りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さん助 燕弥 ふたり會

10/24(月)、池袋演芸場で行われた「さん助 燕弥 ふたり會」に行ってきた。

・あお馬「道灌」
・さん助「しゃっくり政談」
・燕弥「試し酒」
~仲入り~
・燕弥「七段目」
・さん助「黄金餅


あお馬さん「道灌」
時々あれ?って思うような面白さ。
聞き飽きた噺なのにわかりきってるところで思わず「ぷっ」と吹き出してしまうことがある。技術が上がってきてるということなのかも。


さん助師匠「しゃっくり政談」
とにかくこの会が楽しみでしょうがないと言うさん助師匠。
落語家は大勢いるけど自分が心を許せるのは燕弥くんだけ。
何が楽しみって燕弥くんの高座を見られるのがほんとに楽しみ。

この間私国立劇場に歌舞伎を見に行きまして。
チケットが2枚あったので誰を誘おうかと考えて、弟弟子の小んぶを誘ったんです。小んぶ、ご存知ですか?身体がすごく大きくて髪の毛もこう…なっていて、見た目いかつくてロシアの殺し屋みたいな…。
で、小んぶは歌舞伎をほとんど見たことがないって言ってて。
私は結構見てるんですよ。
だから「俺は結構見てるからわからないことは後で聞いて」と先輩風を吹かせたんですよ。
そうしたら終わってから小んぶに言われました。
「兄さん…かなりの時間、寝てましたね」。
そう。教えてあげることなんかなにもありませんでしたね…。

私、昔は映画を見るのが大好きだったんですが、最近暗くなると寝てしまうんです。
映画を見に行っても電気が消えたとたんに寝ちゃう。
この間は自分の高座でも…「死神」をやってたんですけど係りの人が気を使ってくれたんですかね、舞台のあかりを暗くしてくれてんです。そうしたらまぶたがおもーくなってきて…。

そんなまくらから「しゃっくり政談」。
何回見てもこの定吉が秀逸。
口をとんがらかして「またあたしが行くんですか?」「え?おじょうさん、あたしに惚れてるんですか?」。
うるさいから黙りなさいと言われると口をとんがらかして黙って歩いてるんだけど「顔がうるさい」。
ほんとに顔がうるさいんだからすごい。

珍しくまくらが長めでぶっちゃけすぎたせいかちょっとリズムを崩したのか、言い間違えがいくつかあって、それに気づいたお客さんが何人か笑うと、「今日黄金餅で言い立てがあるんですけど大丈夫なんでしょうか」とぼそっと言うので大笑い。

初めて聴くお客さんが多かったのか、「うぇ!」でびっくりして笑いが起きると、さん助師匠どんどん楽しくなってきたみたいで、どんどんノリノリに。
うひょー、楽しい!
ちょっとドキドキ心配したけどすごく楽しい「しゃっくり政談」だった。
 
燕弥師匠「試し酒」
前に上がったさん助師匠のことをおかしそうに話す燕弥師匠。
「今のね、しゃっくり政談って言ってましたけどね、次の御用日っていう題名でやられてる噺で。あんな奇声じゃないんですよ。ふつうは。しゃっくりですから。ほんとに…よくやるよなぁ…。僕は短く下りようと思ってましたけどちょっと長めにね…。だってあれじゃ少しのどを休めないと次できないでしょ。ぶわははは。」
 
この夏、池袋演芸場にさん助師匠と一緒に出ていたという燕弥師匠
「ぼくは交互出演だったんで4日目ぐらいから出たんですけど。その日にあの人が真田小僧やったんですよ。でもこれがね。また全然普通じゃない真田小僧でね。次の日袖から客席を見ると、三三師匠のファンなんでしょうね、前の日に来てた方も何人かいらしてたんですよね。だから僕その日は真田小僧をふつうにやってね。ふふふ。そんなふうにさん助が前の日にやった噺を僕が次の日やるっていう流れができてね…そうしたら金馬師匠がつられたのか前の日にほかの人がやった噺をするようになってね…。師匠はそんなことしなくていいんですよ、と思って。」
 
そうだったんだー。
三三師匠トリの池袋はちょうど夏休みをとっていたから結構通っていたんだけどそれは気が付かなかったなー。
でも寄席ってそういう遊びができるところがいいよなぁ。そういうのってなんかすごく素敵。
 
それからお酒のまくらから「試し酒」。
もうほんとにお酒がおいしそうでやってる燕弥師匠も楽しそうで見ていて顔が笑ってしまう。
久蔵のキャラクターがいいなぁ。口は悪いけどほんとに素朴で人が良くて裏表がなくて。
自分が負けたらご主人様が損しちゃうと心配したり、それを相手の旦那がちょっと羨ましそうだったりするところがすごくいい。楽しかった!
 
燕弥師匠「七段目」
お芝居風のところがすごく形が良くてかっこいい。かっこいいけどこれ見よがしじゃなくてあくまでも落語っぽくてすごくおかしくて笑ってしまう。
こういう噺、燕弥師匠にとっても合ってるなぁ。やっぱりいい男だからなぁ。
淀五郎とか中村仲蔵とか絶対合ってると思う。聴いてみたいなぁ。
 
さん助師匠「黄金餅
まくらなしでいきなり噺に入ったんだけど、これがもう今まで聞いたことがないようなとてつもなく面白い「黄金餅」だった!
 
乞食坊主の西念が病にかかり長屋で隣に住んでいる金兵衛が見舞ってやると、「ちっともよくならない」と西念。
金がもったいないから医者にも行かないし薬も飲んでないという西念に「何か食った方がいい」と金兵衛が言うと「だったらあんころ餅を買ってきてくれ」と金兵衛。
 
金兵衛があんころ餅を買って持って行ってやると食べてるところを見られたくないから置いてとっとと帰れと言われ、家に帰ってきてからもどうにも腹が立ち「いったいどうやって食うんだろう」と壁の破けたところから覗く金兵衛。
この覗いてるしぐさだけでも笑いを誘うのはなんでなんだ?顔が面白いから(←失礼)?じゃないよなぁ。なんかそれがすごく落語っぽくておかしいのだ。
餅を伸ばしてそこに金貨を入れて食い尽くす西念の様子も気持ち悪いんだけどなんともいえずおかしくもあって笑える。
 
全部の金貨を飲み込んで死んでしまった西念を見ながら、どうにかしてこの飲み込んだ金貨を自分のものにできないかと考えた金兵衛
大家に、西念には自分の寺で供養して火葬してやると約束をしていると言って、長屋の連中と西念の死体を入れた菜漬けの樽を麻布の寺まで運んでいく。
 
ここの言い立てが見せ場の一つなのだが、この地名に有名な果物屋や甘味屋の紹介を盛り込んでいて、これがすっごく楽しい。
さん助師匠の口から「千疋屋のフルーツバイキング」とか言われただけでおかしいのに、次から次へと淀みなく甘未屋を紹介していくというばかばかしさ。
「そして麻布の寺に着いた時にはすっかりみんな糖尿病」って…ぶわははは!
 
またこの寺の生臭坊主のめちゃくちゃ加減がすっごくおかしい。
べろんべろんに酔っぱらいながら風呂敷をかぶって茶碗を叩きながらめちゃくちゃなお経を読むのもばかばかしくて楽しい。
 
一人で西念の死骸を持って気味の悪い通りを抜けるとき、「俺はもうあの貧乏長屋にいたくねぇんだ」「一度は所帯を持ってかみさんに”あなた~”って言われてぇんだ」と言うのがとても良くて、ああ、這い上がっていくためにこんなキタナイこともするんだなと金兵衛の気持ちに寄り添えて、それが悲しくもありおかしくもある。
焼き場で金を探すシーンも金兵衛が異様なハイテンションなので、もうおかしいやら気持ちわるいやら…。
お客さんがどかんどかんとウケるからさん助師匠もどんどんノッてきて相乗効果ですごく陽気になって楽しい楽しい。
ものすごく明るく気が狂ってる!でもすごく人間くさい。おかしくてかなしくてでもおかしいの方がちょっと勝ってるから後味が悪くない。

明るくてだけどなんか悲しさも漂う「黄金餅」。私の好きなさん助師匠らしさが詰まっていた。
また寄席でトリをとることがあったら「黄金餅はぜひやってほしい。