りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

第七回 笑福亭三喬独演会

5/11(土)、深川江戸資料館で行われた第七回 笑福亭三喬独演会に行ってきた。
以前行った、芸の饗宴シリーズ「披き・落語〜醸と贅〜」で見てとても面白かったのでぜひもう一度見たかった三喬師匠。
東京での独演会は年に一回とのことなので見逃さずにすんでよかった!

・喬介「狸さい」
三喬「ぜんざい公社」
・志ん輔「明烏
三喬初天神
〜仲入り〜
三喬「質屋蔵」

三喬師匠の「ぜんざい公社」。
お役所仕事をテーマにした落語です、と。
自分がお役所仕事を痛感した出来事というと、ちょっと長くなるんですが…と話し始めたまくら、これが面白い。

三喬師匠が大阪に住み始めた時に役所勤めをしている友人に、公団に申し込んでおけ、とアドバイスされた。
公団は夫婦物でないと入居できないのだが、結婚していなくても「婚約中」ならOKとのこと。しかも申し込んでもすぐに当たる確率は極めて低い。たいてい3回ほど外れて、何度も外れていると今度は外れた人だけで抽選になるので、そこで当たることが多い。だから早めに申し込んでおけば7年後ぐらいには当たるからちょうどいいだろうと言うので、それもそうだなと思いダメモトで申し込んだ。当時今のかみさんと付き合っていていずれは結婚したいと思っていた。
そうしたら1回目で当選してしまった!

役所に呼ばれて行ったら「婚約証明」というものが必要なので持ってくるようにと言われた。
なるほど、そういう証明書も出さなきゃいかんのやろな、と思って本屋に行って調べてみたけれどどういう書類を用意すればいいのかわからない。が、結婚するときに仲人を頼むことになるような人に書いてもらうものと聞いたので、やはり自分の場合は師匠だな、と思い師匠の家を訪ねた。これが訪ねた時間がよくなかった。
当時は阪神が優勝した年でプロ野球がめちゃくちゃ盛り上がっていた。ちょうどナイターが始まったぐらいの時間帯に訪ねて行ったもので、師匠は気もそぞろ。
「ああ、そうか。婚約証明な。わかった書くわ」と言って、そこらにころがっていたレポート用紙に「二人は愛し合ってます」と書いてハンコを押して「はい、これでええやろ」。

こう言ったらなんだが師匠は字がヘタでまるでひじきがのたくったような字。そんな字で「二人は愛し合ってます」って、まるでトイレの落書き並み。こんなん証明書にはならへんやろ!!と思ったけど、上下関係は絶対なのでそんなことは言えない。
「ありがとうございます」と言ってそれを持って役所に行った。
さまざまな書類を提出していよいよ婚約証明書。無理やわ、笑われてしまうわ、と思いながらレポート用紙を提出すると、役所の人がざっと見て「はい。結構です。」
ええええ?これでええの?こんなんでOKなの?
そうかー役所っちゅうのは内容はどうでもよくてハンコさえ教えてあればええんやなぁ、と思った。

といって始まったぜんざい公社。
ぜんざいを食べるだけなのにさすがはお役所。いちいち身分証明書を提出しないといけなかったり、書類を出すには別の窓口に行かないといけなかったり、焼いた餅が食べたいと言えば消防許可書が必要だと言われ、だったら生でええわと言えば健康診断を受けろと言われ…。
と、ただそれだけのばかばかしい噺なのだが、食べに来た男がかっとなったりめんどくさっ!と怒ったりしながらも、まあでもええわ一度食べておこうと従うのがなんともおかしくて大いに笑った。

・志ん輔師匠の「明烏」。
ゲストは志ん輔師匠。三喬師匠とどんなつながりが?と思ったのだが、そこには触れず短いまくらで「明烏」。
人気のある噺でよくかけられるし雲助師匠も以前インタビューでこの噺が一番好きと語っていたけれど、私にはどうも面白さがよくわからない…。うーん…。
でも男の人は結構笑っていたから男性な噺なのかもしれない。

三喬師匠の「初天神」。
何度も聞いている噺だけど関西弁だとまた雰囲気が違って面白い。
三喬師匠の金坊は生意気だけどちゃっかりしていてかわいらしい。初天神に連れて行ってもらいたくて隣のおじさんのところに行って夫婦生活をおもしろおかしくしゃべるところが最高だった。
凧を買うところまではやらず、団子のシーンでおわり。

三喬師匠の「質屋蔵」。
初めて聞いた噺だったんだけど面白かった〜!
自分のところの蔵に幽霊が出るといううわさが出ていると知った質屋の主人。番頭を問いただすと「確かにそういう噂が出ている」と言う。
「そんなことあるわけない」という番頭に、「いや案外そうでもないかもしらん」という主人。
なぜなら人が質に出すというところにはさまざまな事情があるわけで、こちらは決して後ろ暗い商売をしているわけではないけれど、大事な品を流してしまってそれを恨みに思う人だっているはずで、そういう怨念がこめられた品がおさめられた蔵なのだから幽霊が出ても不思議ではない。
真相を明らかにしたいから一晩起きて蔵を見張ってくれと言われた番頭は「いやそれはできません」と固辞する。幽霊が怖いというのだ。
だったら誰か助っ人を呼んでやるよと言うと、だったら八五郎がいいと言う。腕には自信がある八五郎が付いてくれていたら幽霊だって退治してくれるだろう。

使いの定吉に「主人が怒ってる」と嘘を伝えられた八五郎。先に謝った方が得策だろうと、屋敷から酒を持ち出したことや沢庵を持ち出したことをつぎつぎ告白。
なに?おまえ、そんなことをしていたのか?
いや今日お前を呼んだのはそういうことじゃない。実は蔵に出る幽霊を見届けてもらいたい…。
腕には自信があるけれど、幽霊はとんとダメだという八五郎。
番頭と二人、丸腰で蔵の番をするのだが…。

質屋は恨みを買うこともあると言って主人が物語る噺がもうめちゃくちゃ面白い。
そして勘違いして次々悪事を白状してしまう八五郎もおかしい。
場面場面で登場する人物がとても生き生きとしていて、聞いていてうきうきした気持ちになってくる。
大いに笑ってあたたかい気持ちになって楽しかった〜。

三喬師匠は喬太郎師匠と二人会もやっているのでそれもぜひ見に行きたい。

泥棒ネタに定評のある三喬師匠。