りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

若きウェルテルの悩み

若きウェルテルの悩み (新潮文庫)

若きウェルテルの悩み (新潮文庫)

★★★★

親友のいいなずけロッテに対するウェルテルのひたむきな愛とその破局を描いたこの書簡体小説には、ゲーテ(1749‐1832)が味わった若き日の情感と陶酔、不安と絶望が類いまれな抒情の言葉をもって吐露されている。晩年、詩人は「もし生涯に『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、その人は不幸だ」と語った。

恋愛の至福があっという間に地獄に変わる。
その落差が面白い。なんて面白がったらウェルテルにもゲーテにも申し訳ないのだが、私は存外楽しく読んだ。

魂の震えるような恋愛というのは得てして独り善がりで成就は難しく、その熱情を自分でコントロールできなければそのまま地獄へ続いていることを我々は学ばなければならない。

恋に落ちた時は、この恋は特別なものなのだ、自分は特別な存在なのだ、この出会いは運命なのだと思うものだが、その熱情がそのまま続いて行くことはまずない。
相手が引いてしまったり、自分も最初のころには見えていなかったことが見えてきて、このままじゃいけない、と目が覚めたり。そうやって自分の生活…仕事や友だちや付き合いと恋愛との折り合いをつけていく。
しかしこのウェルテルのように、生活にそれほど不自由していなくて恋愛の情熱だけを見つめ続けて行くことができるような状況にあったとすると…。

恋愛において自分の心の底ばかりを覗き続けていたらたどり着く先は狂気だ。
悲劇だが突き抜けた爽快さを感じるのが不思議だ。
この作品を文芸漫談で両氏がどうさばくのかが楽しみ。