りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小満ん在庫棚卸し

12/6(土)、四谷荒木町橘家で行われた小満ん在庫棚卸しに行ってきた。
・小満ん「備前徳利」
・小満ん「煙草の火」
〜仲入〜
・小満ん「陸奥間違い」

備前徳利」
備前焼きについてのあれこれ。大事にしまいこんでいる備前徳利に酒をいれると2時間ほどで酒を吸った徳利がつやつやといい色になっていくって面白いなぁ。
また昔は医者も今のように杓子定規じゃなかったから、本人が酒を飲みたがれば少しだけならいいよと飲ませてあげていたというのも面白い。夏場に亡くなって焼くまでに2日あったのに遺体が臭わなかった。なぜなら中からアルコールで消毒されてたから。っていうのがほんとのようなうそのような話で楽しい。
このまくらはもしかして「備前徳利」?とワクワクしていたらほんとにそうだった。
小三治師匠のCDでしか聞いたことがなかったので、うれしい!

備前の池田公のもとへ諸国の大名が集まったとき、中にひとり大変酒飲みの大名がいて、せっかくだから今宵は酒の強い者と飲み比べがしてみたいと言い出す。
家来の中で酒の強いものはいないかと探してみたが見当たらず徐々に位を落としていったら、お台所役の清左衛門という男がたいそう酒が強いことがわかった。
清左衛門に裃を付けさせて大名の相手をさせたところ、夜通し飲んでも乱れることもなくたいそういい酒だったと大名は大喜び。
清左衛門のおかげで面目を保てたと池田公は喜び、清左衛門に三百石を与える。
酒のおかげで出世した清左衛門はそれからというもの浴びるように酒を飲み体を壊してしまう。
もう命も尽きようというとき、息子の清三郎を呼び、最後に好きなだけ酒を飲みたいと言う。そして自分は酒のおかげで出世した、殿におねがい申して備前徳利に自分の姿を焼き付けてほしい、と言い残し亡くなる。
清三郎が殿にこのことを話すとわかったと言って、清左衛門の姿を焼き付けた備前徳利を作ってくれた。

父親に似て酒飲みの清三郎は花魁に入れ込んで吉原に居残り続け仕事もそっちのけ。父の代からの家来である権兵衛が迎えに来ても、権兵衛が酒好きであることを利用して逆に飲ませて酔っ払わせ…とまるで改めようとしない。
そんなある日、清三郎の枕元に父清左衛門が立ち、吉原通いはやめてくれと戒めるようになる。何日か続いてこれはさすがに自分が間違っていたと気づいた清三郎は父に吉原通いをやめると告げると、喜んだ清左衛門は「二人で飲もう」と言う。
それから毎晩親子で酒を酌み交わすようになるのだが…。

酒のおかげで出世して酒のおかげで命を落とす清左衛門は今の価値観で言えばダメ人間だけれど、落語の中では幸せな男として描かれている。
一方、吉原通いの息子の方は落語の世界でもダメ人間。権兵衛が迎えに来ていかにも反省したかのように見せかけるけれど実はやめる気は毛頭ない。
ここらへんの線引きがなんとも面白い。
そして心配した父が夢枕に立って毎晩酒を飲むようになるというのも面白いし、なんといってもこのサゲがたまらない。
日本人って昔はこういうユーモアがあったのになぁ…。

「煙草の火」
柳橋の万八という小料理屋の前に籠が止まり中から粋な身なりをした男が出てくる。
万八の若い衆喜助がこれは上客であると瞬時に判断して声をかけると、じゃあお前に頼みごとを申し付けてもいいかと男。
なんなりとと言うとそれでは2両立て替えてくれと言って、渡された2両はかごやにやってしまう。 店の中に入ってからも飲み物や食べ物はふんだんに注文するけれど自分には構わないでくれと言い、芸者や鳴り物を次々呼び、10両立て替えてくれ、20両立て替えてくれ、と喜助に頼む。
最初は快く金を出していた帳場も徐々に額が上がるごとに難色を示すようになり、50両と言ったところで「もうないと言って断れ」という。
喜助がこれを男に告げると、途中まで言ったところで「わかったわかった。たいてい50両あたりでそう言うんだ、お前さんがたは」と言い、それなら最初に自分が預けた風呂敷を持ってきてくれと言う。
男が風呂敷を開けるとそこには…。

いやもうこれが楽しい楽しい。
この会がこれで最終回ということもあるのだろう。小満ん師匠が突然懐から手ぬぐいを取り出して、客席に向かって投げ出した時にはもう楽しくておかしくて顔がニコニコしてしまった。
こっちに投げてーと思ったけれど、後ろの方だったので届かず残念!
でもこういうことをさらりをやってくれる小満ん師匠ってほんとに素敵。
サゲもいかしていて素敵。好きだー。

仲入りになると、なんとジンを全員に振舞うというサービス。
いいジンが手に入ったのでね、と小満ん師匠がにっこり。うわー。
大変おいしゅうございました…。私もいつまでも生ビールをグビグビ飲んでないでこういうお酒を小粋に飲めるようになりたいもの…。

陸奥間違い」
これは何回か聞いたことがあったんだけど、間違いに気づいた小左衛門が切腹を覚悟して伊豆守に相談しに行き、伊豆守が機転をきかせて将軍に判断を仰ぐところで、涙がポロリ。なんだか泣けてしまった。
大好きだったこの会もこれで終わり。終わりと言ったらきっぱり終わりというところが小満ん師匠らしくてかっこいいけど、なんだか寂しい。
小満ん師匠は素敵だし、会を運営する方たちの心遣いも伝わってきてとてもいい会だったなぁ。