りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

8/27(月)お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。

・さん助 トーク
・さん助「佃島
・さん助「佃祭」
~仲入り~
・さん助 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十二回「煙草入れの行方」


さん助師匠 トーク
この間お寺で落語をやる仕事に行ってきたんだけど、私こう見えておっちょこちょいでよく忘れ物をするんです、とさん助師匠。
よく忘れるのが肌襦袢にステテコ。前はこういうものを忘れると近くに呉服屋がないかと探したものですが、今はユニクロで買うことができるから心配ない。
でもこのときは足袋を忘れまして…忘れたというかちゃんと持っては来ていたんですけど両方右だったんですね。
さてどうしようと考えて、左足も無理やり右用の足袋を履いたんですが、案外これが履けるもので。
落語をやり終わってよかったとほっとしていたら、ご住職からお客様のお見送りもしてもらいたいと言われまして。
わかりましたと立ち上がったんですが、無理やり右用の足袋を履いた左足がなんかこうバランスが悪くて体がこう斜めになっちゃうんです。
そうしたらこの時のお客様が本当に田舎の真面目で親切な方が多くて、「足が痛いんですか」「大丈夫ですか」って本当に心配してくださって。
「いやじつは足袋が…」なんて言えない雰囲気。
なので、ちょっと足を引きづって見せたりして…なんかその気になっちゃったんですね。
それでお見送りが終わって着替えに戻ろうとしたらご住職が「さん助さん、左足に右用の足袋を履いてますね」と。
え?!と驚いたら「私もやったことがあるから見ていてわかりました」と。

…ぶわははは。
明らかに左足が不自然なさん助師匠が目に浮かぶわー。そしてきっと見るからに挙動不審だったんだろうなぁ。


さん助師匠「佃島
夏といえば、私の実家では毎年お中元で水ようかんをいただいて…その容器を母親がすぐに捨てないんですね。
その容器でプリンを作るんです。
これがゴツゴツした固いプリンで…あんまりうまくない。しかもそれを蒸したまんま…冷やさないで出してくるんです。
だから私にとってプリンっていうのは、固くて熱いあんまりうまくない食べ物だったんですが、小学3年生の時に友だちの家に遊びに行ったらおやつにプリンを出されまして…プリンって聞いて、うちで食べる固くて熱いものが出てくると思ってたら、容器に入った冷たくて甘いものが出てきてびっくりしました。なんだプリンってこんなにうまいんだ、と思って。
でも不思議なことに最近になってあの固いプリンがやけに懐かしい。
今のプリンってどんどん柔らかくなっていて口に入れて溶けるじゃないですか。
でもそうじゃない、固いプリンが食べたい。そう思っていたらそういう人も案外いるんですね。固いプリンを出す喫茶店を見つけまして…食べに行ったんですけど、そうだ、この固さだ、と思いました。残念ながら熱くはなかったですけど。

…固いプリン好きだなー。とろけるような柔らかいプリンより、固くてキャラメルが苦ーいプリンが好き。

そんな話から、釣りのまくら。
釣りの中で一番危ないのが沖釣り。漁師が船を出すのなら海を知り尽くしているから安全だけど、客を沖まで連れて行こうという船頭なんかはたいして海のことを知りもしない素人がやってることが多くて危険。
特に2月と8月は海が急に荒れたりするので危ないと言われている。

釣り?ってことは「野ざらし」?と思っていたら、なんと「佃島」。
あれ?ネタ出しされてたのって「佃祭」じゃなかったっけ?ってことは佃つながり?わーー。

釣り好きの男たちが甚兵衛さんを沖釣りに誘うと「沖釣りは危ない。特に今は8月だから危ないから行かない」。
「そんなに危ないなんてことはない」「みんなが行かないからこそ魚がどんどん釣れる」とほかの二人。
ついに説得されて3人で沖釣りに行くことに。
行ってみると面白いように釣れるのですっかりご機嫌の甚兵衛さん。
「来てよかった」「やっぱり釣りは沖釣りに限る」言い合っていると、急に空模様が怪しくなり、嵐になってしまう。
「こりゃ大嵐になるだー」「船がひっくり返るかもしんねぇ」不穏なことを言いながらもやけに落ち着いている船頭。
そのうち船は嵐に巻き込まれひっくり返って上へ下への大騒ぎ。
それでもどうにか見知らぬ島にたどり着くのだが、船頭は「喜んでちゃいけねぇ。ここは日本じゃねぇ」と言う。
ええ?日本じゃないってどこ?「わかんねぇけど、南アフリカかもしんねぇ」

おそるおそる島に入ると彫り物をした日焼けした男がいて、話しかけるのだが睨み返すばかりで何も答えない。
日本語じゃ通じねぇんだ!と、ヘンテコな言語で話しかけ始めた男に「それ何語だ?」「エスペラント語」って…ぶわははははは。なんだそりゃ。
そのあと、島の男が睨んで、睨まれた江戸っ子がヘンテコな顔で返す、っていうのもわけがわからなくてやたらとおかしい。
やっぱりさん助師匠はこういう変な噺が合うなぁ。笑った笑った。

 

さん助師匠「佃祭」
私の田舎では夏と言えば夏祭りとソフトボール大会でした、とさん助師匠。
田舎のことでみんな知り合いですから自分の家だけ参加しないということは絶対ありえないんです。
私はそもそも運動神経が悪いのでソフトボールなんかは本当に苦手だったんですが、下手は下手で放っておいてくれればよかったんですが、コーチが…このコーチっていうのは友だちの父親がやってたんですけど、「よし!俺がお前をどうにかして見せる!」って本気になっちゃいまして、「お前だけ朝7時に来い。特訓だ」って…。
で、打つ方はどうにもセンスがないから、投げる方を特訓してやる、って。
打つセンスがないんだから投げるセンスもないんですよ。
結局、試合でも少し投げさせてもらいましたけど、すごい打たれました。10点ぐらいとられたんじゃなかったかな。

…面白い!この間の中野の会でも高校時代に野球部を応援した時のエピソードを話してたけど、やっぱりその当時からそうだったんだね!最高。
そんな話から、「佃祭」の仕込みのまくら。これをやらないといけないからこの噺をやるのが嫌だって誰が言ってたんだっけ。一之輔師匠だったかな。

「佃祭」、以前燕弥師匠との会でも見ているけど、わりと抑え目。
人のいい次郎兵衛さんがとてもニンに合っていて自然で素敵。お祭りが好きで女房に嫌味を言われても浮足立って行かずにおられないところとか、終い船に乗ろうとしたところを引き止められて慌てちゃうところとか、お酒をすすめられて「それじゃ一杯」って飲むところとか。人柄がよくて優しくて、でもちょっとおっちょこちょいな感じ。
船頭をやってる亭主がわりと気が荒そうというかコワモテな感じがしたのにちょっと驚く。おかみさんに頼まれたからとはいえ、帰って来た亭主があんなふうに大声でいかにも船頭然としていると悪いことしていなくてもドキドキしそう。

次郎兵衛さんが死んだと勝手に勘違いした長屋の人たちの大騒ぎはなんかとってもおかしい。
とんだことでと言ってやってきて女房とのノロケを話す男がばかばかしくておかしいし、あとやたらと頭を下げてフガフガ言ってるけど悔みに聞こえるのも笑った。
でもなによりもぐっときたのは与太郎がとてもかわいいところ。次郎兵衛さんが死んじゃったって聞いて、なんであんないい人が死んじゃったの?あたしのことをお前はそのままでいいよって言ってくれたの次郎兵衛さんだけだったのにっていう言葉にはちょっと涙が出た。
そして与太郎のこのかわいらしさがラストにも効いていてとてもよかった!
さん助師匠の落語って、やっぱりいいなぁ。こういう解釈ができるって素晴らしいと思うんだよー。
正直、ちょっと会話に間があいたりして、なんとなくまだ噺が腹に入ってないような感じはするんだけど、それを凌ぐ魅力があるから追いかけて見たくなるんだな。

 

さん助師匠 初代談洲楼燕枝の述「西海屋騒動」第二十二回「煙草入れの行方」
重右衛門が帰った後、これから追いかけて行ってぶちのめしてやるといきり立つ子分たちを「自分に考えがあるからまあ待て」と義松。
子分の音蔵に耳打ちをして送り出す。
宴も終わり子分たちも帰って行き二人きりになった義松のお糸。(子分たちって別の家に住んでるの?通い子分?そういうものなの?よくわからない。)
お糸は義松に私のことをもう決して離さないでと言い、義松もそう約束する。
そこへ帰って来た音蔵。義松に頼まれて重右衛門の煙草入れを盗んできたのだ。
音蔵に礼を言い、褒美の金を渡して「今日は吉原に遊びに行ったりせずにまっすぐ家に帰れ」と義松。
お糸が「これはどういうこと?」と聞くと、義松は自分の計画を語る。
それによると…
これから手下に新左衛門を殺させて、そこにこの煙草入れを落としておく。これだけのいい煙草入れだからすぐに持ち主が重右衛門と知れて殺したのは重右衛門ということになり牢屋に入れられる。牢屋には自分の仲間も入っているからそこでいたぶって地獄を見せた挙句に殺してしまおう、というのだ。
それを聞いたお糸は「さすが…それを聞いて惚れ直したよ」と言い、さらに新左衛門は自分に殺させてくれと言う。
自分を助けてくれた男を自分の手で殺すと言うのか?と義松が驚くと、助けはしてくれたけどそれをいいことに自分を手籠めにしたような男だと言う。また自分は美人局や客の紙入れから金を抜き取るなどいろんな悪いことはやってきたが人殺しだけはやったことがないから、やりたいのだ、と言う。
それを聞いて「お前も相当な悪だな」と喜ぶ義松。
そこへ別の子分が息せき切って入ってきて、音蔵がこれだけの金があるのだから吉原に行こうと言い出して何人かで吉原に行ったのだが遊んで帰ろうとすると「御用」と声がして仲間はみんな捕まってしまった。その時に見たら、金を催促に来た男は御用聞きの仲間だった。すぐにこちらにも手が回るだろうから早く逃げた方がいい、と言う。
子分が帰った後義松は「せっかく重右衛門を罠にかける準備ができたところ惜しいがここは逃げた方がよさそうだ」と言い、義松とお糸は荷物をまとめて逃げ出す。

一方、重右衛門の方は、義松の家を出たあと、自分の後ろを付けてくる男がいることや煙草入れを抜き取られたことにも気づいていて、義松が自分をなんらかの罠にかけようとしていることに感づく。
それで吉原で子分たちを捕らえた後、手下を連れて義松の屋敷へ向かう。しかし向かいながら重右衛門は義松が逃げていればいいとも思っていた。それは兄弟の情があったからで、いつか義松も心を入れ替えてくれるのを待ちたい気持ちもあった。
屋敷にやって来た重右衛門はすでに義松とお糸が逃げ出したことを確認。家に残っていた婆と女中に茶を入れさせて自分の子分の労をねぎらう。
そして新左衛門のもとを訪ねて、この後義松とお糸をどうするかと聞くと、もうお糸のことはあきらめたから追わなくていい、と言う新左衛門。それを聞いてほっと胸をなでおろす重右衛門だった。

…前回、重右衛門は「御用聞き」をやっていると聞いて、お前も結局悪くなっちゃったのかいと思ったけど、御用聞きっていうのは官命を受けて悪いやつを捕まえる町人のことだから「いいもの」だったんだね。
そして重右衛門には義松への情があったとは…久しぶりに悪じゃない人の登場だわ。もうどいつもこいつも悪人だらけだったからうれしいよ…。でも義松は芯から腐ってるし、温情なんかかけないほうがいいよ、ほんと。
義松の「いい考え」が煙草入れ盗んで死体の近くに置いておいて罪をなすりつけるって…しょうもな…。
そして助けてもらったのに自分で殺したいと言い出すお糸とそれを聞いて「お前も悪よのう」と喜ぶ義松。ナイスバカップル!
そんでもってそんなしょうもない義松を「親分」と慕う子分たちがいるのがわからない。
子分が捕まったって何をするでもない、自分だけ逃げだすようなやつなのにさ。

いやしかし義松とお糸が組んだらある意味最強だから今後の展開が怖い…。
そしてこの噺に入ったとたん、急に雨が降り出して雷が落ちだして、怖かった。