りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

何があってもおかしくない

 

何があってもおかしくない

何があってもおかしくない

 

 ★★★★★

アメリカ中西部にある町、アムギャッシュ。さびれたこの町を出た者もいれば、そこでずっと暮らしている者もいる。火事で財産を失った男性が神に思いを馳せる「標識」。都会に出て有名作家になった女性と、故郷に暮らす兄との再会を描く「妹」。16歳のときに家を出た女性が実家の真実に直面する、O・ヘンリー賞受賞作「雪で見えない」。家族という存在、人と人との出会いに宿る苦しみと希望を描く9篇を収録。ストーリー賞受賞作。

「私のなまえはルーシー・バートン」の続編のような作品。あの時、ルーシーと母親の間で交わされた噂話に登場していた近所の人たちにこちらの方スポットが当たる。
前作よりこちらの方が好き。苦い話が多いので連作短編の方が読んでいてしんどさが軽減するからかもしれない。

火事で農場と家を失い学校の用務員となった男が一作目の主人公。辛い出来事だったが神からの標識もあったと信じる善良さに救われる。話してしまったためにもうだめかもしれないとちらっと思ってしまうところもリアルだ。

戦争体験や貧困で歪になってしまった家庭に育った子どもたち。思い出すのも辛い過去、目を背けたい現在、抱える寂しさ。それでも横断歩道を渡る老人に差し出す手や一緒にテレビを見てくれる優しさにほのかな希望を感じる。

とてもよかった。やっぱりいいな、エリザベス・ストラウト。もっと翻訳されますように。