りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

10月特別企画公演 平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催「芸術祭寄席」

10/28(土)、国立演芸場で行われた10月特別企画公演 平成29年度(第72回)文化庁芸術祭主催「芸術祭寄席」に行ってきた。

・小多け「たらちね」
・遊馬「大工調べ」
ロケット団 漫才
・小圓嬢 浪曲 「東雲座」  曲師 沢村さくら
~仲入り~  
・貞心 『赤穂義士伝』より「二度目の清書」
・豊来家一門 曲芸
・金馬「茶金」


遊馬師匠「大工調べ」
最初に江戸時代の職人の腕が大変良かったという話をして「細工は粒々、仕上げをご覧じろ」。この文句の説明をして、「大工調べ」。
前半部分が好きじゃないのと疲れからちょっとうとうと…。啖呵のところで目が覚めて、よーしよーし!と。
遊馬師匠は声も大きいし口調もいいので、気持ちのいい啖呵。
お調べのところ、奉行の威厳があってかっこいい。
あまり好きな噺じゃないんだけど、通しで聞いてはじめて題名の意味がわかって、しかも最初のまくらとびしっと繋がったので、スカッとした。


小圓嬢先生「東雲座」
浪曲は本当に数えるくらいしか見ていないので、ちゃんとわかるだろうかと不安。
最初に歌いだしたときは、ちょっと意味がわからなくて、しまった!始まる前にプログラムをまじめに見ておけばよかった!と後悔したのだけれど、歌のあとのセリフに入ったらとてもわかりやすくて理解できた。

任侠もの?になるのか。三角関係のもつれで親分の田村大造に顔に傷をつけられた旅回りの役者女虎。熊本を離れて、その女を妻とし娘が生まれ3人暮らし。貧しいながらも幸せに暮らしているがある時妻が病に倒れ、「私はあなたに嘘をついていた」と言う。
何かと聞けば、実は娘はあなたの子どもではなく田村の子である、と。
それを聞いても「今までも自分の娘と思って育てて来たし、これからもそれは変わらない」と女虎。それを聞くと妻は「娘を役者に育て、二代目女虎を継がせてほしい」と言い、息を引き取る。
旅回りの川上一座の座長の助けもあって、女虎の襲名披露の舞台を無事に行うことができそうになるのだが、そこへ田村が邪魔をしてきて…。

かなりお年だと思うけれど、声もいいし迫力があって気が付いたら物語に入り込んでいた。面白かった。

貞心先生『赤穂義士伝』より「二度目の清書」
わーい、貞心先生。
貞寿さんのお披露目で見てから大好きになった先生。
初めて聴く話。
お気に入りの花魁を身請けしたから、うまくやってくれと妻に言う大石内蔵助。まさかそんなバカな話があるか、と言う妻に対して聞く耳を持たない大石内蔵助
実母が出てきて忠言するも、昔であれば姥捨て山があったが今はないから捨てることができないと嘯く。
離縁状を書いた大石内蔵助は、妻と実母を妻の実家に送り返す。
しかしそれは討ち入りを気取らせないための、そして妻子、母を守るためにしたことだった…。

討ち入りの首尾を知らせにきたときの口上が一つの聞かせどころなのか。
ドラマティックな内容を抑え気味に語る貞心先生。
講談師にもいろいろなタイプがいるけれど、私はやはりこういう抑え気味の先生が好みだなぁ。
もっと見てみたい。


金馬師匠「茶金」
目利きのまくらから「茶金」。
最初に少し咳き込んでそれが少し後を引いたのが気の毒だった。お茶出してあげてほしかったけどちょっと難しいか。一瞬噺が途切れても構わないけどなぁ。

お茶屋の主人を脅して、茶金さんが首をかしげた茶碗を手に入れたくまさん。
茶金さんの店を訪れて、漏るのにどこも傷がないから首をかしげていたと言うことが分かった時、くまさんが「ああ、なんでそんな紛らわしいことをするんだ。なけなしの金を全てはたいてしまった」と嘆いた後に「一人だけ仲良くしてくれていたお茶屋のおやじと喧嘩までして…」と言ったのが印象的だった。
茶金さんが優しくてユーモアがあってでも威厳があってとっても魅力的。
一攫千金をねらって商売物を売り払ったりしたらあかん、ってたしなめるのも、えらそうじゃなくて…でも威厳があってとても素敵だった。今までこの噺を聴いていてそう感じたことはなかったな。

とにかく最初から最後まで本当に楽しい。昔話を聞いているような感じで、聞いている間多幸感に包まれていた。