りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助ドッポ

3/20(月)、お江戸両国亭で行われた「さん助ドッポ」に行ってきた。
 
・さん助「西海屋騒動」より第六回「義松の悪事」
~仲入り~
・さん助「花見酒」
・さん助「道灌(通し)」
 
さん助師匠「西海屋騒動」より第六回「義松の悪事」
いつものように立ち話から。
先週、仕事で仙台へ行って来たというさん助師匠。
震災で倒壊した酒屋さんを建て直して二階にコミュニティスペースを作り、そこで初めての落語会。
小さな会場だったんだけど高座はわりと高めに作ってあった。
30名ぐらいのお客様に最後「子別れ」をやったらすごくいい反応を見せてくれた。
高座をおりようとしたら、見事に段を踏み外し落下してしまったさん助師匠。
場内は騒然として、噺の余韻も何もあったものじゃない。
 
…ぶわははは。
高座から落下したさん助師匠を想像するとおかしくてしょうがない。
でもほんと怪我がなくてなにより。
私も人のこと言えないけど(しょっちゅう酔っぱらって転んでる)、気をつけてください…。
で、今日の西海屋騒動はほんとに陰惨です、と繰り返すさん助師匠。ほんとに陰惨でグロテスクなので聞いていてもう嫌だなーと思ったら席を外してくださって結構ですので、ってあなた…。
 
そんな立ち話から自ら幕を上げて「義松の悪事」。
お照をだまして惨殺した辰五郎とお山はお照から120両を奪う。
すぐに出立すると怪しまれると思い3年の間はその地にとどまったが、その間も殺しそびれたお照の残した子ども義松の行方が気にかかり調べ、森田屋才兵衛が引き取ったことを知る。
 
3年後に碓氷峠の方(?)まで移るのだが、もう山賊はやめて奪った120両を元手に商売を始めようというお山の言葉に同意した辰五郎。二人で居酒屋を始め、娘のお糸と3人で安定した暮らしができるようになる。
店が繁盛して忙しくなり、誰か小僧を雇いたいと言っていたお山のもとに、熊吉が「それなら小僧にするのにちょうどいい子供がいる」と声をかけてくる。
親が年を取っているのでこれ以上面倒が見られないと預かった子どもだが身体は丈夫だしこの通り器量もいい、と。
それが義松なのだが、お山はすぐに気に入り、小僧としておくことにする。
 
帰ってきた辰五郎が義松に気付くのだが、義松が賽子を振って遊んでいる姿を見て、「あれはほんとに賭場に行ってやったことがある、とんでもない子どもだ」と悪性を見抜く。
あんなやつを置いたら娘のお糸に何か悪さをしかねないという辰五郎に、実はあの子は義松なのだ、とお山が言う。
自分はお照を殺してから毎晩成仏してくれと祈っていたが安眠できた日はない。義松を引き取って自分たちの子として育てればきっとお照も成仏してくれるはず。そして時期を見てお糸と一緒にさせたい。
 最初は「そんな危ないことをしないほうがいい」と言っていた辰五郎だったが、お山がそこまで言うなら、と結局義松を引き取ることにする。
 
お山が猫かわいがりをするものだから増長した義松は早速賭場通いをするようになる。店の金を持ち出したりして店はどんどん荒れていく。
また義松が12歳の時にお糸と同衾するようになる。
とうとう居酒屋をたたむことになり、辰五郎も博打に行っては借金をふくらます日々。
 
ある日辰五郎がお山に「もうどうにも立ちいかないので、お糸を女郎に売ってきた」と言う。
60両で売れて今その半金の30両をもらってきた。
そう言う辰五郎に「そんなことはさせない」と怒るお山。
 
二人の争う声を聞いた義松はお糸に二人で逃げよう、と言う。
どうにかして30両をこっちのものにするから、先に出ていろとお糸に言った義松。
家にあった短刀で辰五郎とお山を殺し金を奪ってお糸とともに江戸へ向かう。
途中、江戸まで駕籠に乗って行かないかと声をかけられた二人。別々の駕籠に乗ったのだが、実はこれが山賊で、お糸はかどわかされ、義松は半殺しの目に合う。
死にかけているところに通りかかったのが、一人の和尚。これが花五郎で、義松を助け自分の寺へ連れていく。
手厚く看病をしてようやく元気を取り戻した義松が、かどわかされた妹を見つけたいというと、花五郎は昔なじみの〇〇(名前忘れた)に相談すると、そういうことであれば自分が昔江戸で奉公していた西海屋という海鮮問屋で若い衆をほしがっていたから口をきいてあげる、という。
 
それならよろしく頼むということで、義松を自分の家に連れて帰った〇〇。
義松が離れで一人寝ていると、夜も更けたころ、扉を叩くものがいる。
義松が何かと思って出てみるとこれが熊吉。
熊吉は義松が辰五郎とお山を殺したことを知っていて脅しに来たのである。
金がほしいのかと思ったらそうではなく、義松の色香にやられて、冥途の土産に一度…と言うのである。
それはいいがここではまずいからと二人で川の方へ向かい、そこでいたして(!)その後、熊吉を殺した義松。
何事もなかったように次の日、〇〇に連れられて江戸の西海屋へ向かうのであった。
 
というところで、「西海屋騒動」のながーーい発端がようやく終わり。
 
…って、おいっ!
もうつっこみどころ満載すぎるわ、この話。
半殺しにあった義松のところを通り過ぎる和尚。…「またお前かっ!」。どこにでも通りかかるな花五郎!イッツアスモールワールドすぎやろ!
そんでもって残虐にお照を殺しておきながら義松を引き取るお山って…。義松の悪性を見抜きながらも受け入れる辰五郎も辰五郎だよ。
そして義松…お前はいくつなんだ!まだ12歳で同衾って。しかも熊吉に誘われて平然といたしてしまうとか、どんだけの経験があるんだ!12歳って嘘やろ!おっさんやろ!
しかもそんなに悪のくせに、山賊の駕籠に乗っちゃうとか。なんやねん!おぼっちゃまか!
そしてあれだけのことをしておきながら(義松がこんなになっちゃったのも花五郎がその周辺の人たちを惨殺したのが原因)、すっかり好々爺になっちゃって、義松のことを見抜けずに江戸に送り込んじゃうって花五郎っていったい!
 
陰惨っていう面でいえば、さん助師匠が心配するほどにはヤラれなかったんだけど(龍玉師匠の殺人モノとかで慣れてるし)、それよりも濡れ場が3回もあったのにはびびったでー。
考えてみたら落語って人殺しの場面は結構芝居がかりでやったりするけど、いたすところに関しては案外ぼかしてあるのよね。
それがこの噺では3回も出てきて、しかもここには書かなかったけど、人を殺してきたあとの辰五郎がお山に「こっちに来いよ」と言うシーンが…な、なまなましい…。なんかやだ…。ばたり。
 
…まあ、いい。許そう。(←何様?!)
さん助師匠直筆の小学生の宿題のような前回のあらすじ、人物相関図といい、お手伝いされている unaさまによるきれいにまとめられた今までのあらすじといい、ものすごく心がこもっていて、他で聞くことのできない(そして今後も二度と聞くことがないかもしれない)噺を聞けるのはうれしい。
 
さん助師匠「花見酒」
前の日に池袋で見た時よりすっきりしていてわかりやすかった。
けど、お互いに釣銭で用意した25銭をあげたりもらったりするシーンが抜けてるところがあって、あれ?って。
きっと前半で燃え尽きたに違いない。ふふふ。
 
でもこういうおバカな小学生男子丸出しな噺、さん助師匠にとっても合ってる。
あんまりかからない噺だから、寄席でもどんどんやってほしいな。
 
さん助師匠「道灌(通し)」
とにかく前半が長かったので残り時間もわずか。「花見酒」で終わってもいいんですけど…悩んでたんですけど…やります!と、「道灌」の通し。
うわーー、うれしいーー。
 
そのかわり久しぶりにやったせいなのか?すでに燃え尽きてしまっていたのか、時々もやもやに(笑)。
くまさんがご隠居から渡された本(なんの本だ?)をぱらぱらめくりながら「この絵はどういう意味ですか」と聞くんだけど、明らかに聞かれたご隠居が「(ええと。次はなんだったっけ?)…」と困ってるようす。
くまさんの言い間違いに、「ここは本来〇〇と言うところだな。やっつけでやるからこういうことになる」とご隠居が言ったのには笑った。
 
あー楽しかった。
また来月が楽しみだ。

次回の「さん助ドッポ」 4/26(水) 両国亭 19時開演
初代談州楼燕枝の述「西海屋騒動」第七回「霊岸島船松町西海屋」、「花見の仇討 」ほか
その後は、5/29、6/28、7/31