りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

檸檬

 

檸檬 (新潮文庫)

檸檬 (新潮文庫)

 

 ★★★★

 31歳という若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、声価いよいよ高い。その異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。

 教科書に「檸檬」が載っていたけど、これを読んで(しかも抜粋で)「作者はどんな気持ちだったでしょう?」なんて問いに答えていたんだろうか。そりゃご無体な…。
今読んでも正直よくわからないのだ。この物語の言わんとしていることが。人物の行動と気持ちの変化が。でもあの頃読んで「よくわかんないけどなんか好き」と思ったように、今回も「よくわかんないけどなんか好き」と思った。また何年かして読み直したらどう感じるのだろう。そういう風に繰り返し読むべき本なのかもしれない。

表題作以外も、濃淡の違いこそあれ、死の気配が漂う作品が多く、読んでいて少し鬱々とした気持ちになる。

その中で少し異色な「城のある町にて」がとてもよかった。時代も違うし知らない町なのにどこか懐かしく、寂しさと暖かさの両方があって好きだった。