りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

わたしたちのすべての昨日

わたしたちのすべての昨日

わたしたちのすべての昨日

★★★★

北の町の母親のいない反ファシズム一家のなかで存在すら忘れられたような少女アンナ。アンナは「革命をして生きたい」と思っている。兄たちはファシズム打倒の行動へ。一九四〇年、イタリアが参戦、兄は意志を貫き、アンナは16歳で身籠もった。弟はパルチザンとなり……
長く続く、英雄のいない、革命と戦争の日々。
名もなき小さな人びとの生と死、モラルと行動を描く叙事詩

個性的で共感しにくい登場人物に、息継ぎも許さないような文章に苦労しながら読んだ。

弁護士の仕事を辞め暴露本的な回顧録を書く反ファシズム派の父。暴君のような父に押さえつけられている子どもたち。そして祖母の代から家にいる乳母。
前半は誰が主人公ということもなく、弁護士一家とその隣に住む裕福な石鹸工場主一家の様子が描かれる。
暴君のような父が亡くなると、長男イッポリートは隣に住む裕福な一家の長男であるエマヌエーレ、長女コンテェッティーナを追いかけ回していた男ダニーロとともに、「革命」に身を投じそうになるのだが…。

後半は弁護士一家の次女アンナが主人公。アンナは家族に忘れられているような影の薄い少女 なのだが、16歳で妊娠してしまう。家族誰にも打ち明けられず途方にくれているアンナを救ったのは亡き父の友人チェンツォ・レーナ。
イタリアが参戦しドイツ軍が村に入ってきて人々はいやがおうにも戦争に巻き込まれていく。

意志がないようにひたすら受身のアンナや身勝手で攻撃的な他の登場人物たちにイライラさせられ通しだったのだが、名も無き人たちの人生とはこういうものなのかもしれない。
「きみは葉っぱの上の怠惰で悲しい虫だ」とチェンツォ・レーナに言われていたアンナが女中を助けるシーンは感動的だ。
「戦争はすべての人間の敵だ」という言葉に作者の想いがこめられているように思う。