちょっと早い段階で熱がりすぎてしまった?おかみさんが窓を閉めてから熱がり方がおとなしくなったのが面白かった(笑)。
ものすごーく熱くなった時の顔がめちゃくちゃおかしくて大笑いだった。


甚語楼師匠「五人廻し」
地方で落語好きが集まってグループを作り、そのグループで落語家を呼んで会をやる、ということが結構ある。
とある地方の落語会。発起人がいて同じように落語が好きで集まって来た人や特に落語が好きというわけじゃないけどなんか面白そうだからと入って来た人など…発起人もおじいさんだし集まってきてる人たちもおじいさん。
自分はニツ目の時に呼んでもらって以来、年に1度か二年に1度ぐらい呼んでもらっている。
代表をやってるおじいさんとは電話で話をしたり、東京に来てると連絡があれば一緒に飲んだりもする。
それが先日「会をやるから来てほしい」と連絡があったんだけど、いつものおじいさんじゃなく別の人からの連絡だった。
新しく連絡してくれた人のことももちろん知っているんだけど、なぜそれまでずっと代表をやってた人じゃなくなったのか…。結構な年だったから亡くなったのかなと思った。
というのはこの会の趣旨が、祝儀はやるけど不祝儀はやらない、だったから。
ほんとだったら長年の付き合いだから亡くなったりしたら連絡が来るところだけど、「不祝儀はやらない」という方針だから連絡もなかったのかな、と思った。
で、会があって行ってみたらやっぱりその代表のおじいさんはいない。それどころかその人の話題さえ出ない。会が終わって打ち上げがあって二次会に行き…いよいよ気になって「あの人は亡くなったんですか」と勇気を出して聞いたら、なんと亡くなってなかった!
その真相が…ぶわはははは。めっちゃおかしい。それを聞いて甚語楼師匠が「ええええ?」と落語の中の人みたいに大きな声を出したのがほんとにおかしかった。大爆笑。

そんなまくらから「五人廻し」。
1人目の男がとても共感できる人物なのがおかしい。
花魁が来てくれっていうから来たのにこの扱い。だいたいなんだよこの部屋…あっちにもこっちにも落書き。あーー読んだら余計に悲しくなってきた。読まなきゃよかった。
こんなことなら来なければよかったなぁ。こんなところに来てお金使ってこんな汚い部屋で俺なにやってるんだろう。
って言ってたらあれ?足音?来た?来たね?いやもう来てくれたらそれでいいんだ。何も文句はないんだ。
あー顔が笑っちゃう。だめだめこんな顔してちゃ。だめだ、顔が戻らない。
え?通り過ぎちゃった?なんで?だったら通らなきゃいいじゃない!

…そういう経験したことないけど、わかるわかる!!ってなるし、顔がつい笑ってしまうっていうところがすごくかわいくてすごくおかしい。

その後の江戸っ子(いどっこ)気取りの田舎者がハンパなくなまってるんだけど、自信満々で声が大きくておかしい。
強面の士官風の男が最初から最後まで命令口調で、でも哀愁が漂ってるのもおかしい。
そして「〇〇でげしょ」の男。それまでコワモテだったのが急になよっとしてヘンテコな口調でそれがおかしくてしょうがない。しかも最初は知った風のことを言ってたのに、徐々に常軌を逸していくおかしさといったら。
最初から最後まで楽しくて笑いどおしだった。楽しかった!