りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

らくご街道 雲助五拾三次 -吉例-

5/14、らくご街道 雲助五拾三次の2回目に行ってきたのである。

・発端 紀伊國屋文左衛門(きのくにやぶんざえもん)
・序幕 第壱場 白子屋見世先(しろこやみせさき)
・第弐場 永代橋川端(えいたいばしかわばた)
〜仲入り〜
・弐幕 第壱場 冨吉町新三内(とみよしちょうしんざうち) 
・第弐場 家主長兵衛内(いえぬしちょうべえうち)
・第参場 元の新三内(もとのしんざうち)
・大詰 深川閻魔堂(ふかがわえんまどう)

今回の噺は「髪結新三」。
歌舞伎でも演じられる人情噺ということで、なにやら難しそう。
ちょっと心配だったけど、初めて聴く噺っていうのは本当にどういう風に物語が展開していくかわからないから、ものすごくドキドキワクワクできるのだ。
基本的にネタバレ嫌いなので何の予備知識もなしに聞きにいくことに。

前座なしで現れた雲助師匠。
この噺の成り立ちやあらすじを紹介。一言も聞き漏らすまじ!と思わず前のめりになる。この熱心さが仕事に向けられれば…むにゃむにゃ…。

紀伊國屋文左衛門は一代で莫大な財を築いたが、二代目はたいそうな道楽者であっという間に転落、番頭の庄三郎は先を案じて白子屋として独立し、身代を築き上げた。
庄三郎にはお熊という娘がいてたいそう器量が良かったが奔放に育ち、奉公人の忠七と割りない仲になっていた。
店のために持参金付きの婿をとるのだが、お熊は忠七が忘れられず悶々とし忠七に宛てて手紙を書く。その手紙を出入りしていた髪結の新三が手に入れてしまう。
美しいお熊を物にしたいと考えていた新三は手紙を忠七に見せて駆け落ちをそそのかす。
お熊には忠七が待っていると告げて、先に籠で自分の家に連れて行かせる。

新三の家に向かって新三と忠七が歩いていると雨が降り出す。番傘を一本買って永代橋へかかるころに雨が激しくなり新三は早足になる。
傘が離れてしまった忠七が追いすがるとそこで新三は態度を一変させる。

わがままだけど美しいお熊、いい男だがどこか頼りない忠七、そして悪党の新三。
雲助師匠はくるくる変わる表情で演じ分ける。
とにかくこの新三の悪ぶりがたまらない。
失うものがないからなのか、たいした大物ではないはずなのにふてぶてしくて何を考えているのかわからない。
それまで親切に振舞っていたのが、急に本性をあらわすところは見ていてぞくぞくした。
ものすごい緊張感で、これからいったいどうなってしまうんだろう…とどきどき。

ここで登場するのが白子屋の車力の善八。
お熊を連れ戻してくるように10両預かった善八は新三のところを訪ねるのだが、新三はお熊を荒縄で縛って押し入れに閉じ込め、自分は昼間から酒を飲んでいる。
どこまでもふてぶてしい新三は差し出された10両を善八に叩きつけて追い出す。
困り果てた善八が女房に相談すると、町内のやくざ者の親分、弥太五郎源七に頼めと言われる。
弥太五郎源七を連れて新三のところにこれから参ります、というところで前半は終了。

いやもうすごい緊張感。あたし絶対口開いてたわ…。あまりに必死すぎて。
善八が出てきてようやく場が和んでほっとした。
それまでの場面が緊迫していただけに、善八とかみさんとの会話が楽しくて、「そうか私は落語を聞いていたのだ」ということを思い出したほど。

後半は源七を連れて新三のところに行くところから。
これでどうにかけりがつくのかと思いきや、源七さえも相手にしない新三。
源七にしても、新三がただの髪結いなだけに手出しができないのだ。
すごすごと新三の家を出て帰ろうとするところに声をかけたのが大家の長兵衛。
自分が30両で新三を説得しようと申し出る。

ここからの展開がもう…。むふふふふ。それまでたまっていたフラストレーションが一気に弾けるようだった。
もう雲助師匠の手の上を転がされて、ドキドキしたりワクワクしたりすかっとしたり。
つけ打が鳴った時は本当にびっくりして飛び上がってしまった。
私を観察していた人がいたらさぞや面白かったろう…。

落語でこういうこともできるのね、という驚きに満ちた素晴らしい会だった。
次回も楽しみ!