りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小満んの会

3/13(火)、お江戸日本橋亭で行われた「小満んの会」に行ってきた。

・小多け「真田小僧
小満ん「泣き塩」
小満ん「道具の意地」
~仲入り~
小満ん「百年目」

小満ん師匠「泣き塩」
江戸時代は海水から作った塩を売りにきていた。
元手がかからない誰でも始められる商売だったが、塩屋といえばなぜかおじいさんが多かった。
そんなまくらから「泣き塩」。
タイトルを見たときは初めて聞く噺!と思ったのだが、このブログを調べたら、小満ん師匠と雲水師匠で聞いていた。

往来で侍が若い娘(女中)に止められる。
何かと問うと、国元から手紙が届いたのだが自分は無筆で読むことができない。母親が病気で臥せっていたのでそのことが書いてあるのではないかと思うと気が気でないのでお侍様なら字が読めるだろうと思い無礼は承知で声をかけた。
そう言われて侍が「なるほど。そういうことか。では手紙をこちらに寄越せ」と言い読み始めるのだが、「母の病気のことが書いてあるのでしょうか。母は無事ですか。」と娘が聞いても侍は何も答えない。
そのうち手紙を見ながら「ああ、無念である…。手遅れだ。無念だ」と言いながら泣き出したものだから、女中は「ああ、母は死んでしまったのですね」と泣き出す。

往来で泣いている侍と女中を見て、近所の若い連中が「あれはいったい何事だ」と集まってくる。
「あの二人は深い仲なのだが、女の方に子供ができて弱っているのだ。結局は心中しかないということになって泣いているのだ」と訳知り顔に言う者もいて、大騒ぎ。
その脇を塩を売りに来たおじいさんが通り過ぎていき、侍と女中のもとへ。
女中に向かって「何も言わず、うちの二階に越してきなさい」と言う塩屋。
自分にもお前と同じぐらいの年の娘がいるのだが、今は奉公に行ってしまった。自分は娘が心配で心配でならなくて何を見ても娘を思い出しては心配し泣いている。
あなたの事情(若い連中が話していた内容)を聞いてとても他人事とは思えない。
面倒を見るから安心して子供を産みなさい。
そういうと泣き出す塩屋のおじいさん。
3人で泣いているのでさらに騒ぎは大きくなり、大家さんが出てくる。

若い連中に、自分が代表して3人から事情を聞きおさめてくるから、と言って大家さんが3人のところへ行き、事情を聞くと…。

母親のことが心配で泣きだす女、「無念だ」と言って何の説明もせずに泣く侍、泣き屋のように泣く塩屋のおじいさん、それを見てわいわいと勝手なことを言う野次馬。その絵が浮かんできてなんともおかしい。
たわいない噺だけど楽しかった。


小満ん師匠「道具の意地」
おやつが大好きな小満ん師匠。
お菓子や良寛茶の湯の話をされたあとで「道具の意地」。

和菓子の野村屋に、なじみの道具屋が訪ねてくる。主人はこの道具屋を贔屓にしているのだが、主人はかなり耳が遠くなっていて話がなかなか通じない。
道具屋が茶器を見せると「これはいい品だ」と気に入った主人。「これはいかほどだ?」と聞くと道具屋は「十五両にございます」。それに主人が「十両か」と返事。
耳が遠くなっちゃってるんだなもう…と道具屋が「いいえ、違います。十五両です」と言うと「なに?値を上げるのか?」。「最初から十五両と申してます」と言っても「最初に十両と言ったのだから十両で売れ」と主人。
二人がムキになって言い争ってると若旦那が出てきて、道具屋を連れ出して「親父は最近頑固になって言い出すと聞かないので」と謝る。
五両は私が払うから親父には十両で売ってくれ、と。
道具屋が渋々応じ、主人に「では十両で」と言うと「ようやくわかってくれたか」と機嫌の直った主人。
十両を支払ったあとに…。

楽しい~。こういう噺、すごく落語らしくて好き!
意地の張り合いに勝ったと思った主人の最後のセリフがよかったなぁ。

小満ん師匠「百年目」
説教くさいところが全くないすごくあっさりした「百年目」。
番頭さんが大旦那と鉢合わせしたあと、ああもうこれでおしまいだと嘆くところ。
「お前はなんということをしてくれたんだ!…いや、あの旦那はそんなことは言わないよ。今まで長いこと店のために尽くしてくれてありがとう。この度よんどころない事情でお前さんに辞めてもらわないといけなくなった。そうだ、そういわれるんだ」。
その後なんども「今まで長いこと店のために…」とつぶやくおかしさ。
そして次の日実際に大旦那から「今まで長いこと…」のセリフが出るのがまたおかしい。

大旦那が店に帰ってきて「番頭さんは?」と聞く場面もないし、一晩中まんじりともせず着物を着たり脱いだりの場面もないし、大旦那が番頭を呼ぶときに定吉が生意気を言って大旦那に叱られる場面もない。
ごくあっさりと「お前にのれん分けをするよ」と告げる大旦那は、帳面も改めてない。

くーーー。なんて小満ん師匠らしい「百年目」なんだ。
桜の美しい光景と花見を楽しむ庶民やお金持ちの姿、そして普段と打って変わったなりをして楽しむ番頭さんの姿が目に浮かぶ。
よかった~。