りつこの読書と落語メモ

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短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

短篇コレクションI (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

★★★★★

南北アメリカ、アジア、アフリカの傑作20篇。新訳・初訳も含むアンソロジー。
【収録作品】
コルタサル 「南部高速道路」
パス 「波との生活」
マラマッド 「白痴が先」
ルルフォ 「タルパ」
張愛玲 「色、戒」
イドリース 「肉の家」
ディック 「小さな黒い箱」
アチェベ 「呪い卵」
金達寿 「朴達の裁判」
バース 「夜の海の旅」
バーセルミ 「ジョーカー最大の勝利」
モリスン 「レシタティフ──叙唱」
ブローティガン 「サン・フランシスコYMCA讃歌」
カナファーニー 「ラムレの証言」
クラウド 「冬の犬」
カーヴァー 「ささやかだけれど、役にたつこと」
アトウッド 「ダンシング・ガールズ」
高行健 「母」
アル=サンマーン 「猫の首を刎ねる」
目取真俊 「面影と連れて」

たっぷり珠玉の短篇集。何がすごいってまるでタイプの違う短篇が池澤夏樹の名のもとに一冊にまとめられていること。
コルタサルで始まってバース、バーセルミときて、カーヴァー、アトウッド、締めが目取真俊って。
既読は、「サン・フランシスコYMCA讃歌」「冬の犬」「ささやかだけれど、役にたつこと」「ダンシング・ガールズ」、4作とも大好きな作品。
その他の作品はどれもあまり普段馴染みのない作家ばかり。

コルタサル 「南部高速道路」
面白い。高速道路の渋滞というのは誰もが経験することだとは思うのだが、これって大丈夫なの?このままずっとここから動けなくなってしまったらどうなるの?と感じることが確かにある。
ファンタジーとも狂気とも思えるような飛躍とそれが日常に戻っていく展開が見事。

・ルルフォ 「タルパ」
長いこと患っている夫がいて、その面倒を見続けている妻と弟がいる。救いの聖母がいる教会まで3人は巡礼に出かける。妻と弟は不貞関係にあり、二人の熱が旅の原動力となっていたのだが…。
自分とは遠い世界の話なのに、まるで自分がその「妻」であるかのような息苦しさと罪悪感がこみあげてくる。

・張愛玲「色、戒」
まるで一編の映画を見たかのように鮮やかに「絵」が浮かんでくる。
ものすごくドラマティックなのだがリアルでもある。

金達寿 「朴達の裁判」
ここまでにおさめられた作品とは毛色ががらっと変わった作品。
これが短編集のど真ん中にあってかなりのボリュームがあるというところに驚く。

・アル=サンマーン 「猫の首を刎ねる」
これも面白いなぁ。
故郷のベイルートを離れパリに暮らす主人公。イスラム圏から西洋に移り現代的な女性と付き合っているが、以前の暮らしや価値観を捨てきれない…。二つの文化に引き裂かれる主人公の気持ちがとても切実で理解できる。

目取真俊 「面影と連れて」
これが一番最後におさめられているというのが凄い。
まったく知らなかった作家なのだが、マラマッドやディックやアトウッドと並べても決して見劣りすることのない作品。
他の作品も読んでみたくなった。