りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

地図と領土

地図と領土 (単行本)

地図と領土 (単行本)

★★★★

驚愕の“惨劇”の目くるめく謎―鬼才ウエルベック最大の衝撃作。孤独な天才芸術家ジェドは、一種獰猛な世捨て人の作家ウエルベックに仄かな友情を抱くが、驚愕の事件が二人に襲いかかる。謎をめぐって絢爛たるイメージが万華鏡のように炸裂する傑作。フランスで50万部を超えたゴンクール賞受賞作。

以前読んだ「素粒子」「プラットフォーム」と印象が違うので驚く。
建築家の父は経済的な理由から芸術的な建築の夢を断念せざるを得ず、そのかわり建築会社の社長としての成功をおさめる 片や息子であるジェドは経済的な後ろ楯や出会った人たちの後押しや運のよさもあり、芸術の道で商業的な成功をおさめる。
しかしそこに高揚感はなく商業的な成功も彼になにかをもたらしたように見えない。

仕事人間の父と同様ジェドも他人と親密な関係を築くことができない。
唯一心を許した相手である恋人のオルガとも、彼女が仕事の都合でフランスを離れることになったとき、引き止めることも一緒にロシアについていくこともしない。悲しみはするのだがそれを受け止めて殻に閉じこもる。しかしこれが彼の創作の面からみればプラスに働いている。
芸術の道を歩く者は孤独であることが必要条件である、と作者は考えているのだろうか。

ウエルベック自身も孤独な姿で登場したり悲惨な現場を見てきた刑事が家庭には恵まれていたりするところにウエルベックの皮肉なユーモアを感じる。
全体的には私には理解できない部分も多かったのだが、寒々として物語の中で、父と息子が明かした一晩の光景が印象的だ。
また父の死後訪れたスイスで普段感情をおさえているジェドがとある人物を殴るシーンも忘れられない。