りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治独演会 東京芸術劇場プレイハウス

6/6(水)、東京芸術劇場プレイハウスで行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。

 

・一琴「転失気」
小三治「青菜」
~仲入り~
・一琴 紙切り
小三治 あいさつ

小三治師匠「青菜」
とある雑誌の企画があってそれで200の質問に答えないといけなかったり写真を撮られたり。
そのカメラマンっていうのが有名な…あの…名前が出てこないけど…なんて言ったっけな。ハダカばかり撮ってるやつ。
私はハダカじゃありませんよ。当たり前ですけど。
で、撮ってもらった写真を見たら…とってもよかった。何がいいって…男前に写ってたとかじゃないですよ。男前なのはもうとっくにわかってるんだから。(ぶわははは!でもほんとにそう!)
そうじゃなくて、あたしという人間が写ってました。そのまま。
写真を撮るのは好きだけど撮られるのは嫌いです。でもその写真を見たら、ああ、いいなって思いました。

彼は撮る時に動けっていうんですね。
で、動いてみたんだけど、自然じゃないっていうんですよ。
私その時この格好(紋付羽織、袴)で行ったんですけど、「銀座通りを歩いている感じで」って言われて、…でもこんな格好で銀座通りは歩かないからね、そもそも。
それでもまあこうどうにかこうにか動いてみたりして…。できた写真を見たら、ぶれてるんです。でもぶれててもいいんですね。確かに自然なんだ。
なんか人間そのもの、生活そのままっていうのか。この人は何を撮りたいのかっていうのが見ていてわかったような気がしました。

…それはだれ?篠山紀信?と思ったら、荒木氏のことらしい。うはー。(いろんな意味で)

それから一門で白くまピースを見に行った話を始めかけたんだけど、ピースが実はてんかん持ちで…というところから、「てんかん」というのは差別用語だっていうんで、NHKの放送ではそのことは伏せられていたという話になり、差別用語の話に。

差別的な言葉を本人に向かって言ったり悪意を持って使うのはもちろん許されてはいけないことだけれど、言葉自体を禁止するというのはおかしな話。
一時期「差別用語だ」と騒いでは抗議という名の嫌がらせをする団体が出てきて、放送局や新聞社などはもめるのがいやなものだからそういう言葉を使わないようになった。
当時は落語で「魚屋」って言うのもだめだって言われた。差別用語だって。考えられますか?じゃなんて言えばいいんですって聞いたら「鮮魚職を営む」だって。ばかばかしい!

あの時、放送局や新聞社には言論の自由とは何かということをよく考え、徹底的に戦ってほしかった。
面倒なことを避けて長いものに巻かれてその結果が今のこのありさまだ。マスコミが首相に忖度するなんて!(拍手!)

私だってずるをしたいとか得したいという気持ちがないわけじゃない。
私がするずるっていったら…池袋演芸場とか末廣亭に知り合いはただで入れちゃうとか…。わはははは!
それぐらいしたっていいじゃねぇかという気もするけど、でもそれを許すとあれも許すになっちゃうんだな。だからいけないんです。ずるしちゃ。
甘えちゃいけない。
って落語やらないでなにくだらねぇことくっちゃべってんだ!お前だって客に甘えてるじゃねぇかって言われるか。(ぶわははは!)

今までもとっとと落語やれ!って怒って帰った客は一人や二人じゃないですよ。
そういう時、申し訳ないとも思うけど、一方ざまぁみやがれとも思う。
…ってまだ何をしゃべるか決まってないんです。

…と言いながら「植木屋さん、ご精が出ますな」と「青菜」へ。
小三治師匠の「青菜」久しぶり。

そろそろ帰ろうかなと思って煙草をすっているところを、旦那から「ご精がでますな」と声をかけられてちょっと慌てて言葉数が多くなる植木屋さん。
あなたが庭に水を撒いてくれると、まるで夕立が降ったよう…。そのしずくの描写も決して言葉数が多いわけではないのだけれどとても丁寧。こういうところから絵が浮かんでくるのかなぁ。

植木屋さんがお屋敷へのあこがれをじんわりとにじませるのは、小三治師匠独特。
「やなぎかげが義経になりました」と言って旦那が別のお酒を取り寄せようとすると、「そんなつもりでいったんじゃねぇんですから」と慌てる植木屋さんがかわいい。

感激屋の植木屋さんに比べて、どんな話を聞かされても動じないおかみさんがいかにもしっかり者、現実的でその対比がおかしい。
静かなお屋敷とは打って変わってがちゃがちゃにぎやかな長屋が目に浮かぶ。
私は植木屋さんがおかみさんに言う「お前はおれの上へ上へ行こうとする」っていうセリフが大好きなんだけど、昨日はそれはなかった。

そのかわり、押し入れから飛び出してくるおかみさんがいつもより汗だく(笑)。
たつ公が「あーーびっくりした」って、そんなにオーバーアクションでいうわけじゃないのに、すごくびっくりしていて、でも遠慮がなくて、この人たちの関係性が想像できる。楽しいなぁ。
たつ公の「お前ら二人でなにやってるの」のセリフが楽しい。
心のこもった「青菜」。とてもよかった。夏が来た!って思った。

小三治師匠 (小言念仏風)あいさつ
一琴師匠の紙切りのあとに登場した小三治師匠。
「びっくりしました。…あと二分しかありません」の言葉に大爆笑。
確かに一席目、まくらもたっぷりだったし落語もたっぷりだった。
「こういう時間のない時やるものは決まってまして」と、ポクポク叩きながら「小言念仏」?と思いきや、叩きながら「青菜をやったのは実は1年ぶり。昨年手術する前、それからしたあとには、手をたたくしぐさができなくなっていた。旦那がこうやって手をたたくしぐさ…これもただ叩けばいいってもんじゃない。パンパン叩くわけじゃなくてでもこうお屋敷に音が響くような…そういう叩き方ができなければこの噺はできない。だからこれは一年ぶりにやったわけで、私にとったらネタ卸みたいなもんでした。」と。
そして「今日はお越しいただいてありがとうございました」と頭を下げて、おしまい!(笑)

あーーー面白い。
ポクポク叩きながらちょっと念仏を唱えたかと思ったら話し始めて、それがなんか小言を言ってるみたいですごくシュールでおかしかった。
小三治師匠が自分はまだこれからなのだ、ホップステップでジャンプすると思ってる、とおっしゃっていたのが印象的で、素敵だった。