りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会 横浜にぎわい座

6/8(金)、横浜にぎわい座で行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。

・はん治「子ほめ」
小三治「蒟蒻問答」
~仲入り~
小三治「長短」


はん治師匠「子ほめ」
あれ?なんかちょっといつもと違うような。なんだろう?
なんとなく少しやりづらそうだな、と思いながら聞いていたんだけど、その理由は小三治師匠が出てきてあきらかに…。


小三治師匠「蒟蒻問答」
前方に上がったはん治師匠のことを「あいつは何を言ってるかわからないでしょう?」。
あいつだけじゃない。今日はカバン持ちに三三が来てるんですが(会場がひぇーーとなる)三三もそう。
とにかく面白くやろうウケようと思って早口になって変な調子がつく。だからよく聞き取れなくて面白くなくなる。
噺っていうのはそのままで面白いんですから。だから今も楽屋でずっとはん治にそう言ってたんです。「とにかく今日はゆっくりしゃべれ」そう言って送り出しました。

「見ててください。今年一年。あいつはがらっと変わりますから。もっともっと面白くなる。来年には圓生みたいになる」。
前も寄席で小三治師匠ははん治師匠のことを「あいつはおもしろいんですから。もったいない。伝わればもっともっと面白くなる。」って言っていたけど、本当にそう思っていてなんとかしてやる!と思ってるんだろうなぁ。
公開小言でひぇーーと思ったけど、師匠の本気が伝わってきた。はん治師匠、大変だ…。

それから4代目小さんの話。ただでさえ面白くない「道灌」を4代目小さんは本当に面白くなくやっていた。それなのにふと気が付くと小さんが消えていて自分がはっつぁんと隠居が喋っている部屋に一緒にいるような…若い衆の一人になったような感じがした。
「隠居のことをどろぼうって言ってましたよ」っていう台詞、今は誰もかれもそこを面白おかしくやる。メリハリつけて。私だってそうですよ。だけど小さんはそんな風にやらない。なのに気が付くと景色が見えてくる。やっぱり落語って言うのはそういうものなんです。

それから、今日ここに来る前に昼飯を食いに行った店で、我々の後ろのボックスに座っていたのが老人と20代なったばかりぐらいの若者。老人の方は…おそらく私よりは若いんでしょう。で、どうやらこの二人はお孫さんらしい。
っていうのはこのじいさんがダミ声でやたらと声が響くんですね。聞きたくないのに耳に入ってきちゃう。
じいさん、自分が若かったころのこととかあれこれ喋ってましたけど、最後にこの二人に向かって「これからもよろしくおねがいします」と言ってる。それを聞いて、ああ、少なくともこの二人はこのおじいさんの弟子じゃねぇなと思いました。師匠は弟子に「よろしく」なんて言わねぇから。
っていうと、私は昨年入院した時は本当に弟子には世話になりました。京都の病院にもかわるがわる見舞いに来てくれて体を拭いてもらったりあれこれ…。

という話から、今度は浪曲の話。それから落語家になる前は浪曲師だった扇橋師匠の話になり、扇橋は本当に面白くやろうとしない落語家だった、だから面白くなかった。でもそれがなんとも味があった、と。
正月に扇橋師匠が病気で休んでしまったことがあって、噺家にとって正月っていうのは命みたいに大事なもんだから辛いだろうと思って、虎三の浪曲をテープにとって持って行ってやったら、あいつは喜んでねぇ…。それから私のあとをついて歩くようになった。よっぽど嬉しかったんだろうね。

それから大喜利の話。談志師匠が謎かけがものすごくうまかったという話から、三題噺というのもあるという話。それから「問答というのもあります」と…。
え?問答?まさか…と思っていたらなんとそこから「蒟蒻問答」へ。


蒟蒻屋の六兵衛さんがいかにも兄貴という風情で堂々としている。
八五郎に向かって「田舎の人間はものがてぇからお前が何も仕事をしないでぶらぶらしてるのはまずい。何か仕事をやれ」と言ったり、また八五郎が寺の物を道具屋に売ろうとしているのをみつけると「ばかやろう。ここにあるものはおめぇのものじゃねぇんだ。おれのものでもない。村のものなんだぞ」と言ったり、しごくまとも。だけどこまかいことは気にしない。いつまでも小言を言わないで「まぁいいや」とあっさり。

八五郎はもっといい加減で、でも小心。
権助と二人で酒を飲んでいい加減な歌を歌ったり踊ったりしているところへ修行僧がやってきて話をすると、修行僧の剣幕とこの分なら毎日訪ねてくるだろうと思って、「もうやってられねぇや。逃げよう」となる。

修行僧はいかにも堅くて血気にはやる感じ。背筋がぴんとしていてびっくりするくらいの大声。小三治師匠がこんな大声を出すのか、とびっくり。

問答の場面は、大真面目な修行僧と「もう何言ってるんだこいつは。ちっともわかりゃしねぇ。権助、煮え湯の用意はできたか」と堂々としている六兵衛との対比が面白い。

最初から最後までとっても面白くてなんともいえず楽しかった。
小三治師匠の「蒟蒻問答」が聴けるなんてほんとに嬉しかったなぁ。大満足。


小三治師匠「長短」
「今度はもう好きなようにゆっくりしゃべってる場合じゃないんですよ」と小三治師匠。
ぶわはははは!なにせおとといのことがあるからなー。
「やりますよ。落語、ちょこっとやります」って言うのもおかしい。

そう言いながら、「日日是好日」の話。
小三治師匠がこの本が大好きという話を聞いて私も読んだことがあったのだが、何と今度これが映画化されるらしい。
主役の名前が出てこず、助演の名前も出てこず、お茶の先生はええと…ああそう、樹木希林、と。
文庫本の解説を師匠が書かれているということで「帰りに買って帰ってください」と珍しく宣伝。わはは。

そして気の長い人短い人のまくらから「長短」。
小三治師匠の「長短」ひさしぶり!わーもう今日はほんとに幸せ!

小三治師匠の「長短」は見る時々で、長さんが好きになったり短さんが好きになったりするんだけど、この日は長さんがとてもチャーミングでかわいかった~。にこにこしていて楽しそうなんだー。
焦れる短さんが「このやろう!」と言うんだけど、そこにも二人の仲の良さが伝わってくる。

楽しかった。
そしてこうやってまたいつもはやらない噺を聞ける機会があるのか、ということに感動。行ってよかった。行けてよかった。