りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

さして重要でない一日

さして重要でない一日 (講談社文庫)

さして重要でない一日 (講談社文庫)

さして重要でない一日 (講談社文芸文庫)

さして重要でない一日 (講談社文芸文庫)

★★★★★

「社内局」経由で配付した会議用資料を回収することになったかれ。ところが「社内局」とはいったい何なのか、どこにあるのか、だれも知らない。たった1人、会社という迷宮をさまよう羽目におちいった困惑の1日――。1989年度の野間文芸新人賞受賞の表題作と芥川賞候補作「パパの伝説」を収録。

わー、なんか分からないけど好き好き。
好きだわぁ、この作家さん。この人のことを前に「きちんとしたたたずまいで笑顔一つ見せずにまじめな顔で変なことを言うひと、というイメージ」と書いているんだけど、確かにその印象はこの作品を読んだあとも変わらないな。

「さして重要でない一日」
自分にはまるで覚えがないのに、最近女子社員から評判が悪いと聞かされる主人公・佐藤。そう言われれば自分に対する女子社員たちの態度が剣があるように感じる。しかしなぜ?
そしてそんな状況の中、大切な資料のコピーに失敗して原本を探し回るはめに。もともと「社内局」経由で配布した資料だったのだが、「社内局」という組織が実は何でどこにあるのか誰も知らない。
普段は何の疑問も抱かずに仕事をしているのに、いきなり会社と迷宮をさまよう羽目に陥った佐藤。しかしこんな一日も全体としてみれば「さして重要でない一日」なのだ…。

会社の空気を非常にリアルに伝えている。
うちの会社は大企業じゃないし自社ビルでもないから知らない組織とかコピー機の墓場とかないけど、それでもこのカビ臭い感じはとてもリアルだ。
唐突に割り込んでくる人事部社員の告白が妙にリアルで異常で…しかしこれも飲んだ席の話としてスルーしてしまうのだが、面白くもあり不気味でもあり。

「パパの伝説」
脱力系の横溝正史のような、そうでもないような、じっとりとしていながら軽妙という独自な世界。
面白いなぁー。