りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

小三治一門会 入間市市民会館

4/29(火)、入間市市民会館で行われた小三治一門会に行ってきた。
小三治師匠は毎年わりと決まった会場で落語会をやっていて、このホールも昨年同じぐらいの時期に来ているので、「ああ、一年たったのか…」とちょっと感慨深い。

・禽太夫「たらちね」
小三治「宿屋の富」
〜仲入〜
小三治初天神

禽太夫師匠「たらちね」
この間奥さんと外を歩いていると三陸のわかめを売っていた。あら、と思って近づいてみると、お店の人が「わかめは髪の毛にもいいですよ」。
「髪の毛ね」と興味を示すと奥さんが「あなたならわかめ乗っけた方が早いわよ」。
夫婦も長年連れ添っていると扱いがぞんざいになりますね、というまくらからの「たらちね」。
禽太夫師匠ってなんかひたすら明るくてそこが好き。楽しい。

小三治師匠「宿屋の富」
旭日小綬章受章のニュースが飛び込んできた日だったので、そういう掛け声やいつものように「落語の神様」の掛け声が。
こういう掛け声、小三治師匠うれしそうじゃないよなぁと思っていると「最近本当によく声をかけていただくんです」と小三治師匠。
「この間なんか大統領って言われてねぇ。そう言われても大統領じゃないですしねぇ。みなさんよっぽど体力が有り余っているんですかねぇ。まぁ…お元気で」。
ぶわはははは。やっぱり嫌がってる。

馬喰町というところがありますね、と。
人形町にあった末廣亭や馬喰町の光景をのんびりと。お、馬?馬の田楽?と思っていると「あー、これは落語には関係ないんですけど。ただ話したかっただけで。」と言ったあと、ははははは!と地声で笑う。
笑ったあとに「ここにこうして座って話すのは楽しいですなぁ」と。「こうして一人だけ高いところに座って好き勝手話して商売になってるんですから。こんな楽なことはありませんね。休みの日に女房とテレビの前に座っていても二人でむっつり黙り込んでなにも楽しくないんですから。それよりここにいるほうがよっぽど楽しい」と言ってまたあはははは!と笑う。
「よくね、こうやって落語を話すのは大変でしょう?なんて聞かれて、そうですねぇ、血の滲むような想いをしてやってます、なんて答えたりしますけどね。あれは嘘です。ほんとはね…とっても楽なんですよ。」

旭日小綬章については一言も話さなかったけど、これが小三治師匠の答えなのかな、と思って笑ってしまった。
もちろんもらって嬉しくないわけはないと思うけど、「芸の道に精進し」とか言われると「別にそんなでもないよ」、名人と言われると「いや名人じゃないよ」「そんなにうまくねぇんだよ」「俺の落語は面白くないよ」って言いたくなるんだろうな。

田舎から出てきた風の身なりの汚い男が泊まっている。
あの客怪しいよ、と女房。様子を見に行って来いという女房に「いやだよ」という亭主。宿のことはお前に任せているんだからお前が行って来いと言うと、女のあたしが行ったって脅されて終わってしまう、あたしゃ女なんだからあんたが行っておくれよ、と。
嫌だなぁと言いながら亭主がお客の様子を見に行って遠まわしになんの商売をしているのか、お金を持っているかさぐりを入れると「ああ、おめぇ、俺の身なりがきたねぇからそれで馬鹿にして!」とむっとする客。
実は自分はものすごい金持ちで金なんか余って余ってしょうがないんだ、という。

ここまで聞いてようやく「宿屋の富」だ!と気がついた。
小三治師匠のは、どれだけ金持ちかというのをこれでもかこれでもか!と並べ立てたりはしないのだけれど、田舎者が気鬱そうにぞんざいに語っていると、もしかして本当かもしれない?と思わせる。
宿屋の亭主がいなくなって買わされた富札を見つめながら「あーあ。こんなもんを買わされてしまった。これ富札だろ。おら知ってるだ。こんなもんは当たらないんだ」「この一分だって村の者に頼まれて預かってきたのに」とつぶやく。
見ているとなんとも気の毒になってくる。
それだけに富くじの発表のところがおかしいのと、その反応に納得がいくのと。
宿屋の亭主も女房も「あたあたあたあたあた」いうのがおかしいのと。

まさか「宿屋の富」を聞けるとは。感動…。
たっぷりの「宿屋の富」で、小三治師匠が舞台を下がっていくときもおおきな拍手が鳴り止まず、師匠がちょっと立ち止まって肩を少しすくめたのが印象的だった。

小三治師匠「初天神
「宿屋の富」がたっぷりで時間をとったからか、座り切る前に「おっかあ、羽織を出してくれ」と「初天神」へ。
テンポも変わって陽気になって前半との対比が素晴らしい。
もう何回も見ているけど、だんごの蜜を舐めきってしまったり凧揚げに夢中になって我を忘れるおとうさんに楽しく笑わせてもらい満足満足。