車谷長吉の人生相談 人生の救い
- 作者: 車谷長吉
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/12/07
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 6回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
新聞連載時より話題沸騰!“最後の文士”にして“反時代的毒虫”たる著者が、老若男女からの投稿による身の上相談に答える。妻子ある教師の「教え子の女子高生が恋しい」、主婦の「義父母を看取るのが苦しい」…これら切実な問いに著者が突きつける回答とは。
朝日新聞の人生相談「悩みのるつぼ」で回答したものをまとめたもの。新聞掲載時からこの人の回答が一番楽しみだった。
おいおい、相談に答えてないよ!と思う時もままあったが、そもそも自分の人生を新聞で相談して解決するわけもないわけで、その達観した姿勢が時に爽快だった。
たとえば就職氷河期に就職活動をしている大学4年生からの「運、不運で人生が決まるなんて」という相談に対して。
世には運、不運があります。それは人間世界が始まった時からのことです。不運な人は、不運ななりに生きていけばよいのです。私はそう覚悟して、不運を生きてきました。 (中略) 嘆くというのは虫のいい考えです。考えが甘いのです。覚悟がないのです。この世の苦しみを知ったところから真の人生は始まるのです。また教え子の女生徒が恋しい、情動を抑えられないという相談には。
好きになった女生徒と出来てしまえば、それでよいのです。そうすると、はじめて人間の生とは何かということが見え、この世の本当の姿が見えるのです。 (中略) 阿呆になることが一番よいのです。あなたは小利口な人です。
相談者を崖から突き落とすような大胆な回答。
しかし突き放してるように見えて、実は相手の年齢や性格などを見てとても親身になって答えているのがちゃんと読んでいるとわかる。
人生に救いはない、阿呆になりなさい、自分より弱いものを助けなさい、回答は一貫しているが、きちんと相手と向き合っている。
後ろ向きに見える回答も実はそうではなくひっくり返すと前向きというのもとても面白い。
小説も読んでみたくなった。