りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

太陽のパスタ、豆のスープ

太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)

太陽のパスタ、豆のスープ (集英社文庫)

★★★★

結婚式直前に突然婚約を解消されてしまった明日羽。失意のどん底にいる彼女に、叔母のロッカさんが提案したのは“ドリフターズ(やりたいこと)・リスト”の作成だった。自分はこれまで悔いなく過ごしてきたか。相手の意見やその場の空気に流されていなかっただろうか。自分の心を見つめ直すことで明日羽は少しずつ成長してゆく。自らの気持ちに正直に生きたいと願う全ての人々におくる感動の物語。

結婚式直前に婚約を解消されてしまった明日羽。
そんな明日母に叔母のロッカさんが「ドリフターズリスト」を作るように言う。何をやりたいか、どうなりたいかを書くのが「ドリフターズリスト」。
最初は嫌々書いていた明日羽だったが、いつしかリストが心の支えになり、実行したらリストを消したり、また何か思いつくとリストに追加したり、後から見直して「いやこれは違う」と消したり…。
それまでの自分を振り返り見つめ直し一歩を踏み出す。どこにでもいるような女性の成長の物語。

辛いときや悲しいときでもお腹は空くし、何かを食べて「おいしい」と思うと、あ、まだ大丈夫だ、と思う。
この小説の中でそれほど存在感のない母の言う一言。
「毎日のごはんがあなたを救う」
ほんとにその通り。
悲しみのどん底にいるときのわが子に親としてかけてあげたい言葉だし、自分自身にもそう言い聞かせたい。

娘がアイスをほしがれば、安いアイスを大量に買ってくる父。
娘が家を出ていくと、娘の部屋を自分の部屋として作り直し、そのことにちょっと罪悪感を感じている母。
フリーターをやりながら密かな夢を抱いている兄。
存在感はないけれど、その存在感の薄さが逆にとてもいい。家族は存在感が薄いぐらいがちょうどいいのだ、きっと。
今まで恵まれすぎていてそのことにすら気づいてなかった明日羽が、今まで馬鹿にしていた兄の優しさや母の内面に気づくところがとてもいい。

特別なことが書かれているわけではないし、小説としては素直すぎるように思えて少し物足りないけれど、でもとても大切なことが書いてある。
弱っているときに読んだらきっととても力になってくれる気がする。
自分を見失った時に読み返したい一冊。