りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治 入船亭扇遊 二人会

12/18(日)関内ホールで行われた「柳家小三治 入船亭扇遊 二人会」に行ってきた。

・遊京「道具屋」
・扇遊「三井の大黒」
~仲入り~
・そのじ 寄席囃子
小三治初天神


遊京さん「道具屋」
高座にあがってまずは携帯の注意。
「万が一鳴ってしまった場合はすみやかに消ってください。これはご婦人に多いんですが、鳴り終わるのを待つ方がいらっしゃいます。すみやかにお切りください。あと、最近こう言うとお客様からおしかりを受けることがありまして…。それはスマホにしてから切り方がわからない、とおっしゃるんですね。実はうちの母親もそうでして…。」
笑いを交えて丁寧に説明したにもかかわらず、扇遊師匠の落語の最中に大音量で携帯の着信音が鳴り響き、しかも止まるまで止めないという…。
もうこれだけ説明してもダメってことは多分よっぽど耳が遠いか人の話を理解できないか…。
それならもう落語聴いてもわからないよね…きっと。だったらもう来ないでほしい。そういう人には!

って激昂してしまった。ぜいぜい。
遊京さんの「道具屋」。相変わらずのんびりした語り口調。
ところどこどすごく面白いんだけど、ちょっと眠くなってしまうところもあり。


扇遊師匠「三井の大黒」
小三治師匠の前に上がるっていうのは…もちろん寄席ではそういうこともあるんですが、こんなふうに二人会なんていうのは初めてで…ほんとにありがたいことで。これも師匠のおかげだと思ってます。
うちの扇橋と小三治師匠は仲がよくて、うちの師匠は本当に小三治師匠のことが大好きでした。楽屋でも二人揃うととても楽しそうで、弟子としてそういう姿を見るのはうれしいことでした。
こうして小三治師匠と会をさせていただけるというのもうちの師匠のおかげだと思って、ほんとに師匠に感謝しています。

小三治師匠との思い出というと、私がまだ前座だったころ、九州に仕事に行ったことがありまして。
小三治師匠ともう亡くなってしまった師匠と先代の正楽師匠、それに私の4人で…あれは親子寄席で子どもとその親御さんに向けてやるという会で。昼夜公演だったんですが、ネタ出ししてまして…私が「道具屋」、小三治師匠が「禁酒番屋」でした。
私が前座で一番最初に上がったんですが「道具屋」、結構ウケたんですね。お子さんたちにも笑っていただけた。
小三治師匠の「禁酒番屋」は、師匠も切腹の説明をしたり…いろいろ考えられていたんですけど、ちょっとお子さんには難しかったのか…。
すると夜の部の前になって小三治師匠が「お前、トリであがれ」と言い出しまして。
ええええ?と思ったんですけど、もちろん「それは無理です」とは言えない。
師匠が他の出演者に「いいよな?」と言うと誰も異存はないということで…。
前座ですから直前まで座布団ひっくり返したりめくりをめくったりして…その後で師匠の羽織をお借りしてトリで上がったもんですから、お客さんは驚いてましたね。「え?さっきまでうろちょろしていたやつが出てきた?!」。
…あの時以来の緊張です。今。

そんなまくらから「三井の大黒」。
扇遊師匠らしく、政五郎や江戸の大工は威勢がよくてからっとしていて明るい。
甚五郎はちょっとつかみどころがないけれど嫌味な感じは全くなくて、何かこう江戸っ子たちとは違う次元を生きているという感じ。
政五郎と甚五郎のやりとりも楽しいのだけれど、政五郎がとにかくほんとに気持ちのいい人物で見ていて楽しい。
そしてなにかこう端々に扇遊師匠の気合というか充実感というかそういうのがほとばしっていて、ああ、特別な会に来られんだ…と見ているこちらもじわじわと嬉しくなってくる。

最近の扇遊師匠はほんとにこう生き生きしていて弾むような高座だけど、その中でもほんとに気合の入った高座を見られて大満足だった。


小三治師匠「初天神
さっきまで高座に上がっていたそのじさんの生三味線で出てこられるのは本当に幸せです、と小三治師匠。
「もう文句のつけようがない」ってべた褒め。ほんとに小三治師匠、そのじさんが好きだよね(笑)。

それから扇橋師匠との思い出話。
さっきも楽屋で話が出たんですけど、もう10年以上前に「小三治」って映画がありまして。
私は見てないんです。でも見た人の話によるとそれには扇橋が結構出てるらしくて。そんなつもりはなかったんですけど結構一緒にいたんですね。
それで二人で旅行に行って温泉に入るシーンがあって…その時は湯船のほうすれすれにカメラがいて撮ってたわけで、もちろんあの見えちゃいけないところは見えないように…万が一見えた時はなんですかこう…ぼやけさせたり…しなきゃいけなかったんですけど。
扇橋がそれに気が付いて、やたらとブラブラさせながらカメラの前を行ったり来たりしてね。
あいつはそういうところがありましたから。
それでそこはカットせざるを得ないんですけど、話の流れからカットできないところもあってね…作ってる人が苦労したらしくて。

で、この映画、最初は東中野の小さな映画館で限定上映されたんですけど。それを扇橋のかみさんが見に行って「うちのおとうちゃんがたくさん出てる」って喜んでくれたんですけど後から私に「小三治ばかりうつってる」って文句言ってました。でも映画のタイトルが「小三治」ですからねぇ…。
まだ見てないんですけど、そろそろ自分でも見ようかな、なんてね。
あいつのブラブラも確かめたいしね。

あーそれで扇遊さんね。あの人が前座で入ってきたときのこと、いまもよく覚えてますよ。
高校出てすぐだったか、ちょっとしてだったか。
いい噺家になりましたね。うれしいです。

…扇遊師匠についてはその一言だけだったけど、本当に心がこもっていて、じーんときてしまった。
そんな話から「小児は白い糸のごとし」と始まったので、おお「初天神」!と思ったんだけど、そこからまた、「私に娘がいまして」と。
そんなにしょっちゅう会うわけじゃないけど、時々亭主と子供を連れて遊びに来る。
で、私は刀を3本持ってるんですけど、それはもちろん表に飾ったりしないでちゃんとしまってあるんですけど、そのことを孫が聞きつけたらしくて、「じいじは刀を持ってるんでしょ。見せてよ」。
いや、そういうもんは見せたりしないんだ、と言うと「じゃ見せなくていいからどこにしまってるか場所だけ教えてよ。誰にも絶対言わないし、何もしないから。教えてよ。ぼくだけには教えてよ。絶対言わないから」

…お前が一番危ないよ!
そんなまくらから「初天神」。

小三治師匠の「初天神」は何度も見ているけれど、扇遊師匠の力の入った高座のあとだったからなのか、なんかもう本当にノリノリで…もう楽しくて楽しくて笑いっぱなし。
金坊のコドモにありがちなダダのこね方も、父親の子どもっぽい言動もすべてがかわいくて魅力的で楽しかったー。
こんなに楽しそうな小三治師匠、久しぶりに見た気がする。

ほんとに来た甲斐があった。すばらしかった。