りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

おはなしして子ちゃん

おはなしして子ちゃん

おはなしして子ちゃん

★★★★★

小学校の理科準備室に閉じ込められた私。ホルマリン漬けの瓶に入った“あの子”が、一晩中お話をせがんできて(「おはなしして子ちゃん」)。「私の近くにいるとみんなろくな目に遭わない」黒髪の転校生トランジの言葉を裏付けるように、学校で次々に殺人や事件が起きて…!?(「ピエタとトランジ」)。14歳の夏、高熱を出した美少女エイプリルは、後遺症で一日に一回嘘をつかなければ死んでしまう体になってしまって(「エイプリル・フール」)。キュートで不気味、残酷だけど愛しい、恐るべき才能が炸裂する10篇の「おはなし」。ポップ&ダークな小説集。

不思議というよりは不気味な話が多いのだが、神経に触るような嫌な感じがしないのが不思議。
女の子の残酷さや視野の狭さが際立つ物語が多いのだが、ガーリーな部分やファンタジー風味なところもあって、怖いけど楽しい。

「おはなしして子ちゃん」
手をつないで一緒に帰るぐらいの仲なのに、ゲームのようにスポーツのように執拗にいじめをくりかえす少女。彼女の瞳は意外にも澄んでいるが底無しに暗く空虚なのだろうなぁと思う。 理科室、ホルマリン漬け、子猿。少女たちが惹かれる恐怖がそこにある。
しゃがんでいた猿が立ち上がろうと膝を伸ばすシーンが目に焼き付いている。

ピエタとトランジ」
ばったばったと人が死んでいくのだが、軽くてポップな物語。
お互いに物凄く依存しあいながらも、「死ね」と口に出していう少女たちが妙にリアルだ。

「ホームパーティはこれから」
なんかこれわかるなぁー。完璧にやろうと思っていたのにダサいジャージのままお客さんを迎えてしまい、さらにそんな自分がまるで透明人間になったみたいに誰も視線を注いでくれない、この感じ。
まさかこんなふうなはずがないと思いながら、SNSが「大事にされる自分」の拠り所になっているというのがありがちでこわい。