りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

五街道雲助独演会 横浜にぎわい座

10/9(火)、横浜にぎわい座で行われた「五街道雲助独演会」を見に行った。
そういえば最近雲助師匠を見てないなと先月気づいたら見たくてたまらない。浅草見番に行きたいけど日曜日はちとハードルが高い。と思っていたらにぎわい座で雲助師匠が「品川心中」の通しをやると…!ネットで見たらまだ席があったので購入していそいそと出かけた。

 

・一猿「鮑熨斗」
・雲助「庚申待ち」
~仲入り~
・雲助「品川心中」(通し)

 

一猿さん「鮑熨斗」
できる前座さんなんだろうなぁ、いろんな会で見る一猿さん。
とても面白い「鮑熨斗」だった。
甚兵衛さんがいかにも人が良くてぼーっとしていてかわいい。
おかみさんに50戦借りてきて尾頭付きを買ってきて大家さんの婚礼に持って行って口上を述べたら苦労人の大家さんのことだから1円はくれるだろうと言われた甚兵衛さんが「ああ、これ銭儲けなのか」と言うのがなんともおかしい。
魚屋さんで「お前さんだから60銭のところ50銭にまけとくよ」と言われて、「じゃ俺から60銭で買い取らない?」とそこでも銭儲けをしようとするのは、この件が頭にあったからなんだな、ということに初めて気が付いた。
時間の関係で途中で切ってたけど、通して見たいな。


雲助師匠「庚申待ち」
今日はうちの師匠の法要がありました、と雲助師匠。
命日は今日じゃないんだけどお寺さんとこちらの都合で今日になった。
弟子も10名ほど、中尾彬さんと志乃さんはじめご家族の方も集まって。
3女のことを我々「ちゅんちゅん」って呼んでいて…私が入門した時小学生低学年ぐらいだったか。そのちゅんちゅんがすっかりおばさんになっちゃって…というのを本人に話したら「おばさんだなんて…もう60になって孫もいるのよ」と言われた。
えええーあのちゅんちゅんに孫がーー?!そりゃこっちも年を取るわけだ、へぇーーなんてね。妙に感慨にふけったりして。
で、お坊さんがお経をあげてるとき、我々噺家は後ろの方に座ってたんですけど、ヒソヒソバカ話して笑ったりしていたら、我々の前に総領弟子の伯楽が座ってて「おい、お前らうるさい」なんて注意してきたりして…。そうしたらそのすぐあとに今度は伯楽兄さんの携帯が鳴り始めて…なのに本人が気が付かないんだよ。しょうがないから「兄さん、携帯鳴ってるよ」って教えてやってね。あー考えてみたら兄さんも80近いのか、無理もねぇな、なんて。ほんとにじじいばかりになっちゃった。
弟子はみんな師匠を超えちゃった。超えたって芸で超えたわけじゃない、年がね。

…まくらで近況をしゃべる雲助師匠を久しぶりに見てカンゲキ。いいなぁ、なんかこう…肩の力が抜けていてしゃちこばったところが全然ないんだけど、すごくかっこいい。

それからいろんな風習がなくなってきた、という話。そのかわり昔はなかったのに今では定着したイベントもある。クリスマスなんていうのはそうだし、けしらかんのはバレンタインデー。その日は女から男にチョコを渡すことで愛の告白をするなんて…そんなことしたら誰がもてて誰がもてないか一目瞭然じゃないか。
ま、私は若い時分はこれでもずいぶんもててたくさんもらったものですが、年とともにどんどんもらいが少なくなり…。それで僻んでこんなこと言ってるんじゃないですよ。
さらにけしらかんのはホワイトデー。男から女に返さなきゃいけない、しかも倍返しって…。
もっとわからないのはハロウィン。どういうことをやるかっていうのはわかってます。かぼちゃくりぬいて目の穴をあけたり、コスプレして電車に乗り込んできたり…でもあれをどういういわれでもってやってるのかがわからない。
それでそういうことに詳しい先輩に聞いてみたら、「あれは…なんだ、西洋のお盆みたいなもんだ」と言われました。なるほど!確かに日本の盆でも茄子に足つけたりするから、コスプレもそういうようなもんなのか。
でも西洋のお盆をやるならお盆で日本のお盆をやればいいのに。

そんなまくらから「庚申待ち」。
これ、前に「らくご街道」で聞いたことがある。
庚申の日に宿屋に集まって寝ないでみんなであれこれ話しをしてつなぐ。
どんな話でもいいということでそれぞれが順に語っていくんだけど、怪談噺や講釈のような形で始まり最終的には落とし噺で終わるばかばかしさ。
サゲを言った後に「…若干まだわかってない人もいるみたいだけど、わからない人は家に帰ってから調べてください」と言ったのがおかしかった~。
そしてこれがくまさんのほら話になって「宿屋仇」につながっていく。
やいやいやってる雰囲気がとっても楽しくていくらでも聞いていられる感じ。楽しかった!


雲助師匠「品川心中(通し)」
紋日の金を用意できなくて、もうこんなふうに年をとってどんどんみじめになるなんて嫌だから死んじまおう、一人で死ぬとみじめだから男と死んで心中と浮名を残そうと考えるお染。
心中相手を紙をぺらぺらめくりながら「あーこの人は子どもが生まれたばっかしだから気の毒だよ」「この人は病気のおっかさんの看病をしてるし」「なかなかいないもんだねぇ」って、雲助師匠が斜になって選んでいる、その姿が色っぽくて気だるくて笑ってしまう。
今まで邪険に扱われていたのに「相談したい」と手紙をもらって浮足立ち、お染が「こんなことはお前にしか言ってない」「死のうと思う」と言うと「それじゃ俺も一緒に死ぬよ」とその気になってしまう金蔵が気の毒でもありばかばかしくもあり。
心中の方法を考えるのに、飛び込むのはやめよう、おれ泳げないんだ、とか、実感が全く沸いていないのが伝わってくる。
それでもその晩たっぷりサービスしてもらって夢のような心持で家に帰って家財道具を処分して白装束に匕首を買って親分のところに暇乞い。そこで親分に「品川の女に入れ込んでいるらしいが、金がないから心中してくれと言われるのがオチだ」とぴたりと言い当てられるのがおかしい。

そして私は二人で品川の海に行くシーンが大好き。暗くてさびしい品川の海が浮かんできてドキドキする。
突き落とされた金蔵が実は浅い海であっぷあっぷしてただけで怒りに任せて立ち上がると普通に立てちゃって、ざんばら髪で血を流して頭にわかめが乗ってるっていうのもばかばかしいし、町々で野良犬にほえられながら逃げて行くのもかわいそうだけどおかしい。
金蔵が夜分訪ねてきて、親分の家で大慌てで逃げ惑うのも笑える。

またこの後半の仕返しのところも、わざとらしく虚ろな金蔵がおかしいし、やりすぎないほどのよさが好き。
「びくにされた」のサゲもよかった。ちょっと噛み気味だった?けど私はそういうの全然気にならないから、とても満足。


以前小三治師匠が「粗忽の釘」のサゲを間違えた時、鬼の首を取ったように騒いでるじじいがいたけど(楽屋に「いかがなものか」と言いに行ってやったとえばっていやがった!)、間違えたってわかるってことは正しいサゲを知ってるんだから、自分でその正しい方に置き換えればいいじゃない。
別に子どもの発表会を聞きに来てるわけじゃないんだから、間違えたり噛んだりしたからそれで台無しになるってわけじゃないと私は思うんだな。