りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭正月二之席夜の部

1/16(金)、末廣亭正月二之席夜の部に行ってきた。 これで二回目。 昼の部もトリが市馬師匠だから本当は昼から行って居続けたいけど、仕事帰りにひょいっと行けるのもうれしい。

正雀「鼓ヶ丘」
・権太楼「代書屋」
・小円歌 三味線漫談
・小満ん「馬のす」
・金馬「権兵衛狸」
〜仲入〜
・ひびきわたる キセル漫談
・小袁治「芋俵」
・一朝「湯屋番」
・さん喬「初天神
・正楽 紙切り
小三治「千早ふる」

小満ん師匠「馬のす」
小満ん師匠、嬉しいー!
仲の悪い奥様同士の会話。
「あらぁ奥様どこへ行ってらしたの?」
「あたくし、美容院に行ってまいりましたのよ」
「あら、じゃぁ今日は美容院おやすみでしたのね。」
ああっ素敵。もうこれだけでおかしい。言い方がすごく奥様っぽく誇張しているわけじゃないんだけど、でも奥様っぽくてちょっと毒があっておかしい。
この日のお客さんは初めて寄席に来た人が結構いたのか、小噺にも聞き入って素直に笑うのでなんともいえずいい雰囲気。
そんな小噺をいくつかやって「馬のす」へ。

好きだわー小満ん師匠の「馬のす」。
最初からこの男が酒を飲みたいだけなんだろうなっていう雰囲気があるんだよな。
そして枝豆を食べながら酒を飲みながら無駄話をするんだけど、これがなんとも洒脱でいつまでも聞いていたくなる。
さらっと出てきてさらっとやって、にこっと笑ってすっと帰る。素敵。

金馬師匠「権兵衛狸」
いろんな噺をきかせてくれる金馬師匠。
自分の親からはよく狐や狸にバカされたなんてことを聞かされたもんです。なんて言われると、ああ、そうだったんだろうなぁ、と思う。
これはごく親しい狸に聞いた話なんですが、なんて言われると、へぇ金馬師匠には親しい狸がいるんだ、と信じそうになる。

トントン。「ごんべぇー」。トントン。「ごんべぇー」。
おじいちゃんの家でおせんべいを食べながら昔話を聞かせてもらっているような幸せ。

小袁治師匠「芋俵」
私、一度泥棒に間違えられたことがあるんです、と小袁治師匠。
鈴本演芸場の近くで若い女の人が置き引きにあって「泥棒ー」と叫んだ。若い女性には敏感に反応してしまうたちなので、よし!と追いかけて泥棒を捕まえた。
警察に電話をするとパトカーがやってきたんだけど、調書をとるので一緒に警察に来てください、という。
「え?俺も行くの?」「ええ、おねがいします。」
ま、暇だからいいかと思ってパトカーに乗った。1台目には犯人、2台目には小袁治師匠が乗って行ったんだけど、乗るときに警察官同士が話しているのが聞こえた。「どっちが犯人?」
あとで見たら、泥棒より自分の方が人相が悪かった。
いやぁ、おかしい。小袁治師匠はまくらも楽しい。

「芋俵」、結構刈り込んだバージョンだったけど、俵に手を突っ込むさだきちがかわいらしく、一緒に付いてくる女中もお姉さんぽくて、じんわり楽しい。

一朝師匠「湯屋番」
ずっと聞きたいと思っていた一朝師匠の「湯屋番」を末廣亭で聞ける幸せよ。
いやもうとにかく楽しい。番台の上で妄想する若旦那のはしゃぎっぷりが尋常じゃなくて大爆笑。
そうかーこんなに面白くやるんだ!とちょっとびっくりするくらい。
めちゃくちゃ楽しい。最高。

さん喬師匠「初天神
さん喬師匠の金坊がまたさん喬師匠っぽくていいわー。ちょっと目を細めて下から見上げながらこまっしゃくれたことを言うのがたまらない。

正楽先生 紙切り
まだちょっと時間があるからもう一枚といったら、「小三治!」とお客さん。
だまっていきなり切り始めた正楽先生。え?まさか怒っちゃった?と思ったら「喋ってる余裕はないです」で大笑い。
三味線で「二上りかっこ」が始まると、楽屋からどっと笑い声。
次に上がる小三治師匠がちょっとびっくりしたのかな、なんて思ってニヤニヤ。
こんなことも楽しい。
正楽先生、最初に「羊が丘」と言われて切っている時に「羊が丘…羊がいっぱい…いますけどね、今日は代表して一頭だけ…。…寂しく一頭…」。これにも笑った。

小三治師匠「千早ふる」
出てきてお茶を飲んでバイクの話。
初めてバイクに乗ったは41歳になったとき。今思えば危ない乗り方をしていたし一歩間違ったら死んでいたかもしれない。
乗り始めたとき、噺家の先輩はほとんど何も言われなかったけど、色物の先輩の中には「そんな危ないものに乗っちゃいけない。お前さんはこれから落語界を背負って立つんだから、大事にしなくちゃいけない」と言ってくれた人もいた。
でも言われたときは「バイクで死ねれば本望だ」なんて生意気を言っていた。
今思えば死んじゃいけなかった。死ななくてよかった。75になってようやくそんなことに気がついた。
それから崖から落ちる伯楽師匠の話。見た目気障なあの師匠が若い頃にはそんなおっちょこちょいを…と思うと笑ってしまう。

長めのまくらから「千早ふる」。
最初腰が引けてた先生がだんだん興が乗ってきて話をするのがおかしい。
それを聞く八っつぁんが「ああ、なるほどね」「え?それはおかしくないですか?」といちいち反応するのが見ていて楽しくてしょうがない。

「人間、なろうと思えばなんでもなれる。中でも乞食が一番なりいい」
何度聞いても笑ってしまうこのフレーズ。
放送禁止用語なんて関係ない落語の世界が大好きだ。