りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

しのばず寄席

7/10(火)、しのばず寄席に行ってきた。
トリの蝠丸師匠目当て。トリの1つ前で入るってもったいないようだけど、ここの会場を運営してるところの年間パスを買っているので、しのばず寄席は年間5回まで無料で入れる。この年間パスほんとにお得だよ~。

・小助・小時 太神楽
・蝠丸「雪の戸田川」

・蝠丸師匠「雪の戸田川」
7月中席夜の部のトリで「雪の戸田川」と「怨みの振袖」をネタ出ししている蝠丸師匠。
なんでも25年ぐらい前に、上方の梅雨の五郎兵衛師匠という方から教わったネタなのだそう。
当時五郎兵衛師匠が夏になると東京にいらして怪談話をされていて、その時に教わったのだとか。

それから35年やっていなかったのを今回やることになり稽古してるんだけど、まー大変です。
だって今朝食べたものも思い出せないんですよ…?それを35年前に教わった噺を掘り起こすっていうのはね…大変なんですよ。
なので、今からやりますけどね、みなさま…どうか温かい目で見ていただきたい。

お化けと幽霊の違いのまくらから「雪の戸田川」。

佐野屋治郎兵衛という男、今では「お大尽」などと呼ばれているが、財を成すまではかなり汚いこともし人も平気で殺してきた悪党。
年の暮れ、治郎兵衛が掛け取り旅行に行っているところへ使いがあり、身重だった女房が明日明後日に出産しそう、とのこと。
泊まらずに帰ろうとする治郎兵衛に宿屋の主人は「もう時間も遅いし、戸田のあたりは何かと物騒だから明朝早くにした方がいい」と言うのだが、慣れた道だし女房が心配だからと言うことを聞かない。

治郎兵衛が戸田の川のあたりに来た頃には薄暗くなり雪もちらつき始める。川べりに汚い蒲鉾小屋がありそこに女乞食が住んでいて、通り過ぎようとした治郎兵衛に「お恵みを」と声をかけてきた。
見ればぼろぼろの着物に帯、顔の半分が病にでもあったのかお岩さんのように腫れあがっている。
治郎兵衛が小銭を渡すと、「ありがとうございます」と受け取りながら顔を上げた乞食、「こんな金はいらない!」といきなり治郎兵衛に投げつけてきた。
何事かと問うと、乞食が「お前は治郎吉だろう」と、昔名乗っていた名前を呼ぶ。
「お前は誰だ」と言うと「見てもわからないのなら話をしよう」と言って語りだしたが…。

乞食の名前はお紺。治郎兵衛が治郎吉と名乗って悪事を働いてきたころに一緒にいた女。
ある時お紺が病を得て治らずにいると、治郎吉はそんなお紺を捨てて出て行ってしまう。
病名もわからないし見た目も気持ち悪いというので長屋を追い出され、住む場所もなく乞食になった。
治郎吉の故郷が佐野と聞いていたからいつか通るのではないかと思い、この戸田の川べりの小屋に身を隠していたのだ、と。

それを聞いた治郎兵衛は、懐に入れていた道中差をお紺の前に置き、俺の話を聞いて、それでも俺が憎ければ殺してくれ、と言って語りだす。

お前の病気もよくならないし医者に見せたくても金がないので府中の知り合いを訪ねたが、行ってみるとお伊勢参りに出かけたと言われる。その人を追いかけて自分も伊勢へ行き5両という金が手に入ったが、帰る途中で高熱が出て寝込んでしまった。3か月後に戻るとお紺の姿はなく、なすすべもなかった。
こうして会えたのだからお前を佐野へ連れて帰る。

言われたお紺は、そんな事情があるとは知らなかった。お前は佐野で出世していておかみさんもいるだろう。私のような者を連れて帰ったら恥になるから、私は行かない。もう先も長くないだろうから、この辺りを通る時は生きてるかどうか気にしてくれ、と言う。
治郎兵衛はお前のことを一日たりとも忘れたことはなかったし、そのために女房も持たなかったのだから、一緒に佐野へ行こう。着物は途中で買ってこぎれいにすればよいし、途中草津で湯治をすれば病もよくなるだろう、と優しく語りかけると、お紺は「それならば」と一緒に行く気になる。
今のなりではあまりに汚いから川で顔を洗え、と治郎兵衛。自分が支えていてやるから、と言う言葉を信じ、お紺が治郎兵衛に身を預けて顔を洗っていると、お紺を川にたたきつけた治郎兵衛。道中差でお紺を斬りつけ、取りすがろうとする指をすべて切り落とす。

あんな者が生きていたら昔の悪事がばれてしまう。危ないところだった、と治郎兵衛は血を洗い流して、なじみの宿へ向かう。
宿では主人が灯をつけて待っていてくれて「使いの者が来て治郎兵衛さんがくると伺っていました」と。
使いの者などいないはずだが…と問うと、汚い身なりをした女が先ほど来て治郎兵衛があとからくると言っていた、と。
いや~な気持ちで部屋に入ると、今度は女中が茶を二つ出してくる。
自分は一人だが、と言うと、あら?お連れさんがいるように見えましたが?と言う。
女中を追い出して部屋でじっとしていると、暗い部屋の隅でうずくまっている者がいる。
さきほどの女中かと治郎兵衛が声をかけると…。

…軽口叩いたりギャグを入れたりすることの一切ないガチな怪談。
ここここわかった。
いろいろ趣向もあってそれも怖かったし、なにより全く笑顔のない蝠丸師匠を見るのは初めてだったのでそれが一番怖かったー。

最後のセリフを言った後、しばらくしていつもの師匠に戻って、ほっとしたーーー。
師匠としたら今日のがリハーサル?明日からの浅草が本番って感じなのかな。
ということは行かなくちゃ、だわよ。