りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第77回 月刊少年ワサビ 柳家わさび独演会

・「まんじゅうこわい
・「八年生」(思い出補正/日本大学芸術学部南極校舎/いいなずけ)
〜仲入り〜
・「死神」

まんじゅうこわい
扇橋師匠の思い出話がなんだかべらぼうに面白かった。
前座時代、扇橋師匠が飲み残したお茶を「あやかりたい…」とこっそり飲んでるところをこみちさんに見つかり、「そういうところから病気がうつるんだよ」と言われた、とか。
楽屋で扇橋師匠がカバンからバナナを取り出して、揺れながら丁寧に皮をむいて、揺れながらすじをとって、一口ずつ食べていた、とか。

まんじゅうこわい」はネタ卸し。とにかく顔芸がすごい(笑)。なんかもうそれだけで笑ってしまう。
こわいものを並べるところとか、買ってくるまんじゅうの種類とか、結構どれも短めなのはなぜだろう??

「八年生」(思い出補正/日本大学芸術学部南極校舎/いいなずけ)
何より苦労したのが「日本大学芸術学部南極校舎」でした、とわさびさん。
考えてみたらこれは固有名詞だった。やっぱり固有名詞はいけません。どうしても広がらなくなっちゃうから、と。
一生懸命考えて作ったけどほとんどの時間を「日本大学芸術学部南極校舎」に費やしたので…もしもう一人の自分が客として自分を見ていたら「がんばったな。でもひどいな」と言うと思います。
そう言いながら「八年生」。

日芸の江古田校舎にやってきた新入生が先輩に話しかけられる。
何年かと聞けば「八年生」。留年したのかと聞いたら「そうじゃない」。何学部かと聞けば自分はもうあらゆるところに才能がありすぎるので「表現」だと言う。
そして新入生に向かって描いた絵を見せてくれと言って一目見るなり「あーわかった。これね。」とバカにする。
なんだあいつは!!と怒っていると他の先輩が話しかけてきて「あれは日芸に落ち続けてる男で日芸生じゃないんだ」と言う。
えええ?と驚いていると、その八年生の幼馴染だというかわいこちゃんが現れて八年生に話しかけ…。

これはもう二度とやらない、出来が悪いと言うんだけど、無理やり感がないんだよなぁ、わさびさんの作る噺って。 だから聞いていて辛くならないんだなぁ。
そしてちょっと苦しいところはキャラで押せるのも強みなのかも。

「死神」
みなさんは神頼みってしたことがありますか、とわさびさん。
内弟子のころにかなり精神的に追い詰められて、師匠とおかみさんが出かけたあとに仏壇に向かってかなり真剣にお願いをした。それは「いい噺家になれますように」でもなんでもなかった。
「おかみさんがもう少し優しくしてくれますように」。
そう言いながらもしかして盗聴器が仕掛けられているかもしれないと思って「聞いてるんでしょ、おかみさん!」と声を出したりした、というのがなんともいえずおかしい。

わさびさんの「死神」はなんとも独自。
何がって、死神が「乱杭歯」というのを言葉でなく顔で表現しているのだ。それがなんか赤塚不二夫の漫画っぽくてすごくおかしい。
「死神」であんまり笑っちゃ失礼かもと思いながらも死神が出てくるとなんともいえずおかしくて。
なかなか若い人がやると難しいように思える噺だけど、とてもわさびさんらしい「死神」でよかった。