りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第365回圓橘の会

7/28(土)、深川東京モダン館で行われた「第365回圓橘の会」に行ってきた。

・まん坊「黄金の大黒」
・圓橘「夏の医者」
~仲入り~
・圓橘「雁風呂」


まん坊さん「黄金の大黒」
時々どきっとするようなギャグが入るのは萬橘師匠仕込み?
面白くて何度かぶわはっ!と吹きだした。


圓橘師匠「夏の医者」
本当は「塩原多助」の最終回をお届けする予定だったのですが、この台風の影響で撮影隊が来られなくなりまして…申し訳ないのですが予定変更して「塩原多助」は次回申し上げます、と圓橘師匠。
今回はおなじみのところを…と「夏の医者」。

なまりがきつくてゆったり喋るので本当に田舎~という印象。
親戚の人との会話で、田舎の風景が浮かんでくる。これがとても不思議。
風景の描写は一つもないのに、田舎の大きな家の縁側、目の前に広がる畑が浮かんでくるのだ。
そして隣の村のお医者の先生。ふんどし一丁で畑仕事。訪ねてきた人がいることに気づいても「ここもむしっちゃうから待っててくんろ」とのんびりしてる。

山を越えた方が早いからと先生の案内で険しい山道。頂上について汗をぬぐう仕草で、ものすごい暑さと鬱蒼とした山が見えてくる。
ここまでくればあとは降りるだけだからと一休み。
私この山の頂上で先生が一服しながら畑の作物の育ち具合を尋ねるところがとっても好きで。涼しい風がふいてくるようだし、この先生ののんびりした様子になんともいえない気持になる。
父親の具合が心配で「先生もうそろそろ行くべ」と急かすところにもじーんとなる。

突然まっくらになって足元がぐらっとくる…圓橘師匠のしぐさが絶妙ですごい。
いきなり夜になったか?と慌てる男に、「いやおそらくこれは…」と座布団を触って…「この山に住む蟒蛇に飲まれたようだ」と、それでも落ち着いている医者の先生。
いいなぁ、この先生。

ようやく自分の家に着いて留守番をしていた親戚のおじさんが「うわっ、なんだこのにおいは」とくしゃっと顔をしかめるのもまたおかしい。

だいじな薬箱を蟒蛇の腹の中に忘れてきたようだと気付いた先生がなんてことなくまた山の頂上に戻った時、初めて腹下しを飲まされた蟒蛇が木の枝にぶらさがってぐったりしてる様子がおかしい。それに平気で話しかけてもう一度飲んでくれと頼む先生。

楽しかった~。私、ほんとにこの噺好きだー。そして圓橘師匠の落語が好きだーと思った。よかった~。


圓橘師匠「雁風呂」
話し始めて、あ!この噺聴いたことがある!そうだ小満ん師匠の荒木町の会で聴いたんだ。わーー。しかもこれ、初めてあの会に行った時に聞いたんだ。だから記憶力の乏しい私でも憶えていたんだな。
大阪の淀屋は莫大な資産を築いていたがそれが幕府に目をつけられ財産没収となった。それは町人が財産を持つことに幕府が危機感を抱いたためだった。

ある時、水戸黄門が江戸から上方へ向かう道中立ち寄った飯屋で、屏風の絵に目をとめる。
雁に松というのは珍しい、この絵の絵解きをできる者はいないかと家臣に尋ねるが誰もわからない。
そこに上方の商人が二人やってきてこの屏風を見て「これは土佐光信の雁風呂や。見事なもんや」と話している。
その会話を聞いた黄門様が商人を呼んで絵解きを願いたいと言い、そう言われた商人は軽口を叩いた咎かと最初は恐れるのだが何度も言われてそれでは…とこの絵の意味を説明する。

黄門様はこれは只者ではないと思い名前を尋ねるとこの商人、淀屋辰五郎の息子。武士に貸した金を返してもらいに歩いているがあれこ難癖をつけられておよそ返してもらえず困っている、と言う。
それを聞いた黄門様が一筆したためて渡してくれた上にいざとなったら自分の屋敷に来いと言ってくれる。
財産も取り上げられ貸した金も回収できず弱り果てている商人が、たまたま黄門様に声をかけられて屏風の絵解きをしたことで窮地を救われる…この有難さというのが伝わってきて胸がすく想い。
なによりも圓橘師匠の黄門様がとても威厳と品があって、うわーーと思う。素敵だ…。

台風の中、行った甲斐があったなぁ。すばらしかった。