鼻持ちならないガウチョ (ボラーニョ・コレクション)
- 作者: ロベルトボラーニョ,久野量一
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2014/03/26
- メディア: 単行本
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大長篇『2666』とともに、ボラーニョ最後の日々に書かれた短篇および講演原稿を収録した、もうひとつの遺作。
面白かった。
ボラーニョ作品にはいつも自分が見ないようにしている裂け目にずるずる引っ張っていくような磁力を感じていて読んでいると鬱になってくるんだけど、この作品集にはユーモアがあってそこが好み。
絶望を達観でくるんだような作品が多い。
「鼻持ちならないガウチョ」
この場合、鼻持ちならないガウチョは主人公の方なのだろうな。
優秀で信頼の厚い弁護士だった主人公がアルゼンチンの経済破綻を機に田舎に移住する。ボロボロの家を地元のガウチョを雇って修理したり、馬を買って乗り回したり、喧嘩をふっかけてみたり…。時代錯誤なその行動はドンキホーテ的でもあるのだが、年齢的な衰えも相まってどことなく物悲しい。
「鼠警察」
前半は「鼠」というのは比喩だと思って読んでいたのだが、読み進めるうちに本当に鼠の社会を描いていると分かり驚く。
悪が生まれ増殖していくところを生々しく描いていて、鼠の話なのに恐ろしく人間的。
「二つのカトリック物語」
1つ目の物語で啓示にも思えた出会いが、2つ目の物語を読むと見事に裏切られる。
絶望は深い。
「文学+病気=病気」
ボラーニョ自身が病で若くして亡くなったことを思うと、「文学+病気=病気」って…凄まじい境地。