りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭一月下席夜の部

1/23(月)、末廣亭一月下席夜の部に行ってきた。

雷蔵「ねぎまの殿様」
・松鯉「源平盛衰記 那須与一・扇の的」
~仲入り~
・歌春「鍋草履」
・Wモアモア 漫才
・南なん「不動坊」
・夢太朗「置き泥」
・喜楽・喜乃 太神楽
・茶楽「芝浜」


雷蔵師匠「ねぎまの殿様」
「目黒のさんま」のねぎま版のような噺。
前も雷蔵師匠で聴いたことがあったかも。

お殿様が三太夫を連れて向島へ雪見に出かけようとすると、上野広小路のあたりでいい匂いがする。
「このにおいはなんじゃ」と聞くと「煮売り屋でございます」と三太夫。
入ってみたいという殿にあれはごくむさい所だと三太夫が言うのだが入ると言ってきかない殿様。
仕方なく店に入るとごく汚い店で椅子は醤油樽。
主人の言う「ねぎま」を「にゃー」と聞き違える殿様だが、食べてみるとネギの芯が飛び出すので「鉄砲仕掛けになっておる」と驚きながらも味はうまいと気に入る。
酒を所望すると「だりにしますか三六にしますか」と聞かれ、「だり」の方が上等と聞きそちらを飲みそれも気に入る。
またあの「ねぎま」が食べたいと思った殿が、ご膳番の留太夫に「にゃーを持て」と所望。
意味が分からない留太夫に三太夫がいちいち指南をして、そのようなものをお出しする、という噺。

庶民の符丁を喜んで使う殿さまがとってもかわいい。
殿さまが入って来ても動じない店の主というのもなんか落語的で面白くて、好きだなーこういう噺。
雷蔵師匠、時々ギャグを入れながらの楽しい高座だった。

松鯉先生「源平盛衰記 那須与一・扇の的」
にこにこして出てきて決して声を張ったりしないのに、話し始めると空気がぎゅっと締まる。
この日はお客さんも少なくてなんとなくちょっとどんよりした雰囲気だったんだけど、そんな中でも手を抜かない松鯉先生が素敵だ。

義経にどうにか一矢報いたい平家がある日船縁に扇を立てた小舟を出す。この扇の的を射抜いてみよという挑発なのだが、そんなことができる腕の者はいないだろうという計算があった。
また義経が女に弱いことを知っていたので「玉虫の前」と呼ばれたよりすぐりの美女に舞を躍らせ気をそごうとした。
この美女がどれほどの美女だったかを、とてもユーモラスに語る松鯉先生。思わずぶわははと笑ってしまう。
誰もが怖気づいて名乗り出ない中、白羽の矢が当たったのが那須与一。まだ十代の少年だったが見事な弓の腕前で、義経が所望した通り、扇の要目がけて弓矢を放ち…。

後半は思わず息を止めてしまうぐらいの緊張感で夢中になって聞いた。
松鯉先生が仲入りってほんとに贅沢。

南なん師匠「不動坊」
仲入りの時に、茶楽師匠の応援隊のおじいさんたちがどっと入ってきて最前列に陣取ったのだが、お酒も入っていたこともあって、歌春師匠のまくらやWモアモアの漫才にいちいち答える。
中に「いいなー」って言うおじいさんがいて、歌春師匠のいつもの話(楽屋にいるとなんでもしてもらえる、気楽な商売、家に帰ると熱いお風呂が沸いていて…)全てに「いいなー」。
こりゃかなわんなぁと思っていたんだけど、南なん師匠が「不動坊」をやり始めるとぴたっと止んだ。えっへん。(←なぜか私が誇る)

この間見たばかりだったので、なんとなくおさらいをするような気持で見入ってしまった。
あんころを買ってきてバカ呼ばわりされたまんさんが「お前らだってばかじゃねぇか。だいたい利口なやつがこんなことするか?」というのが大好き。
何も聞かされてない前座が「なんの幽霊でしたっけ?…はいっ」といちいち向き直ってやるのが楽しい。
アルコールだと思って火をつけるしぐさもいいなぁ…と思いながら見ていた。

茶楽師匠「芝浜」
「紙入れ」ばっかりだーと思っていた茶楽師匠。
何をされるのかなぁと思っていたらまくらなしで「芝浜」。うひょー。

おかみさんがとても色っぽい。でもなよなよしているわけじゃなくしっかりしている。
旦那の方は最初は仕事に出るのを渋ったり、外に出てからも早朝に出ていかなければならない魚屋という仕事を愚痴ったり財布を拾うと「誰が仕事なんかでるかい」と言ったり。
でもあれは夢だったんだと聞かされると、「ああおれはなんてことを」と後悔しおかみさんに「おっかぁどうしよう。もうこうなったら死ぬしかない」。
「お前さんの腕なら絶対に取り戻せるよ」と言われると「わかった。もうおれは酒はやめる。一生懸命働くよ」とやる気を出す。

3年たった大晦日、おかみさんからあれは本当のことだったと聞かされて最初はげんこを振り上げかけるのだが、最後まで聞くと「おめぇはえれぇよ」と頭を下げる。
またこう語りが芝居くさくなくてスマートなんだけど気取ってるわけじゃなくてすごくすてき。
よかった。