りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

秋のきゅりあん寄席 柳家小三治独演会

11/12(水)、きゅりあん大ホールで行われた「秋のきゅりあん寄席 柳家小三治独演会」に行ってきた。

柳家三之助「堀の内」
柳家小三治「付き馬」
〜仲入り〜
柳家小三治「長短」

三之助師匠「堀の内」
このホールの近所に住んでいるという三之助師匠。
調布のときの禽太夫師匠、練馬のときの福治師匠もそうおっしゃていたところを見ると、家が近くの弟子を開口一番にしているっぽいのがちょっとおかしい。
三之助師匠の「堀の内」は前に寄席でも見ているから、テッパンネタなんだろうな。ほどよく客席をあたためていた。

小三治師匠「付き馬」
ようこそおいでいただきました。こんなに広いホールにこんなに大勢集まってくださって。いったいなんでこんなに大勢集まるんでしょう。なにを期待しているんでしょう。
そう言ったあとに、江戸の大火や吉原、棺桶のことをなぜ「早桶」と呼んでいたか、など噺につながるまくらを長々と。
明らかに仕込みのまくらの途中で、思い出したように自分のおじいさんが亡くなった時、樽のような棺桶に座らせて入れて、頭がちょっと出ていたのを無理矢理ぎゅうって蓋をして土葬した、という話も。お金持ちならその人になった大きさの棺桶を特注するんだろうけどそんな金もないから無理矢理押し込んで、死んでからも随分な目にあわせたもんだ、と笑わせる。
そんなまくらから「付き馬」。小三治師匠の「付き馬」は初めて!

一文無しで散々遊んだあとに若い衆を言いくるめて吉原の外に出る男。お腹空かない?しつこいものは嫌だなぁ。湯豆腐なんていいね。じゃ軽くいっぱいやろう。さんざん飲み食いして会計になると「じゃ出しておいて」。
「え?」と驚く若い衆の顔がおかしい。
つり銭を自分の懐に入れて、そのあともパーパーパーパーあれやろうこれやろう言うのだが、なにに誘われても乗ってこない若い衆。いちいち「え?やらないの?」とがっかりするくせに、なにか見るたびにきゃーきゃー喜ぶ客がなんともいえずかわいい。
早桶屋の「おじさん」はいかにも職人らしく無口で不機嫌で、それが怪しみながらも若い衆に同情して話をするのだが、この会話がずれているけど妙につながっているのがまたおかしい。
久しぶりにやる噺ということもあっただろうが、すごく力の入ったチャレンジングな高座でなんかびっくりもしたし、貴重な高座を見られたなぁ…と感動。

小三治師匠「長短」 高座にあがるなり「もう会は終わったようなものです」。やっぱりさっきの高座はすごい力が入っていたんだな。それでも自分で「さっきのはひどい落語だね」と何回か。
最近見たニュースで驚いたのがアメリカで300キロの人が亡くなってその人を焼いたら脂肪の量が多すぎて焼き場の方が焼けちゃったという話をしたら、ものすごく客席が受けたんだけど、「今日はこの焼き場の話が一番受けたなぁ。ひどいはなしだなぁ」とぼやくと客席から大拍手。
それに小三治師匠が「パチパチじゃないですよ!!」。
ああ、おかしい…。

それから、昨夜も錦織選手の試合を夢中になって見ていたという話。
解説の松岡のことも以前は吉本の芸人かなんかかと思っていたけどちゃんと選手だったんですね。言ってることが結構的確だし見直した、と。
そしてとにかく錦織選手が気に入っちゃった、と。昨日の試合もほらあの選手、あれが得意な、ほらあれ。単語が出てこなくて、ボールを投げてサーブをするポーズ!
ひらりと舞う姿は牛若丸のようで相手の選手が「こんのやろう」と悔しそうな表情をしていて、ざまぁみやがれ!と思った、とか気に入ったから贔屓にするよ!と言いながら、でももらうギャラが全然ちがうからしてやれることはないんだけど、とか。
いかにも小三治師匠らしく好き勝手なことを言っているのが楽しい。

それから同期会に行ったという話。
行くと嫌になっちゃう。だってみんなじじいとばばあばっかりなんだもん。
自分で自分がじじいだと思ってないんだけど、この間久しぶりに老眼鏡をかけて鏡を見たら、何年かぶりにばしっとピントがあって見えて、いやもうそこにはひどいじじいが映っていて、ショックだった。こんなにひどい顔になっちゃってたのか、と。
そんな話から友達っていうのは不思議なもので、気性が違っても気が合って長く付き合ったりする、と言って「長短」。
小三治師匠の「長短」を生で見るのも初めて、うれしい〜!

気が短くてべらんめぇな短七と、気が長くてなにをするにものんびりな長さん。
長さんがことさらゆーーーっくりではないんだけど、表情がすーっと穏やかになってにこーっと笑ったときのかわいさよ…。思わず「かわいいー」と心のなかでおバカな叫びをあげてしまう。
ゆっくりな長さんに短七が「じれってぇなぁ」ってじれるのがまたかわいくて、終始笑い通し。楽しかった!