りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

夢幻諸島から

★★★★★

時間勾配によって生じる歪みが原因で、精緻な地図の作成が不可能なこの世界は、軍事的緊張状態にある諸国で構成されている「北大陸」と、その主戦場となっている「南大陸」、およびその間のミッドウェー海に点在する島々〈夢幻諸島〉から成っている。最凶最悪の昆虫スライムの発見譚、パントマイマー殺人事件、謎の天才画家の物語……。死と狂気に彩られた〈夢幻諸島〉の島々には、それぞれに美しくも儚い物語があった。語り/騙りの達人プリーストが年来のテーマとしてきた〈夢幻諸島〉ものの集大成的連作集。英国SF協会賞/ジョン・W・キャンベル記念賞受賞作。

わー、これはもうなんと言ったらいいのか。
とにかくプリーストの想像力の果てしなさに驚きおののく。この人の頭のなかはいったいどんな風になっているんだろう。

ミッドウェー海に点在する「ドリーム・アーキベラゴ(夢幻諸島)」のガイドブックという形式をとっている。
チェスター・カムストンという署名入の長い序文があって、そのあとAから順に島のガイドが続く。
淡々と島の地形や産業や歴史を綴った章もあれば、その島で起こった出来事や事件を語る物語風の章もある。
島をまたがって出てくる人物たちもいる。
最凶毒虫のスライム、謎の天才画家バーサースト、急進的社会理論家(ってなんだ?)カウラー、殺されたパントマイム師、そして作家カムストン。

謎が解明されたかと思うと、それを覆すような物語が出てきて、読めば読むほど混乱する。
しかしそれがまた楽しいのだ。プリーストの手の上で転がされる喜びよ。

こういう構成でありながら、散漫にならず、ミステリーとしても楽しめて、しかし無理矢理感もなく、最終的には確かにこれはガイドブックなのだな、と読者を納得させてしまう。
最初に読んだときには退屈に思えた序文までも、もう一度読み返してみると楽しい。

やっぱりプリーストは最高だ。