りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

一之輔の無茶ぶられ(その4)

7/10(水)、高円寺らくご@座で行われた「一之輔の無茶ぶられ(その4)」に行ってきた。 ゲストは喬太郎師匠と天どんさん。
実は無茶ぶられのその3はチケットをとっていたのだが、前の日に食あたりになって行けなくなってしまったといういわくつき。ようやく念願かなって行くことができてうれしい!

無茶ぶられとは、一之輔師匠が古典ネタのバージョンアップに励む落語会ということで。 まずは一之輔師匠がお題ネタを先輩師匠に事前提出。先輩ゲストがそのネタがよりよくなる案を一之輔に無茶ぶりし、その案を生かした一席を披露するというもの。

一之輔師匠が出したお題ネタが鰻の幇間」か「王子の狐」。
それに対して、天どんさんからの無茶ぶりが、
・「鰻の幇間」には、もっと身ぐるみはがされる、店の中がとにかく暑い、幇間が鰻
・「王子の狐」には、普通にやっちゃえ等。
喬太郎師匠からの無茶ぶりが「鰻の幇間」「王子の狐」両方に対して
・設定をフランス革命前夜
・くすぐりを入れずに噺の面白さだけで勝負しろ

これらの無茶ぶりの中で一之輔師匠が選んだのが「くすぐりなしで勝負!」。
これにしましたと言った瞬間、客席から「えええ?」とちょこっとだけ抗議の声が。
前回は「不動坊バラ園」というハチャメチャな噺だったということで、お客さんもそれぐらいの爆笑系を期待していた部分もあったのだろう。
正直私もこの会では新作チックな弾けた落語を期待していたので、ちょっと残念な気持ちもありつつも、面白いものが見られるぞー!というわくわく感もあり。

・ビフォートーク
・天どん「セミの声」
喬太郎「竹の水仙
〜お仲入り〜
・一之輔「鰻の幇間
・アフタートーク

・天どんさんの「セミの声」。面白かった!
新作だったらこれぐらいのことをやってほしい。
セミの声がうるさくていらっとくるのと、客の気持ち悪さが徐々に明らかになってくるのとが、たまらない。
天どんさんのめんどくさい感じも含めて好きかも。と思った。

喬太郎師匠の「竹の水仙」。
一之輔師匠への無茶ぶりを自分も男らしく引き受けて、くすぐりなしの「竹の水仙」。
くすぐりを入れずに噺の面白さだけで勝負できるようになりたいという喬太郎師匠の思いが伝わってくる。本当にこの人はど真面目な人だなぁと思う。
真面目すぎて空回りすることもあるけれど、そういうところがむき出しなところがこの人の魅力なんだよなぁ。だから好きなんだよなぁ。

真剣勝負の「竹の水仙」は、面白かったというよりは、気合が伝わってきて背筋がぴんとなった。
くすぐり入れまくってもくすぐりを全部省いても、どちらにしてもパワー落語であることに違いはない。喬太郎師匠の落語。

・一之輔師匠の「鰻の幇間」。
くすぐりなしってやりにくそう〜というのが最初の印象。
外に遊びに行きたくてしょうがない腕白坊主が「今日は体を動かしちゃいけません!」と両腕を縛られているようなかわいそうさ…(笑)。
それがやっているうちに徐々に調子が出てきて、「あれ?」「これでもいいの?」「これもNG?」とちょこっと心配しながらも、「まあいいや!」と開き直っていく様が、見ていてとても面白かった。

若いなー元気あるなー無限大だなー。そんな印象を受けた。

アフタートークがまたとてもよかった。
喬太郎師匠が「落語やってて自分なりの工夫って大切だしそれをしなくちゃいけないとも思うしうければうれしいんだけど、それをずっとやってると自分が何をやってるかわからなくなってくる。落語ってそれだけのものじゃないよな、無理しなくても面白さがにじみ出てくるようになりたいな、っていうのが自分の課題で。今の一之輔にそんなことを振らなくてもいいよなとも思ったけど、まー君は芯が太いから心配ないよな。」と。

一之輔師匠は「一人で稽古していて、これもだめ?これもくすぐり?ってわからなくなってきて。でもいろいろ考えるきっかけになってよかった」と。

そんな二人に「おれが入れない会話をしてる!」と割って入る天どんさん。
「おまえ(天どんのこと)めんどくせーな」
「うるせーな、お前(一之輔のこと)いつ死ぬんだよ」
「死なねーよ!死ぬとしてもお前にはいわねーよ!」

わはははは。
売れっ子という環境の中でもがく二人と、我関せずな天どんさん。まじめなムードを天どんさんがちょっと台無しにする感じがまた面白い。
せっかく見に来てくすぐりなしなんて!という人もいたかもしれないけど、めったに見られない面白いもんを見たなーと私は大満足な会だった。