りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

雷門音助勉強会Vol.4

10/12(水)、連雀亭で行われた「雷門音助勉強会Vol.4」に行ってきた。


・晴太「桃太郎」
・音助「置泥」
・夢丸「目黒のさんま」
~仲入り~
・トークコーナー(夢丸、音助)
・音助「棒鱈」

 

晴太「桃太郎」
このツマラナイ噺をこんなに楽しくできるなんて。しかもそんなに変えたりクスグリ入れたりしてないのに。
大きな声と表情と間だけで十分面白い。
すごい前座さんだなぁ。


音助さん「置泥」
今日の楽屋はとにかく楽しい、と音助さん。
この会、今回が4回目で毎回ゲストを呼んでいて、できるだけ普段お付き合いのない違う協会の人を呼んだりしてきたんだけど、今回は満を持しての夢丸師匠。
夢丸師匠は自分が前座の最後の年に真打になられた大先輩だけど、とにかく大好きな先輩なので、もう楽屋に入った途端、すごいホーム感。ここは浅草か?という感じ。

それから今週は自分の地元のお寺のお祭りに呼ばれて落語をやってきた、という話。
お客さんは自分の友達や家族や親戚など知り合いばかり。
つまりとってもやりにくい。
さらに会を開く側も落語会なんかやったことがなくて慣れてない。
そしてなぜでしょうね。こういう地方のお寺の会だと必ず司会がいるんです。この日も元市議会議員が司会。
もちろん音助さんの名前も知らなくて紙を見ながら経歴なんかを紹介して「さぁでは音助さんに来ていただきましょう!」。
そういって今まで使っていたマイクを高座に戻す。
拍手に迎えられて出てきて高座に上がって頭を下げて話し始めようとすると、司会者がまたマイクを抜き取って「さあ。今日はどんな気持ちでこの会を迎えられたんでしょう?」
…まだしゃべるのかよ!

「雑排」をやったんだけど、最後にサゲを言おうとしたところで、市議会議員2号がやってきて後ろから「先生、お時間です」と声をかけてきた、というのもおかしかった~。
音助さん、体温低めな感じだけど意外と毒舌でけろっとしていて面白い。

そんなまくらから「置泥」。
これは南なん師匠の「置泥」?!もしかすると別の方から教わったのかもしれないけど、芸協のかたちなのかな。

南なん師匠の「置泥」は何回も聞いているけど、音助さんのは印象が全然違う。
家にいる男も泥棒もしゅっとしていていい男(笑)。
同じ噺でも全然印象が違うから落語って面白い。

どんどんお金を出してしまう泥棒が男に「すまねぇなぁ」「催促したみたいで」と言われて泥棒が毎回「なんだ、このやろう!」と言うのが、漫画っぽくて面白い。


夢丸師匠「目黒のさんま」
北海道の学校寄席に行ってきたという夢丸師匠。
ここ数年着物で生活をしているんだけど行く土地によって反応が全然違う。
北海道では奇異なものを見る目で見られ、まいったなぁ、帰りは着替えて帰ろうと思いながら、学校へ。
すると迎えに来てくれた校長先生が「ああっお着物なんですね!噺家さんってそうなんですね!」とえらい感動してくれた。
高座を終えて帰ろうとすると「そのままお着物でお帰りに?」とキラキラした目で聞かれ、着替えたいとは言い出せず「え、ええ。そうです」。
校門まで出てきてくれて見送ってくれて、田舎のまっすぐ続く一本道をとぼとぼ歩きながら後ろを振り向き、もう大丈夫だろうと思ったので道で着替え始めたら、そこで携帯が鳴りだした。
出ないわけにはいかずに出てみると音助さんで、今回の会にゲストで来てほしいと。
嬉しかったけれど着替えてる最中ですごくわたわたしてしまった。
音助さんにはなんのことだからわからなかったでしょうが、と。

でもこうやって大好きな後輩からゲストに呼んでもらえるのは無上の喜びです。
本当にうれしい。天にも昇る気持ち。
で、4回目か。4回目ってことはあとの3回は誰が呼ばれたんだろう。おれは4回目かって…。そういうとこ結構気にしちゃうんですね。案外繊細なんで。

そんなまくらから「目黒のさんま」。
噺が始まってすぐに「お、目黒のさんまだ!」と思ったら、その空気を察知してか夢丸師匠が「落語ファンのみなさんはこの季節、この始まりは…とお思いでしょうが、隣の人に”これはあれよ”と耳打ちしたりせず、大人の対応でお願いします」と言ったのがおかしかった~。

もうとにかく激しくサービス精神に満ちた高座で、笑いっぱなし。
途中何度も携帯の着信音が鳴って「携帯が…」と口走ったりしてリズムを崩しながらも、途中で雑談に入ったりしながらも、とにかく最初から最後まで爆笑編の「目黒のさんま」。
わがままを言ったりさんまが恋しすぎてシャブ中みたいになっちゃうお殿様もかわいかった!


トークコーナー(夢丸師匠、音助さん)
毎回この会ではゲストとのトークコーナーがあるらしいのだが、今回は音助さんが夢丸師匠に「落語との最初の出会い」と「入門時のエピソード」を聞いて、夢丸師匠がそれに答えたのだが、まぁこれがおかしいおかしい。

図書館で落語の本と出会い、誕生日に買ってもらったラジオで初めて落語を聞き、それからはテープに落語を録ったりお小遣いをためて浅草演芸ホールに落語を聞きに行ったりと典型的な落語少年だった夢丸師匠。
浅草に初めて行った時は「一日中落語を聞けるなんてここは夢の国か!」と思ったんだけどお客が5人しかいなくて「夢の国、さびれてる」と思ったというのがおかしい。
そのときに出てくる芸人がみな客が少ないことをいじるんだけど、先代の夢丸師匠はまくらもふらずにいきなり噺に入り汗びっしょりになりながら熱演してそのままさっと下がって行った。
それがすごくかっこよくて、その後落語家になろうと思った時に「あの師匠のところに入ろう」と思った。
書置きを残して夜行列車で東京へ行こうとしたものの雪で電車が止まって行くことができず、日を改めて師匠を訪ねて行った。
自分の地元だったら〇〇村といったら10家族ぐらいしか住んでないから「日暮里」という場所だけで師匠の家も見つかるだろうと思って行ってみたらそうはいかない。お土産に持ってきた米俵を担いで演芸場を訪ねても師匠の家を教えてもらえない。
途方に暮れて協会に電話して一度は断られたのだが号泣したらかわいそうに思ったのか教えてもらえた。
それで師匠の家に行って玄関を開けようとすると鍵が閉まっている。田舎では出かけるときに鍵なんかかけないのでこれは外出されているんだろうと思い、玄関先に座り込んで師匠の帰りを待っていたら、近所の人に通報されてしまい、警官が来てしまった。
まるで金八先生のシーンのように警官に連れて行かれそうになった時に、おかみさんが気が付いて出てきてくれたのだが、この時のおかみさんのしてくれたこと…今でも感謝しかないのだが、「この子はうちの子です」と言って家に入れてくれた。
帰ってきた師匠もおかみさんが「うちの子」と言ってあげた人間をむげに帰すわけにもいかず、入門できた。

面白おかしく話しているけど夢丸師匠の純粋さとそれに触れて胸がいっぱいになったであろう師匠とおかみさんの気持ちを想ってじーんとする。
僕ばかり喋っちゃって…と気にする夢丸師匠が音助さんに入門のいきさつを聞くと、音助さんも浅草演芸ホールに一日お籠りをして唯一覚えていたのが助六師匠だった、と。
にこにこ笑顔で出てきて楽しそうに高座をやってまたにこにこ帰って行ったのが印象的だった。
あと実は自分は師匠をその前にテレビで見たことがあった。三人羽織をやっていたんだけどその時の右手が助六師匠で手をひらひらする仕草がとても美しくて「これは誰がやってるんだろう」と見たので名前を覚えていた。

楽しげに自分の入門のいきさつを語る夢丸師匠も、夢丸師匠の話を本当に面白がって聞いている音助さんもとても素敵だった。


音助さん「棒鱈」
シュっとしてかっこいい音助さんだけど、こういう田舎者が存外にうまい。酔っぱらって陰気になって絡みだす男もとてもリアルでいるいるこういう人。楽しい!

トークコーナーは撮影OKだったので、楽しそうなお二人の様子をパチリ。

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