りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

霜月の独り看板 第一夜 蜃気楼龍玉「女殺油地獄」

 

11/6(月)東京芸術劇場で行われた「霜月の独り看板 第一夜 蜃気楼龍玉『女殺油地獄』」に行って来た。

・龍玉「女殺油地獄」(上)
~仲入り~
・龍玉「女殺油地獄」(下)


龍玉師匠「女殺油地獄」(上)
龍玉師匠の「女殺油地獄」は国立演芸場で初演をしたときに見に行っていて、その時に龍玉師匠が「これが最初で最後」と言っていたんだけど、再演があって嬉しい。

前座なしで出てきた龍玉師匠。
「我々噺家は季節を大事にします」と。
春なら春の噺、冬なら冬の噺。ただ、秋の噺が少ない。前方で誰かが「目黒のさんま」をやってしまうと、もうない。
でもそういう時のために便利な言い訳があってそれが「噺家の時知らず」。
でもこの言葉を着物を季節に合わせない言い訳に使ってる噺家もいる。
私は今日はもう合わせで出てきてます。羽織も自分で着て出てきたんですが羽織の着方には味のある着方と味気ない着方があって、こんなふうに自分で着るのは味気ない。
何が味があるかといえば、いい女が後ろから羽織をかけてくれて「いってらっしゃい」と声をかけてくれる。これが味がある。
でもある人にそれを言ったらそんなのよりもっと味のある着方がある。それは何かといえば、女が前から羽織を着せてくれる。これが一番味がある。
なぜかといえば、前から着せてくれるということは、顔も近くて抱き合うような形。これで耳元で「また来てちょうだいね」なんて言われたら…!
行くよ行くよ!になります。

そんなまくらから「女殺油地獄」(上)。
前とまくらが違ってるなと思っていたら、深川の芸者だけは羽織を前からかけてくれた。与兵衛が夢中になっている小菊は深川の芸者。
前から羽織をかけながら与兵衛の耳元で「お花見に行きたいけどいい着物がないわ」と言われ、借りた金でほいほい着物を買ってしまった、と。

前に聞いた時より前半は刈り込んである印象。
結末を知っているだけに、お向かいの油屋の女房お吉が与兵衛に対してなまじ親切心を起こしたばかりに…となんともいや~な気持ちになる。
そして大口をたたくけれど何かあると「助けてくれ」とまわりに甘える与兵衛の小心が目に付く。
あれ。結末を知ってるから安心して見ていられると思ったけど、むしろなんかつらい…。
それでも前半は前回同様、落語らしいバカバカしいサゲで少しほっ…。


龍玉師匠「女殺油地獄」(下)
二回目だから大丈夫だろうと思っていた予想は裏切られ、前よりもつらく感じた後半部分。
結局、与兵衛というのはとても弱い人間で、行き当たりばったりで、追いつめられると自暴自棄な身勝手な行動をとってしまう男なのだ。

金貸しの小兵衛の言葉がまるで呪いのよう…。
どうせ殺すならこっちを殺せばよかったのに!と思うのだが、おそらく強い相手には腰が引け、自分がねじ伏せられると思う相手に矛先が向くのだろう。

油まみれになって惨殺するシーンが怖かった…。
落語でこういう世界を描けるってすごいなぁ。後味は最悪だったけど素晴らしかった。