ファミリー・ライフ (新潮クレスト・ブックス)
★★★★★
インドからアメリカに渡り、ささやかな幸福を築いてきた移民一家の日常が、ある夏のプールの事故で暗転する。意識が戻らない兄、介護の毎日に疲弊する両親、そして悲しみの中で成長していく弟。痛切な愛情と祈りにあふれる自伝的長篇。フォリオ賞、国際IMPACダブリン文学賞受賞作。
インドからアメリカに移住した家族。気難しい父、明るくて教育熱心な母、頭が良くてなんでもできる兄、そしてそんな兄に憧れる弟アジェ。一家が新しい暮らしにようやく慣れた頃、家族の希望の星だった兄がプールの事故で寝たきりになってしまう。
物語は弟アジェの視点で語られる。
明るかった母は介護に疲れ攻撃的になり、気難しかった父はアルコール依存症になる。崩壊寸前の家族だがそれでも彼らは家族であることをやめず兄の介護を続ける。
兄への愛と終わりのない介護への絶望、自分のことを全く見てくれなくなった両親への恨み、時折感じる幸せへの罪悪感に苦しみながら成長していくアジェは書くことによってこの過酷な日々を消化しようとする。
作者の自伝的作品ということでかなりしんどい物語だが、書くことで蓋をしていた自分の気持ちを解放することができたというところに、ほんの少しだけれど希望を感じる。
全く違う物語だが、これを読む前に読んでいた「ソロ」とも通じるテーマ。物語ることによる魂の救済を感じた。