りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

鈴本演芸場 4月下席 夜の部

4/26(金)、鈴本演芸場4月下席夜の部に行ってきた。会社帰りにふらりと寄席に行けるようにならないとね!という強迫観念にかられて…というわけでもないのだが、なにせこの日の番組が魅力的すぎる!行かなければ!
というわけで、本来であれば私の勤務時間は10時19時なのだが、8時50分に出勤したんだから17時50分に帰ってもいいのだ!と会社を飛び出しいざ鈴本へ。
寄席っていうのはホールと違って何時に入っても「いいよいいよ。よく来てくれたね」と迎えてくれる雰囲気があってうれしい。

入ってみるとホームランさんが漫才をやっているところだった。
本当は左龍師匠も見たかったんだけど、しょうがない。

・ホームラン「漫才」
・一朝「芝居の喧嘩」
・馬石「安兵衛狐」
〜仲入り〜
・小菊「粋曲」
・百栄「怪談話しベタ」
・二楽「紙切り
・一之輔「青菜」

ホームランさんの漫才は後ろの方で見たのだが、入れ替わるときにさささっと前の方に移動。やはりせっかく来たんだから近くで見たい。
もう端っこの方は埋まっていたので真ん中側に入れてもらった。
目の前に座高の高いおじさんが座っていてちょっと見づらい。でも途中から入れてもらってあんまり動くのも申し訳ないし…。仕方なくおじさんの頭を避けるようにして体をねじって見ていたので肩がこりこりになっちゃった。やれやれ。

一朝師匠を見るのは初めてだったのだが、所作や話し方がぴしっと決まっていてすごく気持ちがいい。
二枚目っぽい落語。といっても気取っているわけじゃなくてとても面白い。
「芝居の喧嘩」はただただばかばかしい噺だけど、次々と男が出てきて啖呵を切るのが威勢が良くて気持ちがいい。またそれを見ているお客さんが「面白いもんが始まった」と野次馬根性丸出しで喜んでいるのが伝わってきておかしい。

菊之丞師匠を楽しみにしてきたのだが代演で馬石師匠。前の白酒師匠を楽しみに行ったら代演で馬石師匠だったなぁ…と若干がっかりしたのだが、馬石師匠も大好きなんだ。
まくらでは「隅田川馬石」という名前を襲名した時のエピソード。これは志ん生師匠が名乗っていたこともある名前で自分は昔からこの名前がほしいなぁとねらっていたんです。名前を継ぐためには隅田川沿いに住んだ方がいいだろうと引っ越しまでしました。隅田川沿いっていってもブルーシートじゃないですよ。
志ん生師匠が名乗ってた?と会場が「おおお」という雰囲気になったのだが、実は志ん生師匠がこの名前を名乗っていたのはほんの一か月の間だけ。借金とりから逃げていた志ん生師匠は何度となく改名をしているらしい。

「安兵衛狐」は以前浅草演芸場で馬生師匠のを途中から見たことがあるのだが、前半はこういう噺だったのか。
花見じゃなくて骨見に行くといって墓場に行った源兵衛。せっかくなら女の墓の前がいいやと飲んでいると、骨が出てきてしまっている。気の毒に思って酒をかけて弔ってやると、その晩その女が「あなたのおかげで浮かばれました」とたずねてくる。これが美人だったもので源兵衛はそのままその女を妻にすることに。
それを聞いた安兵衛は、幽霊でもあんな美人を嫁さんにもらえるなら自分もほしい!と酒をもって墓へ。
墓場に行ってみると、キツネを捕まえて皮を剥いで売るのだと言って男が子ぎつねを捕まえている。それはかわいそうだと安兵衛は男に金を払ってキツネを逃がしてやる。
するとその晩おコンと名乗る娘が安兵衛を訪ねてきて…。

「野ざらし」にも似た話で、昔は骨をそれほど忌み嫌ったりしなかったんだろうか?と思う。今よりも死が身近にあったから?
こんなふうに骨が出てきちゃってかわいそうに、と言って酒をかけてやると骨がぽっと色づいた、なんて当たり前のように言われると、へーそうなんだーと思ってしまう。
馬石師匠のおコンさんがとても色っぽくてかわいくて、こんなにかわいいんだったらキツネでもいいや、と思えるほど。
楽しかった。

仲入り後は小菊姐さん。今回で3回目なんだけど、女から見てもきれいで色っぽくてかわいくてうきうきしちゃう。

そして百栄師匠登場。よかった〜!代演じゃなくて!ぜひとも見てみたかったんだ。
落語というのはお客さんが頭の中で情景を思い描いて想像しないといけない。結構頭を使うから脳にはいいんです。名人の落語というのは上手だから誰の頭にも情景がぱっと浮かび上がる。それは結構なことですけど脳のトレーニングとしてみるとあまりよろしくない。その点私の落語はよっぽど一生懸命想像しないと情景が浮かんできませんから脳には大変いい落語です。
強烈なインパクトのある風貌でやる気なさそう〜に出てきただけでおかしいんだけど、開き直ったように言うまくらがおかしくてげらげら。

修学旅行で男子が集まって怪談話をしている。
一人があまりにもうまくてみんなが「こえーこえー」と盛り上がっていると、「俺の方がもっと怖い話ができるぜ」といきがる生徒が。
じゃあしてみろよと言うと、話し始めるのだけれどこれが細かいところで引っかかったり一人でウケたりして全然話が進まない。
ただそれだけの話なのだが、もうこの脱線ぶりがおかしくておかしくて…ツボに入ってしまってからはもう百栄師匠がちょっとした間がおかしくて笑いが止まらない。

新作落語ってそもそも受け入れられない人も多いだろうし、はずすととんでもなくはずしてしまっていばらの道だと思うんだけど、頑張ってほしいなぁ。
大好きだったわ〜。また見に行きたい。いや絶対行く…近いうちに。ほほほ。

そして二楽師匠の紙切り
前に喬太郎師匠の番組で見たことがあったんだけど、これはすごいなぁ…。あれだけの短い時間で話をして笑いをとりながら手を休めることなく切ってしまう。
お客さんからもらったお題が「鯉のぼり」と「卒業写真」。
そのまんま切るんじゃなくて、ちゃんと動きを与えるところがポイントなのかな。
切ったやつをもらったお客さんがさりげなくおひねりをあげていたのがかっこよかった〜。

トリは一之輔師匠。
とぼとぼと出てくるだけでおかしい。今日来てるお客さんもほとんどの人は一之輔師匠目当てだったのだろう。
なんとなくまくらは疲れた感じだったけど、噺に入ったら徐々にエンジンがかかってきた感じ。
一之輔師匠の「青菜」は、旦那にもてなされた植木屋さんが家に帰るところがもう面白い。
旦那の粋なもてなしにはいちいち感心しているのだけど、でもなんだよめんどくせぇなぁ!やってられっかい!という気持ちもする。でもせっかく覚えたんだからやってみたい。
そして「たがめ」呼ばわりされたおカミさんが凶暴なのがまたおかしい。
ざんばら頭のカミさんが出てきたところではもうおかしくておかしくて腹を抱えて笑ってしまった。

仕事帰りだったので2時間ぐらいしか見られなかったのだが、満足満足。
しかも一之輔師匠のHPにある割引券を印刷していくと2200円で見られて、かなりお得感があった。
また寄席に行くぞ〜。

馬石「安兵衛狐」