りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ぶえな寄席 柏枝会

4/11(水)、ART SPACE BAR BUENAで行われた「ぶえな寄席 柏枝会」に行ってきた。


・柏枝「睨み返し」
・柏枝「相撲場風景」
・柏枝「お神酒徳利」


柏枝師匠「睨み返し」
その日暮らしの江戸っ子たちが唯一憂鬱になるのが大晦日。そんなまくらから「睨み返し」。

借金の言い訳屋さん、借金取りが訪ねてきたとたん、ものすごいかっこをつけて煙草を吸い始める。その大仰なしぐさがおかしい。
そして「こんにちは」と扉が開いた瞬間、目をギョロっとさせて下からぐわーーっと睨み返す。この表情がめちゃくちゃ面白い。
どんなコワモテが来ても何も言わず黙って下から睨み返すだけ。そのばかばかしさ。
予想以上のおかしさで笑った笑った。最高!


柏枝師匠「相撲場風景」
師匠の柳橋師匠がお付き合いがあるので自分も何度かお会いしてお話をさせていただいたことがある、という尾車親方の話。
私は相撲は全くわからないんだけど、なんとなくわかる気がする。この人の言うことだったら…って会ってみて確信する、っていうのは。ふむふむ。

そんなまくらから「相撲場風景」。
相撲に夢中になって唾を飛ばして応援する人、おにぎりを振り回す人。
そして相撲を見ながら涙ぐむ人。それを心配した人がどうした?とたずねてみれば、席をとられちゃならないとあさからずーっとおしっこを我慢していて、いよいよ限界になった、と。
酔っ払いが飲み終わった一升瓶があるからここにしちゃいなさいと言われて、いたすところの描写がもう…すごいリアルなんだけど不快感はなくひたすらばかばかしくおかしい。ツボにはまって笑った笑った。
ほんと、柏枝師匠ってすごくきれいな落語をするのに、時々垣間見れる変態ぶりがたまらない!

柏枝師匠「お神酒徳利」
二席目が終わって頭を下げて高座を降りられたので、これで終わりなのかーと思っていると、くるっと高座側を向いた師匠が「アンコール!アンコール!」。
…ぶわはははは!
なんでもニツ目のころやっていた自分の会での「お約束」だとか。
こういうことを、あんまり表情を変えずにやられるから、もうおかしくておかしくて。

しかもニツ目時代に、いつも自分でやってお客さんにも付き合ってもらうのは申し訳ないと思い、そのころ住んでたあたりの川ぞいの人通りの少ないところで、一人で「アンコール!」って叫んで録音していたら、なぜかカラスが50羽ぐらい集まってきちゃった、っていうエピソードがおかしすぎる!
そして「今、何時ですか?」とお客さんに時間を聞いてから始めたのが「お神酒徳利」って(嬉)!

2番番頭の善六のキャラが素敵。
悪気はないけどおっちょこちょい。
徳利を水瓶の中に入れたことをけろっと忘れて、旦那に「お前知らないか?」と聞かれて平然と「わかりません」と答えてしまう。
家に帰ってのどが渇いた、と水瓶から水を汲もうとしてはっと思い出す。
それを相談された女房が「行って謝っておいでよ!」とけろっと言うのも素敵。
善六が「お前も一緒に行って謝ってくれよ。それでも旦那が許してくれなかったらお前が髪の毛を丸めてくれ」というのも、おかみさんに頼りっぱなしの日常が見えて面白い。

鴻池善右衛門に頼まれてしまい弱り切って家に帰ってからも、おかみさんが「よかったじゃないか!」とけろっとしているのがいかにも肝っ玉母ちゃんっぽくて素敵。
「適当に言えばいいんだよ。うちのおとっつぁんもわからないときはそれでごまかしてたよ」「それでせっかくだから上方見物でもしておいでよ」。
うーん。確かにかかあ大明神だなぁ。

宿屋で女中が告解に来るところも、なんか田舎娘が目に浮かぶよう。
夜逃げの支度をしたものの、うつらうつらするのんきな善六さんもいいな。

そしてここで終わらず、ちゃんと鴻池善右衛門宅でのくだりもあるのが嬉しい!
宿屋の件で「これならなんとかなるかもしれない」と一生懸命お参りをするというのも、善六の人柄が出ていていいなぁ。
時間短縮のため、ちょっと端折ってたけど、全然物足りなさはなく。楽しくてじーんとして…よかった~。

三席ともカラーが違って柏枝師匠のいろんな魅力が出ていてよかったなぁ。
このお店、ワンドリンク付きでおいしいビールが飲めるのもうれしい。
「こんなに大勢お客様がいらしてくださって私気を良くしたのでまた近いうちにやります」とおっしゃっていたので、次回もぜひ行きたいな。