りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

桃月庵白酒・春風亭百栄二人会『まっぴらごめんねぇ』PART2

1/9(木)、深川江戸資料館で行われた「桃月庵白酒春風亭百栄二人会『まっぴらごめんねぇ』PART2」に行ってきた。 これが私の落語初め。
会社からこの会場に行ったのは初めてで、路線図を見た時に「乗り換え駅(森下)まで結構あるな」と思ってしまったのが悪かった。読んでる本に夢中になって気がついた時には5駅先の大島。乗り過ごすにもほどがあるよー、えーーーん。 結局15分ほど遅刻して、入った時は開口一番が終わって百栄師匠が高座に上がったとき。コートも脱がずにぜいぜい言いながら席に着いた。いやぁ、まいった。

・わん丈「やかん」
・百栄「やかん泥」
・白酒「井戸の茶碗
〜仲入り〜
・白酒「時そば
・百栄「どら吉佐衛門之丞勝家」

百栄師匠「やかん泥」
お正月ということで前座時代の想い出から。小さん師匠が存命の頃の柳家は早朝から一門が目白のお宅に集合していろいろなしきたりがあって大変だったらしい。
ほかの噺家も元旦は師匠の家にご挨拶に行くのが当たり前。なのだが、実は自分の師匠はそういうことをめんどくさがる人で。
入ったばかりのころに、「元旦は師匠のお宅にお邪魔させていただいてよろしいでしょうか」と師匠に聞いたら、「ええ?来るのぉ?いいよ。わざわざ来なくてー」と言われた。
何かにつけてそうだったので実は前座時代、師匠のお宅に毎日通うなんてこともしなかったし、寄席も毎日じゃなくて初日と終わりと真ん中に一日ぐらい通えばよかった。
ほかの前座が「師匠の家に毎朝早く行くのが大変」とぼやきあっているので調子を合わせて「そうだよねぇ」なんて言っていたけど実はすごい楽をしていた。あの時代に嘘をつくことを覚えてしまった。

開口一番のわん丈さんが「やかん」をやったのでその流れを寄席っぽく組みながら「やかん泥」。
初めて聞いた噺だったんだけど、いやぁ百栄師匠の古典もいいよなぁ…。決してうまくはないのだけれど(失礼!)なんともゆるゆると落語らしい空気感があって大好きだ。
親分と一緒に「仕事(泥棒)」に行くだめな子分。静かにしてろよ!と親分に言われているのに、「ああっ!危ないっ!」「あーーなんだ、そんなところにいたんだ!!」と大声を出してしまう子分。親分が怒って頭をぽかりとやると「痛いーーー。うわーーーーーん」と泣き出してしまう。この弱い奴がキレて泣いている様子がおかしいのなんの。あまりの迫力に思わず「ごめん」と謝る親分がまたおかしい。
本人は「やかんつながりでやってみようとやってみたんですが…あんなことに…」と申し訳なさそうだったけど、面白かった!

白酒師匠「井戸の茶碗
寄席のお正月興行についてのまくら。
今は消防法が厳しくなっているので鈴本なんかは立ち見客をそれほど入れない。でも浅草は違う。入れるだけ入れちゃうから立ち見の列が3重ぐらいになっていて一番後ろになったらもう何も見えない。でもせっかく入ったんだからもう楽しむしかないっていうことでお客さんも笑い声が起きると「え?いまなんて?」「なんて言ったの?」とまわりに確認しつつ、「わからないけどいいや、笑っておけ」と笑っている。
そんな浅草演芸ホール、昔は今よりもっとたくさん入れて客席に入りきらないお客さんは楽屋に入れていた。高座は見えないけど楽屋は見えるのでむしろそっちのほうが面白いと言って、次の年に「今年も楽屋席ある?」と言ってくるお客もいた。
どこまでが本当でどこからが嘘かわからないのだけれど、にこにこ笑顔でぽんぽん毒舌を吐く白酒師匠、最高すぎる。 そしてブラックなまくらからなんと「井戸の茶碗」。

白酒師匠が「井戸の茶碗」ってなんか意外ー。と思ったのだが、これがまた正統派の「井戸の茶碗」なのだ。前に喬太郎師匠の「井戸の茶碗」を見たときは、正直清兵衛さんが裏の顔を見せたりしていたのだが、白酒師匠のはそういうのは一切なし。
ほかの噺家さんのと違うところは、きぬと高木佐久左衛門のなれそめが描かれているところ。きぬを嫁にもらってはもらえないかと言われた高木佐久左衛門が激しく動揺し「あーーーいやーーーあのーーーどうしようかのうーー」と側近に尋ねると自分で決めなはれというようなことをきっぱりと言われて、さらに動揺。追い打ちをかけるように「気に入ってたじゃないですか」と言われて焦るところが面白い。
「本格派」ぶりをたっぷりと見せつけた白酒師匠だった。

白酒師匠「時そば
白酒師匠の「時そば」はこれで二回目なのだが、いやぁ面白い。面白い人がやるとこんなに面白くなるのかと思う。 患ったそば屋が出てきただけでもう大爆笑。最初のそば屋とのやりとりがリズムがよくてトントンとうまく決まっているだけに、2つ目のそば屋とのやり取りのダメダメさが際立って面白い。すばらしい。

百栄師匠「どら吉佐衛門之丞勝家」
一席目で「2席目は新作やりますよ。新作なんですがなんていうか酷いっていうかなんていうか…。私の後に白酒師匠が2席やりますけどこちらはもうしっかりしたね、落語なんでね…。今、いや〜な予感がしている方は、白酒師匠が終わったところで帰っていただいてもいいかと…」と言っていた百栄師匠。
こういうことをグズグズ言っても百栄師匠だと全然嫌な感じがしないんだよなぁ。

新作のネタを考えるのが大変というまくらからいきなり登場したのがネコ型ロボット「どら吉佐衛門之丞勝家」。
ある意味「天使と悪魔」とも似た、苦悩する噺家の内面をえぐった作品(ぐわははは)。
ドラえもんに比べると劣化している道具の効能が面白い。