りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

だから荒野

だから荒野

だから荒野

★★★★

46歳の誕生日。身勝手な夫や息子たちと決別し、主婦・朋美は1200キロの旅路へ―「家族」という荒野を生きる孤独と希望を描き切った桐野文学の最高峰!

ええ?これほんとに桐野夏生井上荒野じゃなくて?あるいは山本文緒乃南アサか?というくらいライトな筆致に驚く。
登場人物はいかにも桐野さんらしく、嫌なやつばかり。
こんな無神経でくだらない夫ならいらねぇー。息子たちもとっとと家を出ていきやがれー。出て行かないならあたしが出て行ってやるー!という気持ちにもなるが、主人公の朋美もまた共感できるようなキャラクターではなく、いいやもうこの女だったらどういう結末が待っていてもかわいそうとも思わないし!と、妙なテンションで読み進める。

まるで共感できない登場人物たちだけれど、読んでいるうちに自分にもこういうところあるかも…子どもってこういうところあるよなと思わせる。
そう感じさせる表現があるのだろうがそこがどこかわからないのがこの人の上手さなのかも。

軽く楽にかいた作品のようにも見えるけど、人生をやり直すならどの道を選ぶ?という普遍的なテーマに答えを出してもいて案外深い。
傑作!ではないだろうけど、読みやすく面白かった。