りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

真夜中のカウボーイ

真夜中のカウボーイ (ハヤカワ文庫 NV ハ 13-1)

真夜中のカウボーイ (ハヤカワ文庫 NV ハ 13-1)

★★★★

テキサスの田舎町で育ったジョウにとって、西部のカウボーイは男らしさとタフネスのシンボルだった。ジョウは頑健な肉体をカウボーイの衣装に包み、富と名声を夢見てニューヨークにやってきた。しかし現実は厳しく、孤独感ばかりがつのっていく。やがて彼は肺を病んだ詐欺師のリッツォと知り合い、共同生活をはじめるが…。

主人公ジョウは愛されずに育った男。誰かと心を通わせることも自分を見つめることもなく、青年になった自分の体をもてあまし、映画みたいなカッコいい暮らしを夢見てニューヨークに出てくる。
男娼として一儲けしてやろうと考えていたジョウだったのだが、金をもらうどころか金を払う羽目に陥ったり、詐欺師にだまされて金を巻き上げられたりして、せっかく貯めた金もあっという間に底をつき、自慢のトランクケースもホテルに没収され追い出されてしまう。
住む場所も失ったジョウは自分をだました詐欺師のリッツォと再会し、リッツォと共同生活を始めるのだが…。

クズのような二人だがそれはすべて彼らの責任なのだろうか。
生まれたときからなにも与えられず愛も知らずろくな教育も受けず、生活をするということ、どうやって生きていくのかということがわからない。
底辺から抜け出すことの難しさが伝わってきて読んでいてヒリヒリする。
二人が一時でも心を通わせ希望のようなものを一瞬抱いたのがせめてもの救いか。

落ち込んでいる時に読んだので、読みながらますます落ち込んでしまった…。

よくこれを映画にしたなぁと驚くほど地味で陰鬱な物語だが、映画を見たことのある人によれば、陰惨なシーンも音楽と撮り方でそうは感じさせないらしい。
いつか映画も見てみたい。