りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

らくご街道 雲助五拾三次 ー騙りー

12/1(月)、日本橋公会堂で行われた「らくご街道 雲助五拾三次 ー騙りー」に行ってきた。

・はまぐり「道灌」
・雲助「刻そば(時そば)」
・雲助「姫騙り」
〜仲入り〜
・雲助「居残り佐平次

はまぐりさん「道灌」
白酒師匠のお弟子さんのはまぐりさん。白酒師匠と違ってすっきりした体型に顔立ち。
初高座を白酒師匠の独演会で見ているんだけど、あの時よりぐっと面白くなって噺家さんらしくなっている。

雲助師匠「刻そば」
今上がりましたのは白酒の弟子のはまぐり。私にとっては孫弟子で、あちらから見れば私は大師匠、と言って胸を張る雲助師匠。
この間出た駒七の「道灌」にはまだまだ及びませんが、なかなか筋がいいんじゃないかと思っています。どうかみなさんご贔屓を願っておきます。
こういう時に必ず褒めてバックアップをしようとする雲助師匠にぐっとくる…。

浅草演芸ホールで行われた鹿芝居のこと。
髪結い新三をやったんだけど、雲助師匠は主役の新三役。なるたけセリフの少ない役で楽をしようと思っていたけどそうはいかなくなっちゃった。
出ずっぱりだしセリフは多いし芝居だから落語より声を張らなくちゃいけなくて大変。
特に長い口上のシーンは練習やリハの時から一度もうまくいったことがない。詰まったり間違えたりで不安だらけ。仕方なくプロンプターを頼んで当日を迎えたのだが、本番ではどうにか言いよどむこともなくできて一安心。あとは大家との言い合いのシーンがあるけど、あそこは大家から言われたことに返せばいいから気が楽だ。
と思っていたら大家役の小燕枝師匠のセリフが飛んでしまった。こう言われてこう返すという考えしかなかったので相手がセリフを言ってくれないと自分もセリフが出てこない。
プロンプターも大家のセリフまでは追っていなくてどうにも芝居が進まなくなってしまって、そういえばこんなセリフじゃなかったかと助太刀してみたけれど、それもはねつけられてしまってさて困った。もうしっちゃかめっちゃかになっちゃった。
それでもせっかくあれだけ一生懸命覚えたのに1回きりはなにかもったいない。あれをどうにか落語でできないかと今考えているところ、と。

雲助師匠は寄席ではほとんど自分の話をされないからこういうまくらはほんとにうれしい。
鹿芝居も見てみたかったなぁ。
お金がかかるし手間もかかるからそうしょっちゅうはできないらしい。

今回のテーマは「騙り」。「騙し」じゃなくて「騙り」なのでお間違えなく。
そう言いながら一席目は「刻そば」。
雲助師匠の時そばは初めてだ〜。でも語りだしたところを聞いて気がついた。これ、白酒師匠がやっていたのと同じ時そばだ!
最初の蕎麦屋に景気を聞くと「世間では景気が悪いといいますけれど、私の方はおかげさまで常連さんが来てくださるので景気はいいです」。
どうやら古今亭と柳家で違うらしい。
雲助師匠の「時そば」は最初の男がぺらぺらぺらぺら調子がいいけど、騙してやるぞというよりは機嫌がよくて調子がよくてちょっといたずらをしたという感じ。
真似をする二人目はことごとくなにを言っても逆になってしまうのだがとりわけおかしかったのがなかなかそばができなくて待っている時に、着物の袖をぱたりぱたりと震わせるところ。意味のないしぐさなんだけどやけにおかしくて大爆笑。こういうセンスがたまらない。

雲助師匠「姫騙り」
自分は年の瀬は好きじゃない。
忙しいのと人の出が多いのが苦手。多分自分の前世はポリネシアンだったんじゃないか。南の方でぼーっとのんびりしているのがしょうに合ってる。
そして年末の浅草の売り声のまくらから「「姫騙り」。

初めて聞く噺。
年末の浅草の雑踏に現れたお姫様と使いの男。人ごみで姫が癪を起こし男が医者をさがすが見つからない。
路地を入ったあたりにあった医者。これが本業よりも金貸しで儲けているような医者ではあったのだが、そこに助けを求める二人。
医者が姫を連れて別室へ行くと苦しいと胸を抑えた姫が医者の手を自分の胸のあたりへもっていく。 改めて見てみるとものすごい美女で髪のいい香りがしてくらっときた医者が思わず女の胸に手をいれたとたん、女は悲鳴をあげその声に家来が慌てて入ってくる。
この医者が私に不埒なことをしたと言う姫に、姫様にそんなことをするとはなんという不届きなやつ。切り捨てる!と家来。
どうか命だけは助けてくれと言うと、それならば金をよこせ、と言う。
なんとこの二人、姫と家来ではなく、最初から騙すつもりで芝居をしていたのである。

悪党の噺なのだが、医者が思わず胸をさわって「いい乳だった」というのがなんだかバカバカしくおかしくて、さらにサゲで最初の年末の浅草の雑踏が蘇ってくるのがいかにも落語らしくて楽しい。

雲助師匠「居残り佐平次
これ、佐平次をあまりにもワルでやられてしまうとなんか後味が悪くなってしまうんだけど、雲助師匠の佐平次はワルだけどそれを楽しんでいるような洒落っけがあって、見ていて楽しい。
醤油がなくて不機嫌になるお客のところへ入って行って、パーパーお世辞を言って湯呑で酒を飲み刺身を食べる佐平次。そのお世辞に「うまいこと言いやがって」と言いながら、気分が良くなって祝儀までやってしまう客がとてもリアルで素敵。
もう帰ったらどうだいとすすめる旦那にあれこれ言って金や着物を頂戴するのも、また自分が居残りを稼業にしている者だと名乗るのも、ギリギリ後味が悪くならないところで止めていて、そこがよかった。